三宅島島内作業におけるカテゴリー区分等について

平成12年12月8日
 
三宅島島内作業におけるカテゴリー区分等について
東京都災害対策本部
政府非常災害対策本部
 現時点での火山活動の状況等を踏まえ、島内での観測機器の設置、ライフライン施設の維持等のために必要な作業及び火山の観測等を円滑に進めるため、当分の間、噴石、火砕流及び火山ガスの危険性を考慮したカテゴリー区分、及びその区域内でこれらの作業等を行うにあたって、防災作業関係者に対する作業条件等を以下のとおりとする。
 カテゴリー区分及びその区域内での作業条件等については、火山活動の状況、観測機器の整備状況、道路啓開やコンテナシェルター等の安全対策の整備状況に応じて、適時適切に見直すこととする。
 なお、東京都現地災害対策本部(以下「現地対策本部」と言う。)での作業計画の調整等の諸手続については別途現地対策本部で定めるものに従うこととする。
1 カテゴリーの定義等
(1) C1
区域 火口縁の外側500m以内
規制 立ち入り禁止
説明 前兆的な現象の把握が困難な
・小規模噴火(有色噴煙の高さが山頂から2000m以下)
・カルデラ火口壁の崩落
による危険性のある区域。 
 
(2)C2
区域 林道雄山環状線(鉢巻き道路)を含め、その内側からC1までの区域
規制 原則立ち入り禁止。
ただし、火山専門家、火山専門家が同行する観測機器設置作業或いはライフライン維持作業等に必要な最小限の防災作業関係者のみ、厳重な監視の下に避難拠点まで5分程度以内で避難できる範囲に立ち入り可。
(参考) 車の場合:避難拠点から概ね1kmの範囲。
徒歩の場合:避難拠点から概ね300mの範囲。
車の速度は時速12km(200m/分)、徒歩の速度を時速4km弱(60m/分)と想定。
さらに、入域に際しては、所要の火山ガス対策を講じる必要がある。
説明 
       上記小規模噴火による噴石・火砕流の危険性はないが、中規模噴火(噴出物の初速度150m/s未満、有色噴煙の高さが山頂から2000〜5000mの噴火)による噴石・火砕流の危険性がある。火山ガスの放出が安定的に続いている現状でもこのような中規模な噴火が発生する可能性は否定できず、発生する場合においても火山性微動、噴気現象等の微弱な前兆的な現象しか現れない可能性が高いものと考えられる。このため、遠望監視カメラ画像による監視、現地における火山専門家による監視並びに地震計及び空振計等の観測機器による監視等を総合した厳重な監視の下に限定的に立ち入りを認めることとする。
(3)C3
① 区域  C1及びC2の区域を除く三宅島島内の区域
② 規制  火山専門家、防災作業関係者のみ立ち入り可。ただし、避難拠点まで10分程度以内で避難できる範囲に限る。
(参考)車の場合:避難拠点から概ね2kmの範囲。
       徒歩の場合:避難拠点から概ね600mの範囲。
さらに、入域に際しては、所要の火山ガス対策を講じる必要がある。
なお、C2区域を経由してC3区域に入域し、作業を行う場合はC2区域の規制に従う。
 ③ 説明
上記小規模噴火及び中規模噴火による噴石・火砕流の危険性は極めて低いが、大規模噴火(噴出物の初速度150〜200m/s程度の噴火)による噴石・火砕流の危険性がある。火山ガスの放出が安定的に続いている現状でもこのような大規模な噴火が発生する可能性は否定できない。このような大規模噴火が発生する場合においては、噴火の開始が地震計及び空振計等の観測機器により噴火の発生が直ちに確認でき、噴火開始から致命的な被害をもたらす噴石・火砕流の発生まで一定の時間があることから、地震計及び空振計等の観測機器による監視の下に火山専門家、防災作業関係者の入域を認めることとする。
    
(4)C4
①  区域 三宅島の海岸から約4kmの海域
② 規制 島内作業のための船舶については、予め現地対策本部に登録した船舶のみ入域可。それぞれの船舶については現地対策本部との連絡が取れる体制が整備されていること。
火山ガスの危険性もあり、所要のガス対策が講じられるよう準備が必要。
③ 説明
大規模噴火(噴出物の初速度が200m/s程度より大きな噴火)が発生した場合には噴石や火砕流が直接的に影響する可能性が高いと考えられる。
2 作業実施のための監視体制
(1) C2
 下記による総合的な監視を実施する。
  ① 噴気現象等の変化       遠望監視カメラ画像による監視 (気象庁本庁)
遠望監視カメラ画像による監視が実施できない場合であって作業を実施する必要性が高い場合は、自衛隊機(P3C)等による上空監視により代替することができることとする。
② 地震・地殻変動等の変化   地震計、空振計、GPS等の観測データによる監視(気象庁本庁)
③ 現地での火山観測       火山専門家による監視
 
(2)C3
  ①噴火の監視     地震計、空振計の観測データによる監視(気象庁本庁)
                地震計、空振計による噴火現象の監視が実施できない場合であって作業を実施する必要性が高い場合は、自衛隊機(P3C)等による上空監視により代替することができることとする。
②地震・地殻変動等の監視  地震計、空振計、GPS等の観測データによる監視(気象庁本庁)
 
3 作業開始にあたっての安全確認
 作業実施にあたっては、現地対策本部において火山の活動状況、気象予測等と作業内容等を踏まえ、十分な安全確認を行ってから実施の可否を決定する。
 
 
4 緊急に作業中止等する場合の条件とその対応
(1) 噴火が発生した場合
 ①C2、C3区域共に、2000m以上の有色噴煙、或いはそのような噴火に伴うと考えられる微動及び空振、又は規模は不明であるが大きい可能性があると判断される噴火を気象庁において観測したとの連絡が、現地対策本部からあった場合には、即座に避難拠点に避難し、その後の行動については現地対策本部の指示に従う。
 ②島内作業者が噴火を確認した場合には、現地対策本部に連絡するとともに避難拠点に自主避難し、その後の行動については現地対策本部の指示に従う。連絡を受けた現地対策本部は噴火した旨をC2、C3区域の全作業班に連絡し、避難拠点に避難するよう指示する。避難した各作業班はその後の行動について現地対策本部の指示に従う。
 
(2) 火山現象に異常が発生した場合
気象庁において、噴気現象等の観測、地震・地殻変動等の変化及び現地火山専門家による観測を総合的に検討し、C2、C3区域それぞれ避難の必要があるとの判断の連絡が現地対策本部にあった場合には、各作業班の対応については次のとおりの対応とする。
C2:速やかに作業を中止し、C3区域に避難、現地対策本部からのその後の行動についての指示に従う。
C3:現地対策本部から連絡があった場合にはその指示に従う。
 
現地火山専門家が火山活動に異常が発生し、速やかに避難すべき、もしくは避難する必要があるかもしれないと判断した場合には、現地対策本部へその内容を連絡するとともに、次のとおりの対応とする。また、連絡を受けた現地対策本部はC2区域にいる全作業班へC3区域への避難を指示することとし、各作業班の対応については次のとおりの対応とする。
C2:速やかに作業を中止し、C3区域に避難、現地対策本部からのその後の行動についての指示に従う。
C3:現地対策本部から連絡があった場合にはその指示に従う。
(3) 作業実施のための監視体制に支障が生じた場合
  現地対策本部から「作業実施のための監視体制」に支障が生じたとの連絡があった場合には、次のとおりの対応とする。
C2:速やかに作業を中止し、C3区域に避難し、島外避難について現地対策本部の指示に従う。
C3:速やかに作業を中止し、島外避難について現地対策本部の指示に従う。
 
 
5 火山ガスに対する警戒
  作業場所周辺の火山ガス濃度については、C2からC4の全ての区域で十分安全性を確認して作業する必要があり、許容ガス濃度、各作業班が装備すべきガス関係機器、作業実施にあたっての対応等詳細については、別途定める「三宅島島内作業等における火山ガス対策について」に従うこととする。
なお、各作業班はこれに従って定期的に作業場所でのガス濃度を確認し、現地対策本部へ連絡する。また、現地対策本部は全作業班へ各作業班からの濃度確認情報及び島内の定点火山ガス観測装置の測定値を全作業班へ適時連絡する。
  
6 泥流に対する警戒
 泥流の発生はこれまでの雨でもほぼ特定されており、作業を行うにあたっては事前に現地対策本部でこれらの場所や状況の確認を行う。また、これらの場所では降雨時には作業を行わないとともに、その場所で雨が降っていない時についても、山頂部で雨が降っている可能性のある場合(山頂が雨雲で覆われている場合など)には、原則として作業を行わないこととする。
 泥流が発生すると道路の寸断等により、退路を断たれることがあるので、雨が降っている時には、泥流が発生しない場所においても、移動路の十分な確認を行い、退避不能な場所での作業は行わないこととする。
 林道雄山環状線(鉢巻き道路)及びこの道路を経由して入域し作業を行う場合には、特にこれらに警戒することとする。
 
7 連絡体制について
 各防災作業班に連絡責任者をおき、事前に現地対策本部へ届け出ておく。さらに各防災作業班は東京都防災無線及び警察無線を必ず携行することとする。また、衛星携帯電話、携帯電話を携行し、それぞれの番号を事前に届け出る。
 異常を検出した場合の連絡体制は別紙のとおりとする。
8 救援体制について
噴火後の避難拠点からの救出、予定されていた移動手段が故障して使用できなくなった際の救出等の必要が生じた場合は、現地対策本部が、救出人数、救出場所、救出すべき時間を救出関係機関(海上保安庁・自衛隊・警視庁・東京消防庁)へ救出要請を行う。
救出関係機関はこの要請を受け、現地対策本部会議において救出時間や人数等を踏まえた出動計画(緊急時には最も早く対応できる体制による。)を即座に決定し、対処する。
【以上で使用した用語について】
噴    火:  火口から火山灰等の固形物や溶岩を火口付近の外へ放出する現象。
火山専門家:  気象庁、大学等研究機関、東京都のそれぞれが火山専門家と認め、予め現地対策本部に登録された者。
防災作業関係者:観測機器設置、ライフライン維持、現地状況の把握、警戒・緊急連絡等に従事するため、国、東京都、三宅村等の防災関係機関、大学等研究機関、電力・通信事業者等のそれぞれが必要と認め、予め現地対策本部に登録されている者。
避難拠点:    コンテナシェルター・堅固な建物・耐熱車両。
 
 
 
別紙
 
4.(2)の異常を検出した場合の連絡体制
 
 

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