三宅島火山活動等に対する緊急観測監視体制の強化について

平成12年9月12日
三宅島噴火及び新島・神津島近海地震
非常災害対策本部
(事務局・国土庁)
 
三宅島火山活動等に対する緊急観測監視体制の強化について
 
1.本日、政府は三宅島火山活動等に対する緊急観測監視体制の強化を図るため、予備費約14億円 を使用することを閣議決定。体制強化の具体策については関係省庁(科学技術庁、文部省、通商産業省、運輸省、郵政省及び建設省)連携の下、国土庁とりまとめにより作成。
 
2.三宅島においては現在、住民の全島避難が行われた一方、防災関係者等が島内で活動しており、これら防災関係者の安全確保、島外避難者の一時帰宅や帰島時期の判断等のため火山・地震活動の的確な把握が急務。
 
3.今回の措置は、
 ?地震計や空振計の増設等により、噴火の発生を捉えてその規模等を  即座に予測
 ?GPSや傾斜計の増設等により、マグマの位置や動きを把握
 ?機器の二重配置等により、バックアップ体制や耐障害性を確保
 等により、火山・地震活動の動向の的確かつ安定的な把握を図るもの。
 
4.今後、可及的速やかに観測を実施。施設の整備が必要なものについ ても9月下旬を目途に概ね完了を図る。
 
(連絡先)
国土庁防災局震災対策課     課長補佐      井上 03(3501)5693
科学技術庁防災科学技術推進室  室長補佐      藤原 03(3503)8164
文部省学術国際局学術課     地震防災学術計画官 平野 03(3593)2304
通商産業省工業技術院研究業務課 課長補佐      西村 03(3501)1777
海上保安庁水路課企画課     水路企画官     江上 03(3541)3813
気象庁総務部企画課       防災企画調整官   横田 03(3214)7902
郵政省通信政策局技術開発推進課 課長補佐      米子 03(3504)4073
建設省国土地理院企画調整課   課長        小出 0298(64)2664
 
三宅島火山活動等に対する総合的緊急観測体制の強化について
 
 
1 火山活動及び地震活動の現状
 6月末に始まった三宅島の火山活動は、8月半ばまでは終息に向かっていると思われていたが、8月18日の噴火以降新たな活動ステージに入り、これまでにない厳重な警戒が必要になった。8月29日の噴火では、火砕流が発生したことも確認されている。
 火山噴火予知連絡会(平成12年8月31日)では、
?当面は、8月18日及び29日と同程度かこれをやや上回る規模の噴火が繰り返される可能性がある。
?火砕流に警戒が必要であり、特にマグマが直接関与している場合、将来、より強い火砕流になる可能性がある。
等の見解が発表された。
 一方、新島・神津島近海では、新島、神津島等で度々震度6弱を観測する等、活発な地震活動が断続的に発生したが、8月下旬以降、マグマ活動に伴う地殻変動は鈍化し、地震活動も低下傾向となっている。この地震活動は、三宅島のマグマとは異なり、神津島東方海域に新たなマグマが貫入したことによるものと想定されている。
 
2.観測監視体制を緊急に整備すべき理由
 このような状況の中で、政府は、同日開催された第1回三宅島噴火及び新島・神津島近海地震非常災害対策本部会議において、ライフラインの確保、産業支援、緊急時の避難支援策等についての万全の対応を図るとともに、「可能な限り監視・観測体制の強化を図る」旨を確認した。
?三宅島については、村長の避難指示決定により、9月2〜4日にかけて住民の全島避難が行われる一方、防災関係者等300名程度が島内に残留しており、これらの島内残留者の安全確保や島外避難者の一時帰宅や帰島時期の判断のため火山活動の的確な把握が求められている。
?また、新島・神津島近海地震についても、有感地震の回数は減少傾向にあるというものの、住民の安全確保に万全を期する観点から、地震活動の動向を的確に把握することが必要となっている。
 
3.地元等からの要望
  このような状況下、都、与野党等から観測監視体制の強化につき、要望がなされていたところである。
 ?「火山噴火、地震予知のための観測、監視体制の強化」(東京都緊急提案要求書8月25日)
 ?「火山噴火や地震予知のための観測、監視体制を一層強化すること。」(自由民主党・公明党・保守党3党幹事長名緊急要望8月29日)
 ?「火山噴火や地震予知のための観測、監視体制を一層強化すること。」(民主党緊急申し入れ8月24日)
 
4.観測監視機器の増設等が必要な主な理由
(1)島内で活動を継続する防災関係者や一時帰宅者の安全確保のため、噴火の発生を捉えて、その規模等をこれまで以上に即座かつ的確に予測することが必要。
(2)今後の噴火活動の動向を予測するためには、噴火活動の原動力となるマグマの動きを複数の高さ、場所から監視観測することにより立体的に把握し、その位置や貫入の規模等をより正確に把握する事が必要。
(3)噴火噴石等による観測施設の破損に対応するため、機器の二重配置によるバックアップ体制の確保や太陽光発電装置の装備による耐障害性の向上により、安定的な観測監視を図ることが必要。
 
5.観測監視体制の強化の具体的内容
(1)噴火の前兆を直前に把握するための観測
  噴火前の水蒸気等のガス圧の増加に伴う地殻変動(GPS、傾斜計等)の変化及び地震発生(地震計)を検知する。
(2)噴火発生を捉えその規模等を即座に予測するための観測
  噴火現象の発生に伴う空気振動(空振計)及び微動(地震計)を検知し、その大きさから噴火の規模を即座に予測する。また、噴火現象そのものを観測(遠望カメラ等)し、噴火現象の発生とその大きさや噴石等の放出を観測し、噴火の規模を測定する。
(3)噴火活動の推移を予測するための観測
  噴火様式の変化(遠望カメラ、噴火映像観測等)、表面現象の変化(上空からの調査、噴煙温度観測等)、噴火による圧力の解放の程度(GPS、傾斜計等による地殻変動での把握)、圧力源の移動に伴う地震の発生(地震計)、高温の圧力源の移動に伴う電磁場の変化(磁力計等)、噴火によるガス成分の変化(ガス測定器)の観測、火山噴出物の成分分析等を行い、噴火活動の推移を予測する。
(4)三宅島マグマの動きを捉えその活動推移を予測するための観測
  マグマそのものの動きを詳細に捉えるため、マグマの移動や圧力の変化に伴う地殻変動の変化(GPS、傾斜計、地下水観測等)、マグマの上昇や下降に伴う電磁場の変化(磁力計等)、地震発生(地震計)を観測し、今後の活動の推移を予測する。
(5)神津島東方海域のマグマの動きを捉えその活動推移を予測するための観測
  神津島東方のマグマの動きに伴う地殻変動の変化(GPS、傾斜計等)、地震の発生(地震計)し、マグマ活動の推移を予測する。
  
 
 
 
関係省庁における緊急観測監視体制の概略
 
合計14億24百万円
                       
 
 
□科学技術庁(防災科学技術研究所)           1億17百万円
  ○傾斜計
    (地殻の傾斜変動量等を把握し、今後の活動の推移の検討のため)
  ○衛星SAR(合成開口レーダ)による調査
   (地形変動の観測のため)
  ○噴煙移流分布解析
   (噴煙の移流等による分布変化を解析するため)
 
□文部省(大学)                         2億97百万円
  ○地震計、GPS、傾斜計、磁力計等の設置   
(マグマの移動に伴う震源移動の変化の迅速な把握、火山活動の広域的な移動の観測、マグマや熱水の動きの推定等を行うため)
  ○噴煙温度観測、ガス観測、噴出物観測、重力観測
    (噴火様式変化の事前評価等のため)
 
□通商産業省(工業技術院地質調査所)          2億30百万円
  ○噴火映像観測、地下水観測、噴出物観測の実施
(噴火活動状態を把握し、大噴火活動に繋がるおそれのあるマグマ活動の変化を早期に検知するため)
 
□海上保安庁                          1億53百万円
  ○海底地殻変動監視観測
   (海底における地殻変動から海底のマグマ活動を推測するため
 
□気象庁                             3億20百万円
  ○地震計、空振計、遠望カメラ、GPS、傾斜計、磁力計等の設置
   (爆発的噴火の前兆的シグナルを検知し、適時・適切な火山情報等を迅速に発表するため)
  ○山体表面温度観測
(山体表面温度を観測し、今後の活動の推移を検討するため)
□郵政省(通信総合研究所)                    47百万円   ○航空機搭載SAR(合成開口レーダ)による調査
   (地形変動の観測のため)
 
□建設省(国土地理院)                     2億60百万円
  ○GPSの設置
   (爆発的噴火の前兆的シグナルとなる地殻変動を検出するため)
  ○水準測量、地形変動量調査、衛星画像による調査
(火山活動の推移を予測するため)

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