防災の動き



「段ボールジオラマ」で下げる、“防災”のハードル
一般社団法人 防災ジオラマ推進ネットワーク 代表理事 上島 洋

段ボールジオラマ防災授業

 毎年のように各地で大きな災害が起こり、日頃の備えの重要性はますます叫ばれるようになっています。けれども私たちの防災に対する意識や行動は、はたしてそれに追いついたものになっているでしょうか?

 弊団体も参画している『パーソナライズド防災研究所プロジェクト』が2020年に実施したアンケート調査*1によると、「災害時のイメージができておらず、日頃の防災行動もあまり行っていない」とされる人が全体の33%存在しています。「イメージはできていると思っているが、行動につながっていない」人と合わせると、じつに5割を超える人が日頃の防災行動をあまり行えていないことがわかります。(図1)

*1
・東京23区在住の20~70代男女、n=1,508
・2020年10月、インターネット調査
・災害時のイメージ:4項目、7段階の平均得点で区分
・日頃の防災行動:家具固定、備蓄、自宅周辺のリスク確認など10項目、5段階の平均得点で区分

図1:災害時のイメージと防災行動
図1:災害時のイメージと防災行動

 一方で、防災に関するパンフレットや書籍、イベントなど、官民が発信する各種の防災関連の情報が届いているのは、ある程度意識が高く日頃の備えもできている層(図の右側)が中心と思われ、防災への関与が低い層との接点は、なかなか作り出せていないのではないでしょうか?

 私たちの段ボールジオラマは、こうした「防災と縁遠い人たち」との接点を作り出し、楽しみながら自分のまちの地形にふれる体験を通じて、結果的に防災感覚や防災に対する関心を高めてもらおうというものです。「防災に関心のある方は集まってください!」というのではなく、「みんなでジオラマを作ってみませんか?」という呼びかけで、子どもからお年寄りまで、防災に関心のある人もない人も、一緒に地域のことを考える場が生まれます。

マンションのイベントでの活用(川崎市)
マンションのイベントでの活用(川崎市)

自分で組み立てるから興味がわく

 私たちの団体は主に学校の防災授業や地域のイベントなどでワークショップを行っていますが、防災における最大の課題はその「入口」にあると感じています。災害のことを考えるのは決して楽しいことではないですし、防災のことを学ぶのはどうしても受け身になりがちです。

 「段ボールジオラマ」は、自分のまちの地図が印刷された段ボールを等高線に沿って取り外して積み重ねていく、誰でも簡単に組み立てられるオーダーメイドのジオラマキットです。パズル感覚で楽しみながら、自らが手を動かすことで高低差を“体感”できるだけでなく、地形や災害を「自分ごと化」するためのハードルをぐっと下げることができます。

ジオラマキット

立体だから、危ない場所も直感的にわかる

 平面の地図から地形をイメージするのは大人でもなかなか難しいことです。たとえば崖の近くは土砂災害のリスクがあると感覚的にわかっていても、どこが崖なのか、どの程度の傾斜なのかを読み取るのは容易なことではありません。

 その点、ジオラマなら一目瞭然。ハザードマップなどの情報をもとに、色を塗ったり旗を立てたり、危険箇所や避難所の位置などを落とし込めば、誰にでもわかりやすいオリジナルの防災ジオラマができ上がります。どの辺りが危なそうか? なぜ危ないのか?を直感的に理解できるのも、立体ならではのよさです。



さまざまなシーンで活用いただけます

段ボールジオラマは、学校の防災授業をはじめ、地域や企業の防災イベントのほか、防災以外のまちづくりイベントやお祭りなどでも活用されています。ジオラマを囲むと自然と会話が始まり、昔の思い出や土地の変遷、過去の災害の記憶などが語られることも珍しくありません。

地域の写真展での活用(横浜市)
地域の写真展での活用(横浜市)

 また、一般的なプロジェクターを使ったプロジェクションマッピングも簡単にできますので、防災だけでなく、観光情報や歴史、お買い物情報など地域の様々な情報を載せるコミュニケーション・プラットフォームとしてもぜひお使いください。

 防災にこだわらない入口で、防災にとどまらない用途で、楽しみながらジオラマにふれてもらうことを通じて、それまで防災になじみの薄かった人たちが関心を持ち、防災行動へとつながっていくきっかけとなれたらうれしい限りです。

プロジェクションマッピングの例
プロジェクションマッピングの例


◆段ボールジオラマについて

・目的によって範囲やサイズはオーダーメイドで自由に設定できます。
・水域や山などをあらかじめカラー印刷したタイプや、水を流せるタイプなどもあります。
・1回限りではなく、枠に戻して繰り返し組み立てることも可能です。
・ジオラマキットのみ、ジオラマ+ワークショップなど、ご要望に応じて様々なプランがございますのでご相談ください。各種補助金等の利用が可能な場合もございます。

一般社団法人 防災ジオラマ推進ネットワーク

●一般社団法人 防災ジオラマ推進ネットワーク

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内閣府政策統括官(防災担当)

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