特集 東日本大震災から10年
~新しいまちの姿と強化された防災力~



特集 東日本大震災から10年

復興と防災力強化の10年

 平成23年の東日本大震災の発災から10年となった令和3年3月11日、東京都千代田区の国立劇場で政府主催の東日本大震災十周年追悼式が執り行われました。式典には天皇皇后両陛下も出席され、地震発生時刻の午後2時46分には参列者全員が黙とうをささげ、犠牲者を悼みました。天皇陛下は「これからも私たち皆が心を合わせて被災した地域の人々に末永く寄り添っていくことが大切」とお言葉を述べられ、菅義偉首相は「東北復興の総仕上げに全力を尽くす」ことを強調し、「今後も切れ目のない支援を行っていく」方針を表明しました。

 10年の時の流れは、被災地にもさまざまな変化をもたらしました。大きな被害を受けた東北地方の沿岸部では段階的に復興が進み、災害公営住宅の整備や民間住宅等用宅地の造成も完了し、新しい街が姿を現しています。

 交通インフラでは、旧JR山田線の宮古~釜石間が三陸鉄道に移管される形で平成31年に運転を再開、令和2年には不通区間が残っていたJR常磐線も全通しました。また「復興道路」と位置づけられた三陸沿岸道路(三陸縦貫自動車道、三陸北縦貫道路、八戸・久慈自動車道)も令和3年度内には仙台~八戸をつなぐ359kmが全通の予定で、被災地の移動は大幅に改善され、物流の効率化や観光の振興にも期待がかかります。復興は一歩ずつ、確実に進行しています。

 復興まちづくりに際して、忘れてはいけないのが防災力の強化です。国は平成23年に東日本大震災復興基本法を公布・施行し、復興の基本方針を定めました。各県や各市町村はこの方針に基づき、東日本大震災の検証を行い、得られた教訓を生かす形でそれぞれに復興計画を策定し、復興を進めてきました。


ハードとソフト、両面の強化で津波に備える

 被災県のひとつである岩手県では、東日本大震災津波復興基本計画のもと、2011年度から2018年度までの8年間を、基盤復興期間(2011~2013年度)、本格復興期間(2014~2016年度)、更なる展開への連結期間(2017~2018年度)に分け、復興が進められました。暮らしの再建については、災害公営住宅5833戸がすべて完成、ピーク時には4万3000人を超える被災者が暮らしていた応急仮設住宅もすべて退去が完了しています。

 防災面での大きな柱は、津波災害対策の基本的な考え方の転換です。東日本大震災における津波の被害が、従前の想定をはるかに超えるものであったことを踏まえて、数百年から千年に一度程度発生する最大クラスの津波(L2津波)に対しては、住民の避難を柱に、海岸保全施設の整備などのハード対策、災害に強いまちづくりと避難対策といったソフト対策を組み合わせた「多重防災型」の考え方を取り入れています。逆に津波高が低いものの発生頻度が高い(L1津波:数十年から百数十年に一度程度)津波災害に対しては、海岸保全施設の整備により、生命と財産を守ることとしています。

 海岸保全施設の復旧・整備については、防潮堤の高さはそれぞれの湾ごとに想定を実施し、地域との話し合いを行って決められました。東日本大震災の際に津波が河川を遡上することで内陸部にも被害をもたらしたことから、河口には遠隔操作で開閉が可能な水門が設置されています。まちづくりは地域の実情に合わせ、高台への集団移転や、かさ上げによる強化に加え、高台への避難路の確保など、複数の備えが施されています。

整備された防潮堤と水門(大槌町)

整備された防潮堤と水門(大槌町)

高台に整備された県営災害公営住宅(陸前高田市)

高台に整備された県営災害公営住宅(陸前高田市)

 また、岩手県では東日本大震災の災害対応検証を踏まえ、大規模災害の際に被災地支援を迅速かつ効率的に行うための広域防災拠点と、広域防災体制の構築を行いました。広域支援拠点には盛岡・花巻エリアが、被災地により近い後方支援施設として、二戸、葛巻、遠野、北上のそれぞれのエリアが選定されています。遠野は東日本大震災の際に実際に後方支援拠点となり、重要な機能を果たしました。

 さらに岩手県では、東日本大震災津波復興基本計画の後を受ける形でいわて県民計画(2019~2028)を策定し、引き続き被災者のこころのケアや住宅再建、事業者への支援を行っています。従来からの「安全の確保」「暮らしの再建」「なりわいの再生」に加え、新たな柱として「未来のための伝承・発信」を掲げ、写真や文献のアーカイブ化や伝承施設の整備、復興情報の発信などに力を入れることで、東日本大震災の経験や教訓を全国に伝えていこうというものです。

 令和3年11月6・7日の両日、防災推進国民大会「ぼうさいこくたい2021」が被災地のひとつである岩手県釜石市で開催されます。ぼうさいこくたいは100以上のセッション・ワークショップ・プレゼンが出展する国内最大級の防災イベントです。防災に関する最新の知見に触れ、東日本大震災の教訓を踏まえた被災地の復興を確認することで、わがまちの防災・減災に役立てるためにも「ぼうさいこくたい2021」に参加してみてはいかがでしょう。

高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設。岩手県が整備した東日本大震災津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」が併設されている(陸前高田市)

高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設。岩手県が整備した東日本大震災津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」が併設されている(陸前高田市)



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