防災の動き



災害弔慰金の支給等に関する法律の改正
〈内閣府(防災担当)被災者行政担当〉

阪神・淡路大震災が起きた当時は被災者生活再建支援法がなかったことを踏まえ、災害援護資金の既償還者との公平性に十分配慮しつつ、未償還者のうち一定の低所得者等の免除を可能とするとともに、災害援護資金の債権管理の実態を教訓に、急ぐべき現行制度の不備を是正することを目的として「災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第27号。以下「改正法」といいます。)」が令和元年5月31日に成立し、同年8月1日から施行されました。ここでは、改正法の概要等について紹介します。

1. 法改正の経緯

災害援護資金貸付制度は、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号。以下「災害弔慰金法」といいます。)に基づき、自然災害により世帯主が負傷した場合や住宅・家財に被害を受けた場合に、所得が一定以下の世帯の世帯主に対して、条例の定めるところにより、生活の立直しのための資金を貸し付ける制度です(貸付限度額:350万円、償還期間:10年)。貸付けは市町村の自治事務と位置付けられており、貸付金の原資は、指定都市にあっては国が2/3、自らが1/3を、指定都市以外の市町村にあっては国が2/3、都道府県が1/3を負担しています。

未曾有の被害をもたらした阪神・淡路大震災時には、被災者生活再建支援法(平成10年法律第66号)が制定されておらず、多くの被災者が災害援護資金を頼りに生活再建を余儀なくされましたが、10年という期間での返済が難しく、期限内の償還が困難な者が数多くいたことから、これまで4度にわたり期限が延長されました。この間、関係地方公共団体においては、滞納者への法的措置などにより最大限の債権回収に努めてきた(貸付金額に係る償還率90%以上)一方、借受人の資力が十分にないこと等のため、震災から20年以上が経過した現在においても回収困難な債権が残ることとなりました。このような状況に鑑み、関係自治体の要望等も踏まえつつ、この問題の終局的な解決策を検討するため、与党を中心に議論が行われました。

その後、与野党調整の結果、以下の6点を柱として議員立法により災害弔慰金法を改正することとなりました。

  1. 被災者生活再建支援法制定以前の災害(阪神・淡路大震災)について、一定の所得・資産要件による免除
  2. 平成31年4月以降は保証人の要否を市町村に委ねたことを踏まえ、それ以前の災害について、償還期限から10年経過後に、市町村が保証債権を放棄できるようにする
  3. 破産の場合は、20年の経過を待たずに、死亡等と同様に免除
  4. 免除等のため、市町村に資産・収入を調査する権限を付与する
  5. 市町村は、災害弔慰金等の支給に関する事項を調査審議するため、審議会等を設置するよう努める
  6. 国は、災害弔慰金、災害障害見舞金、災害援護資金の制度の周知を図る

改正法は、衆議院災害対策特別委員会提案により発議され、衆参両院の議論を経て、令和元年5月31日の参議院本会議において全会一致で可決・成立し、6月7日に公布、8月1日より施行されました。

2. 改正法の概要

(1)償還免除
市町村は、災害援護資金の貸付けを受けた者が死亡したとき、又は精神若しくは身体に著しい障害を受けたため災害援護資金を償還することができなくなったと認められるときに加え、破産手続開始の決定又は再生手続開始の決定を受けたときは、当該災害援護資金の償還未済額の全部又は一部の償還を免除することができることとしました。ただし、次のいずれかに該当するときは、この限りでないこととしました。

  1. 災害援護資金の貸付けを受けた者が、(2)により報告を求められて、正当な理由がなく報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
  2. 災害援護資金の貸付けを受けた者の保証人が、当該災害援護資金の償還未済額を償還することができると認められるとき。

(2)報告等
市町村は、この法律の規定により、償還金の支払いを猶予し、又は災害援護資金の償還未済額の全部若しくは一部の償還を免除するか否かを判断するために必要があると認めるときは、災害援護資金の貸付けを受けた者若しくはその保証人の収入又は資産の状況について報告を求め、又は官公署に対し必要な文書の閲覧等を求めることができることとしました。

(3)市町村における合議制の機関
市町村は、災害弔慰金及び災害障害見舞金の支給に関する事項を調査審議するため、合議制の機関を置くよう努めるものとすることとしました。

(4)制度の周知徹底
国は、災害弔慰金等の支給及び災害援護資金の貸付けの申請の機会が確保されるよう、これらの制度の周知徹底を図るものとすることとしました。

(5)被災者生活再建支援法附則に規定する都道府県の基金に対する資金の拠出があった日前に生じた災害に係る償還免除の特例
市町村は、被災者生活再建支援法附則に規定する都道府県の基金に対する資金の拠出があった日前に生じた災害に係る災害援護資金について、当該災害援護資金の貸付けを受けた者がその収入及び資産の状況により当該災害援護資金を償還することが著しく困難であると認められる場合として内閣府令で定める場合(※1)には、償還未済額の全部又は一部の償還を免除することができることとしました。また、市町村が償還を免除したときは、都道府県及び国の原資貸付金の償還を免除することとしました。ただし、災害援護資金の貸付けを受けた者が、(2)により報告を求められて、正当な理由がなく報告をせず、又は虚偽の報告をしたときは、この限りでないこととしました。

(6)平成31年4月1日前に生じた災害に係る災害援護資金の保証債権に関する特例
平成31年4月1日前に生じた災害に係る災害援護資金の貸付けを受けた者の保証人に対して有する権利について、市町村が、当該災害援護資金の償還期間の終期から10年を経過した後に地方自治法(昭和22年法律第67号)の規定により議会の議決を経て当該権利を放棄したときは、都道府県及び国は、市町村に対し、その保証人の保証を受けた者であって内閣府令で定める事由(※2)があるものの償還未済額に相当する額の都道府県及び国の原資貸付金の償還を免除することとしました。

(7)改正法の施行日
この法律は令和元年8月1日から施行することとしました。




※1内閣府令で定める場合

○災害援護資金の貸付けを受けた者の収入額から租税その他の公課の額を控除した額が、150万円未満であること。

○災害援護資金の貸付けを受けた者の資産の状況が、次に掲げる状態にあること。

  1. 償還に充てることができる居住の用に供する土地及び建物以外の資産を保有していないと認められること
  2. 預貯金(生活費の入金等を控除した金額をいう。)が、20万円以下であること

※2内閣府令で定める事由

○平成31年4月1日前に生じた災害に係る災害援護資金の貸付けを受けた者の保証人に対して有する権利の放棄の際において、当該保証人が災害援護資金の貸付けを受けた者に代わり当該災害援護資金を継続的にかつ現に償還しており、かつ、当該償還が完了していないこと。

○災害援護資金の貸付けを受けた者が(1)又は(5)の償還を免除することができる場合に該当しないこと。



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