防災リーダーと地域の輪 第38回

仙台八木山防災連絡会

防災リーダーと地域の輪 第38回

東海地方は自動車産業を中心とした製造業の一大集積地ですが、南海トラフ地震などの巨大災害の発生が危惧されています。災害によって東海地方の企業が深刻な被害を受ければ、日本経済に大きな影響を与えます。

この東海地方に立地する企業や地域の防災力向上に取り組んでいるのが、愛知県豊田市の愛知工業大学地域防災研究センターです。平成17年(2005年)に設立された同センターは、緊急地震速報の高度化や強震動の予測などの技術開発、社会人防災マイスター養成講座や中学校での防災マップ作成などの防災啓発・教育活動を行なっています。

同センターが企業の防災啓発の一環として平成18年に設立したのが、「地震に強いものづくり地域の会」(あいぼう会)です。緊急地震速報の研究に協力していた企業の間から、防災について幅広く話し合える場を設けるべきでは、という意見が出されたことが設立のきっかけでした。

あいぼう会は、従業員数が100名から1,000名ほどの製造業の企業を中心に、大学や地域コミュニティ団体など56組織が会員となっています。同会の運営と活動には、会員企業の防災対策を担う実務担当者が参加しており、彼らの防災に関する知識の取得や会員相互の交流を通じて、企業防災力が向上することを目指しています。また、アドバイザーとして愛知県や豊田市などの地方公共団体、専門委員として経済団体、商工会議所、電力会社、ガス会社が参加し、活動への助言や外部評価を行なっています。

あいぼう会では、大学や公的機関の防災専門家が講演を行う「防災ワークショップ」、先進的な防災対策を実施している施設を視察する「見学会」、実際に防災活動を体験する「講習会」などを、年間を通じて開催しています。東日本大震災後には、宮城県の石巻市と女川町で、市長、町長、被災企業を訪問した他、宮城県庁で企業の復旧・復興を担当する職員を講師に招いて講演会も開催しています。

「私たちの活動には企業の防災担当者が業務の一環として参加しているので、その成果が各社の防災対策に反映されやすくなっています。元参加者の中には、退職後、地域の防災活動に取り組んでいる人もいます」と同会の会長で、愛知工業大学地域防災研究センター長の横田崇さんは言います。

あいぼう会は企業内の防災人材の育成が評価され、設立10年目の平成28年には「防災まちづくり大賞」(消防庁長官賞)と「防災功労者内閣総理大臣表彰」を受賞しました。

愛知県豊田市にある愛知工業大学地域防災研究センター

愛知県豊田市にある愛知工業大学地域防災研究センター


事業の継続

現在、あいぼう会が特に力を入れている活動が、BCP(事業継続計画)の普及です。BCPは、自然災害やテロなど突発的な事態に遭遇した場合に、被害を最小限にとどめ、迅速な復旧を行い、短期間で企業活動を再開させるための計画で、復旧すべき業務の優先順位や緊急時の連絡体制、避難計画などを策定します。BCP策定後には、その実効性を評価するための訓練も必要となります。

あいぼう会は、平成30年度に「BCP塾」を1年にわたって開催、BCP策定のポイントや訓練の方法などを紹介しました。あいぼう会が会員企業を対象に実施したアンケートでは、BCPを策定している企業の割合は77%に達しています。しかし、BCPを踏まえて訓練を行なっている企業は33%にとどまっています。今後は、会員企業の従業員の間でLCP(生活継続計画)の普及を進める予定です。LCPは、個人や家庭が災害などに遭った場合に、被害を最小限に抑え、生活を早期に復旧させるための備えで、家屋の耐震補強、家具の転倒防止、非常用品の準備、緊急時の家族間の連絡方法の確認などが含まれます。

「従業員やその家族が安全でいられることは、企業にとっても防災力の向上につながります。BCPと合わせてLCPも策定することが大切なのです」と横田さんは言います。

あいぼう会では現在、会員企業6社を対象に、従業員の自宅での家具固定の状況などについてアンケート調査を行なっています。今後は、地域の中で防災活動ができる企業や従業員に関する調査も進め、企業、従業員、行政と連携した地域の防災力向上の仕組みを作っていきます。

講習会で家具固定の方法を学ぶ会員(左) 愛知工業大学のキャンパスで開催される「BCP 塾」(右)

講習会で家具固定の方法を学ぶ会員(左) 愛知工業大学のキャンパスで開催される「BCP 塾」(右)

東日本大震災で被災した企業を訪問する会員(左) 豊田市消防本部の応急手当講習を受ける会員(右)

東日本大震災で被災した企業を訪問する会員(左) 豊田市消防本部の応急手当講習を受ける会員(右)




(画像提供:すべて あいぼう会)


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