防災の動き

多発する災害とNPO・ボランティアの支援活動

2018年は、大阪北部地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震など、避難生活が長期化するような大規模な災害が続いた。こうした状況の中、被災者の避難生活を支えるため、また生活の再建を支援するため、数多くのボランティアやNPO等の多様な支援団体が被災地に駆けつけ、活動を行った。

大阪北部地震

6 月18日に震度6弱を観測した大阪北部地震では、5万棟以上の住家が被害を受ける災害となった。大阪では、社会福祉協議会や生活協同組合、防災士会、NPOなどによって構成されている「おおさか災害支援ネットワーク(OSN)」が4年前か始動しており、府内外の支援関係者との関係構 築が進められていた。今回の地震を受けて、OSNは、6月21日に「災害時連携会議」を立上げ、NPO等の支援団体の受け皿となり、支援団体同士の連携が図られた。特徴的だったのは、被災家屋のほとんどは「一部損壊」であったが、瓦屋根の被害が多く、応急的に家屋を守るために「ブルーシート張り」のニーズへの対応に追われた。

災害時連携会議をきっかけに、技術的支援が専門のNPO同士の連携が進められ、被災が大きかった複数の自治体に支援が入るような調整が行われた。圧倒的な数の被災家屋がある一方で、対応できるノウハウを持ったNPOや建設事業者の数は限られており、どの家屋に対して優先的に支援を行うかの見極めが大きな課題なった。この課題を解決するため、社会福祉協議会とNPO等が連携し、要配慮者世帯の家屋を優先的に支援する「トリアージ」が行われるようになった。

その後に発生した「平成30年7月豪雨」により大阪府外からのNPO は西日本の被災地に移動するなど支援の担い手が減少、また追い打ちをかけるように台風21号により、大阪エリアの被害はさらに拡大する事態となった。今現在も、大阪の地元のNPOが中心となり、ブルーシート張りの支援は継続されている。また対応能力を向上させるために、ブルーシート張りの講習会が行われるなど、地元の担い手の育成も行われている。

おおさか災害支援ネットワーク(OSN)「災害時連携会議」2018年6 月21日

おおさか災害支援ネットワーク(OSN)「災害時連携会議」2018年6月21日

平成30年7月豪雨

九州から中部地方まで広域的に被害が広がった平成30年7月豪雨では、200を超えるNPO等の支援団体が現地での活動を行った。愛媛県、岡山県、広島県では、それぞれで「情報共有会議」が立ち上げられ、行政・災害ボランティアセンター・NPO等との連携が図られた。長期化する避難所の生活環境の改善、大量の土砂の撤去、状況がつかみにくい在宅被災者の支援、生活の糧を守るための生業支援などの支援課題に直面することとなった。

大阪北部地震でのブルーシート張りの様子 ©DRT JAPAN

大阪北部地震でのブルーシート張りの様子
©DRT JAPAN

NPO等の支援の調整が「情報共有会議」を通じて行われるようになったが、今回の災害で一番の課題は、広域的な災害であったことから支援団体が各地に分散せざるを得ない状況になってしまったことであった。避難所の運営や、被災家屋への技術的支援(重機を使った土砂出しや、床下への対応等)ができる団体の数は限られており、被災した地域に対して支援のモレ・ムラのないような体制をつくることが厳しい状況となった。南海トラフ巨大地震など、今後想定される大規模災害に対応するために、支援の担い手をどうやって育成していくのか、限られたNPO等のリソースをどうやって有効活用していくのかが、大きな宿題となった。

12月時点においては、各県において「地域支え合いセンター」が立ち上げられており、仮設住宅(民間賃貸住宅などの「みなし仮設」も含む)や在宅被災者への見守り支援が開始されている。NPOによる在宅世帯への調査も行われ、全壊家屋に住み続けている世帯も存在することなどの状況が把握されつつある。地域支え合いセンターを中心に、支援活動を行うNPO等と連携した復興期の体制づくりが進められている。「仮」の住まいから、本来の生活を取り戻すまでの間、どのように地域を支えていくのか、復興への取り組みは始まったばかりの状況である。

これらの災害に加えて、9月には「北海道胆振東部地震」が発生し、12月時点において、仮設住宅等への移行が進んでおり、NPO 等の支援活動も継続されている。一方で、2016年に発生した熊本地震、昨年発生した九州北部豪雨の被災地では、現在も仮設住宅での生活が続いている。これらの被災地においても、地元のNPO が中心となり、「情報共有会議」が継続され、生活再建に向けた支援活動が行われている。

NPO 等の民間の支援は、近年の災害対応の教訓から行政との連携が進み、内閣府防災担当からは「防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック~三者連携を目指して~」が2018年4月に発行された。その効果もあり、被災各地で「情報共有会議」が立ち上げられ、復興期においても継続されていることから連携の重要性が浸透してきている。しかし、次の災害に備えて、大阪北部地震のブルーシート張りや、広域災害への対応など、今年起きた災害で突き付けられた課題も多く残されている。





〈全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD) 事務局長 明城 徹也〉

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