防災の動き

津波防災の日スペシャルイベント
「最新科学×津波×地域防災」

11月5日の「津波防災の日」に、川崎商工会議所 KCCIホールにて、内閣府、防災推進協議会、防災推進国民会議の主催による津波防災の日スペシャルイベント「最新科学×津波×地域防災」が開催され、企業、行政機関、自主防災組織などから363名が参加しました。このイベントでは、「地域で津波に備える」をテーマに、津波の最新科学や全国の地区防災計画の取組みを紹介する特別セミナーと、学校や地域で活用できる津波防災教育ツールミニ体験会が開催されました。

開会にあたり、舞立昇治内閣府大臣政務官と福田紀彦川崎市長が挨拶を行い、舞立政務官は、日本の総合的な防災力の向上には自助・共助を支える地区防災計画の取組みが大いに有効であり、最新の科学技術を地区防災計画と掛け合わせることで津波に備える効果的な対策を探求していきたいと述べました。

福田市長は、今回のイベントで得た情報をそれぞれの地域や会社で活用し、津波で死者を出さないという取組みにつなげて頂きたいと述べました。

イベントプログラム

イベントプログラム

緊急報告『9 月28 日にインドネシアで発生した地震・津波について』

イベントではまず、9月28日にインドネシアのスラウェシ島で発生した地震・津波の被害を現地調査した今村文彦東北大学災害科学国際研究所所長から、被害の大きかった島中部の都市パルには、地震からわずか6分で津波が到達していること、土砂崩れ、地盤沈下、液状化も発生していることなどが発表され、日本は地域開発を含めた復興支援を進める必要があると報告されました。

セッション1『地域における津波防災の取組みと地区防災計画の役割』

次に、矢守克也京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授が「本当に人の命を守る津波避難訓練を」というテーマで、スマホアプリ「逃げトレ」の狙いを説明し、高校生が「逃げトレ」を活用して地域の高齢者の避難を補助する津波避難訓練の成果を紹介しました。

また、居間や寝室から玄関まで自力で移動する「屋内避難訓練」を取り上げ、屋外の訓練に参加できない高齢者でも実行できる訓練であり、意義が大きいと指摘しました。

続いて、津波に備えた地区防災計画の作成に取組む6地区の代表者が、各地区の活動を報告しました。その後、矢守教授、今村教授、6地区の代表者、佐谷説子内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(普及啓発・連携担当)による意見交換が行われました。「楽しく真剣に防災を進める」事例として、雪かきと豚汁の食事を冬季避難訓練に組み合わせることにより訓練への参加を促すというウトロ地区の事例が紹介されるなど、各地区のユニークかつ具体的な試みが次々に報告されました。

  • 363名が参加した津波防災の日スペシャルイベント「最新科学×津波×地域防災」
    363名が参加した津波防災の日スペシャルイベント「最新科学×津波×地域防災」
  • 舞立昇治内閣府大臣政務官
    舞立昇治内閣府大臣政務官
  • 福田紀彦川崎市長
    福田紀彦川崎市長

セッション2 『川崎市の津波防災 ~企業・地域での最新科学活用に向けて~』

セッション2では、川崎市の津波防災に焦点をあて、高橋実川崎市総務企画局危機管理監は、多様な産業が集積する臨海部で、住民の避難等のソフト対策と海岸保全施設の整備等のハード対策を組み合わせた総合的な取組みを川崎市が推進していることを紹介しました。

続いて、今村所長が、産官学の共同プロジェクトであるスーパーコンピュータ(スパコン)を用いたシミュレーションとスマホアプリによる津波避難時の自助・共助支援について講演を行い、今後、スマホアプリを使った実証実験を通じて、シミュレーションの高度化を図りたいと述べました。

セッション3 パネルディスカッション『地域・企業・学校における これからの津波防災』

セッション3では、矢守教授がモデレーターを務め、今村教授、高橋危機管理監、佐谷参事官、加藤孝明東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センター准教授、橘香樹JEF スチール株式会社東日本製鉄所(京浜地区)環境防災部副部長がパネリストとして参加し、「地域・企業・学校におけるこれからの津波防災」をテーマにパネルディスカッションが行われ、「観光地などでは地域社会と企業との連携は自然に成り立っているものの、津波防災に関しては意見が対立する場合があるため、地域を構成する様々な立場の人が本音で話せる場を設けること、連携を深めることが大事。」といったご意見など、パネリストそれぞれの経験を踏まえた意見の交換がなされました。

最後に、閉会挨拶に立った今村所長は、今回のイベントを通じて得られた「気づき」を、地域や企業などの中で行動へと移すことの大切さを述べ、イベントを締めくくりました。

津波に備えた地区防災計画の作成に取り組む6 つの地区の代表者が参加して行われた意見交換

津波に備えた地区防災計画の作成に取り組む6 つの地区の代表者が参加して行われた意見交換

イベントの成果

イベントアンケート(有効回答数203)では、「イベントに参加した後の防災意識」については、「向上した」(112)、「少し向上した」(78) という回答が93%を占めました。

「イベントを通じて学びたかったこと」(複数回答)として、「地区防災計画」(117) が挙げられていることから、地区防計画への関心がそもそも高かったと推察されますが、「イベントを踏まえて今後実践したいこと」(複数回答)として、「地区防災計画について学習」(105)、「地元で行われている地区防災計画の取組に参加」(61) が上位となっており、参加者の地区防災計画への関心がより高まった結果となりました。

内閣府としては、引き続き、津波防災意識向上に向けた普及啓発の取組みを行ってまいります。


津波に備える地区防災計画を作成する6地区の取組概要


  • ウトロ地区( 北海道斜里町):世界自然遺産知床の外国人含む観光客の避難や冬季の津波避難・避難後の生活課題を検討

  • 岩原・沼田地区( 神奈川県南足柄市):隣接市町に津波被害が生じた場合に、被災地と支援組織等をつなぐ地区としての防災意識を向上

  • 土肥地区( 静岡県伊豆市):観光防災まちづくりの一環として各主体で「地震・津波対策がんばる地域宣言」や災害対応ルール等を検討

  • 文里地区( 和歌山県田辺市):避難行動要支援者や避難困難者への避難支援と啓発のあり方を含めた避難ルールの見直し

  • 宇品西地区( 広島県広島市):津波被害想定の見直しと津波浸水時緊急退避施設のリストアップ

  • 中島地区( 愛媛県松山市):避難シミュレーターを通じて土砂災害を考慮した津波避難場所・経路を検討



〈内閣府( 防災担当) 普及啓発・連携担当〉

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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