防災の動き

「協助」による帰宅困難者対応

訓練実施の背景

千代田区は、首都東京の中心に位置し、政治・経済機能が高度に集積する、日本の心臓部になります。そして、夜間人口が約6万人に対して、昼間人口が約85万人という、特殊な事情があります。昼間人口が多いということは、大地震のような大規模災害が発生した際に交通機関が停止することにより、自宅に帰ることができない帰宅困難者が大量に発生することが想定されます。

そのため、千代田区では、地域共同体の共助を基本としながらもより広く、人道的支援も含めて、災害時に千代田区にあるすべての人々が相互に助け合い支え合うという、区独自の「協助」の理念を掲げて、早くから帰宅困難者対策に取り組んできました。平成15年度には、日本全国で初めて帰宅困難者対策に主眼を置いた「帰宅困難者避難訓練」を実施し、訓練に先駆けて、東京駅・有楽町駅周辺地区に「帰宅困難者対策地域協力会(以下、「地域協力会」という。)」が設立されました。地域協力会は、区内の主要駅周辺地区の事業所等で構成する自主防災組織で、地域での「協助」の理念をいち早く重要視し、地元企業組織が地区の防災活動に行政と連携して対応する全国のモデルとなりました。平常時は防災訓練等を通じて地域防災力の向上に取り組み、大規模震災等の発生時には、大量に発生すると予測される帰宅困難者に対して、区と連携・協力して情報提供等の支援を行います。東京駅・有楽町駅周辺地区で設立された後、地域協力会は、飯田橋駅、四ツ谷駅、秋葉原駅の千代田区を代表するターミナル駅の周辺地区に設立され、各地区の実情に合わせた帰宅困難者対策を展開しています。

また、帰宅困難者避難訓練は、東日本大震災の教訓を境に、「帰宅困難者対応訓練」にその姿を変えていきました。これは、東日本大震災の際に、首都圏の交通機関が麻痺して、歩いて帰宅しようとする人たちが大量に発生し、緊急車両が現場にすぐに到着できない事態に陥ってしまったことを受けて、一斉帰宅の抑制をすることに考え方を方向転換したためです。それまでの訓練では、速やかに歩いて帰ることを主眼に置いて行ってきましたが、方針転換後の訓練では、まずは自分の身を守り、すぐには帰宅しないことを重点的に行っています。

訓練の概要

昨年度は、平成30年3月9日(金)に、千代田区全域で帰宅困難者対応訓練が行われました。まずは、自分の身を守る訓練として「シェイクアウト訓練」を区内全域で実施し、その後、地域協力会があるそれぞれの地区で、大規模な防災訓練が行われました。

シェイクアウト訓練とは、「まずひくく、あたまをまもり、うごかない」の安全行動をとる訓練で、1分でできる訓練として、平成23年度から行われています。また、この訓練は、いつでもどこでもできるという特長があります。地震大国の日本では、どこで大地震に遭遇するか想定できません。そのため、屋外、自宅、職場等どこで大地震が起きても対応できるように、場所を問わない訓練が必要不可欠です。千代田区は、そのことにいち早く注目し、日本で初めてのシェイクアウト訓練を行うことになりました。参加人数は、開始当初の平成23年度では約2万5千人でしたが、今年度にはその倍以上の約5万5千人の方々が参加しました。

各地域協力会での訓練

帰宅困難者対応訓練は、地域協力会が主体となり、各地区の実情に合った訓練を実施しています。東京駅・有楽町駅周辺地区では、「帰宅困難者一時滞在場所設営訓練」を実施し、帰宅困難者が一時的に滞在する際のアクシデントを想定して、どう対応するかを検証しました。この訓練は、事前に地域協力会の会員が集まり、「帰宅困難者一時滞在場所運営ゲーム」を実施した上で行ったため、ゲームの中で起こったことを実際に体験するという、画期的な訓練となりました。

飯田橋駅周辺地区では、アイガーデンエアを中心に訓練を展開し、「要配慮者受入準備訓練」や「情報通信訓練」、「本部立ち上げ訓練」を行いました。

四ツ谷駅周辺地区では、帰宅困難者受入施設への誘導から、誘導された帰宅困難者も受入場所の設営に参加する形で、「帰宅困難者受入訓練」が行われました。帰宅困難者受入施設では、帰宅困難者も支援する側になるということを、体験する訓練となりました。

東京駅・有楽町駅周辺地域協力会 の「帰宅困難者一時滞在場所設営訓練」
東京駅・有楽町駅周辺地域協力会 の「帰宅困難者一時滞在場所設営訓練」

四ツ谷駅周辺地域協力会の「帰宅困難者受入訓練」
四ツ谷駅周辺地域協力会の「帰宅困難者受入訓練」

秋葉原駅周辺地区では、外国人観光客が多いという土地柄を反映して、「外国人対応訓練」が行われました。また、参加した外国人に、警察署による救出訓練や、災害時対応に関する学習をしていただき、地震大国日本で地震に遭遇した場合の対応を学んでもらいました。

また、内閣府を中心とした官公庁との連携を確認する訓練も、行われました。皇居周辺に展開した移動基地局車や移動電源車、衛星通信車等を利用してナーブネットやICT ユニットを活用した動画転送を行いました。さらに、MCA無線機を使用して、官公庁の施設が帰宅困難者の受入が可能かどうかを確認するという想定で、通信訓練を実施しました。

内閣府が訓練で使用した通信機器「ICT ユニット」
内閣府が訓練で使用した通信機器「ICT ユニット」

訓練継続の必要性

帰宅困難者対策を主眼に置いた防災訓練は、15年前から実施していますが、時代の変遷とともに、内容や目的を変えてきました。しかし、より実践的な訓練を継続し、災害に備える姿勢は変わりません。訓練は、継続してこそ意義があるものになります。今後も、その時代に合った実践的な訓練を行い、千代田区に集うすべての人々が力を合わせて、帰宅困難者をすぐには帰宅させないという方針のもと、来るべき災害に備えていくよう努めてまいります。



〈千代田区政策経営部災害対策・危機管理課〉

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内閣府政策統括官(防災担当)

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