防災リーダーと地域の輪 第35回

東京都国分寺市「高木町自治会」

防災リーダーと地域の輪 第35回

東京都国分寺市にある高木町は、人口約3,000名(1,200世帯)の閑静な住宅街。町は平坦な台地にあり河川もないため、土砂災害や洪水などの危険性は低いです。しかし、消防車が入れない狭い道路沿いに木造住宅が並んでいる所も多く、地震による建物の倒壊や火災で、被害が広がることが懸念されています。

この町で35 年以上にわたり防災活動を担っているのが、高木町自治会(会員数約830世帯)です。自治会が本格的に防災活動を始めたきっかけは、ブロック塀の倒壊で多くの人が亡くなった昭和53年(1978) の宮城県沖地震。高木町にも数多くブロック塀があったことから、自治会は安全で緑豊かな町並みを作り出す塀として、「生け垣」を普及させる活動を開始。その後、昭和56年には国分寺市と防災まちづくり推進地区協定を結び、行政や専門家の支援を受けながら、防災部の設置、ニュースレターの発行、防災訓練の実施など活動を広げていきました。そして、昭和59年に全国初と言われる「地区防災計画」を作成、今に続く防災活動の基盤となっています。

高木町自治会は、平成27年(2015)6月に内閣府の地区防災計画モデル地区として選定されたことを機会に、地域の現状を踏まえ、自助と共助の視点から地区防災計画の改定に着手。自治会の役員や防災部のメンバーなど約15名を中心に議論を重ね、平成28年2月に改定を完了させました。

改定のポイントについて、高木町自治会の櫻井幹三会長は次のように説明します。

「30 年前と比べると、町には住宅がとても増えました。災害による被害規模も大きくなると想定されており、自治体だけでは住民への支援が十分に行き届かないと考えられます。こうした現状を踏まえ、今回の改定では、災害時の住民の行動のテーマを『火を出さない』と『安否確認』に絞りました。テーマを絞ることで、災害時に自分達が何をすべきかが、より明確になりました。」

この地区防災計画をもとに、高木町自治会は実災害を想定した様々な訓練を実施しています。例えば「支援物資配布訓練」では、災害支援所となる地元の神社で物資を収集・仕分けし、町内にある71 の班を通じて各戸に届けています。今年2月には3回目の訓練を行い、東京都と国分寺市から提供された水、ビスケット、アルファ米など7品目を会員に配りました。

また、「災害時行動訓練」では、班長と住民の協力による安全確認と被災状況調査、それらの情報の高木町地区本部への伝達などを行なっています。訓練には、迅速な安否確認のために、会員が自宅のドアに「家族全員無事です」と書かれた「安全カード」を掲示することも取り入れています。

「地区防災計画を作っただけで安心してはいけません。訓練を通じて計画を検証すると、様々な問題が分かってきます。そうした問題をひとつずつ解決して、計画の精度を高めていかなければならないのです」と櫻井会長は言います。

自治会は会員以外の住民に防災意識を浸透させる活動にも力を入れています。防災訓練と住民同士の交流を目的に毎年開催している「防災ファミリーひろば」もその一つ。このイベントでは、初期消火や応急救護などの防災訓練に加え、豚汁の炊き出し、お手玉やあやとりなどの遊び・ゲーム・クイズ大会といった二世代,三世代で参加できるレクリエーションも盛り込み、毎回300名近くを集めています。さらに、自治会の防災活動を紹介した年4回発行の「防災まちづくり通信」や地区防災計画の冊子、日頃の防災の備えや避難の時の注意点などをまとめた小冊子「防災知恵袋」などを全戸に配布しています。

「防災ファミリーひろば」での初期消火訓練
「防災ファミリーひろば」での初期消火訓練

(写真左)あやとりなどの遊びも楽しめる「防災ファミリーひろば」(右)安否確認のため、ドアに掲示する「安全カード」
(写真左)あやとりなどの遊びも楽しめる「防災ファミリーひろば」(右)安否確認のため、ドアに掲示する「安全カード」

(写真左)「災害時行動訓練」でのAED講習(右)地元の神社で支援物資を収集・仕分けする「支援物資配布訓練」
(写真左)「災害時行動訓練」でのAED講習(右)地元の神社で支援物資を収集・仕分けする「支援物資配布訓練」

こうした活動の大きな財源となっているのが、資源ごみの回収です。自治会は会員から回収した空き缶や空き瓶などの資源ごみを売却することで、月約10万円の収入を上げています。この積立金は防災活動の費用に充てられる他、これまで約400万円が被災地への寄付金として活用されています。

この他、自治会では内閣府の「防災スペシャリスト講座」や国分寺市の「市民防災まちづくり学校」への講師の派遣、全国の自治体や自治会からの視察の受け入れなども行なっています。

こうした活動が評価され、高木町自治会は平成29年に「防災まちづくり大賞」( 総務大臣賞)と「防災功労者内閣総理大臣表彰」を受賞しました。

「私たちは、大きな災害が発生しても、全員が無事に乗り越えられる町を目指しています。そのためには、正しい情報を正しいルートで流し、地域全体で共有することが重要です。これをきちんと実行できる人材を、今後さらに多く養成していきたいです」と櫻井会長は語ります。

(画像提供:すべて 高木町自治会)


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