防災の動き

指定都市市長会の大規模災害に対する取組み

指定都市市長会 熊本市長:大西 一史
指定都市市長会  熊本市長:大西 一史

私は、前任の奥山恵美子前仙台市長のご退任に伴い、平成29年9月より、指定都市市長会の災害復興担当市長を引き継ぎ、特命事項である、広域・大規模災害時における指定都市市長会の対応及び復旧・復興における現行制度の改善策等について、全指定都市と連携して取り組んでいます。

「広域・大規模災害時における指定都市市長会行動計画」の策定

平成23年7月、東日本大震災発災後初めて開催した指定都市市長会議(第31回。以下「市長会議」という。)において、当時の平松邦夫元大阪市長より、東日本大震災において一定の効果が認められた対口支援による支援体制の構築が提案されました。

それを受け同年8月に開催された「大規模災害時の支援にかかる指定都市市長会議」における議論を踏まえ、同年10月の市長会議(第32回)において、指定都市市長会としての一体的な支援、対口支援による支援の実施、中央連絡本部や現地支援本部の設置等を定めた「広域・大規模災害時における指定都市市長会の確認事項」(以下「確認事項」という。)を決定しました。

その後、平成24年2月に、奥山恵美子前仙台市長を部会長とする災害復興部会(平成26年より特命事項に改称)を設立し、災害対応法制の見直し及び確認事項を実施するための手続きやその他必要な事項を定める、「広域・大規模災害時における指定都市市長会行動計画」(以下「行動計画」という。)策定の議論を進めていくこととなりました。

この行動計画については、その後約2年間にわたり、指定都市間での議論や関係団体との調整を重ね、平成25年12月の市長会議(第36回)において策定され、平成26年4月施行となりました。これ以降、広域・大規模災害発災時に、当該計画を円滑に運用していくため、「顔の見える関係」の構築も念頭に、各年度の幹事市等が中心となって、定期的に会議や連絡会を開催するとともに、情報伝達訓練・図上訓練や研修会など各種事業を実施しています。

検討の様子(写真提供:指定都市市長会)
検討の様子(写真提供:指定都市市長会)

平成28年熊本地震への対応とその検証

この行動計画が初めて適用されたのが、平成28年4月の熊本地震となりました。

指定都市市長会は、4月14日の前震後直ちに情報収集を開始し、各指定都市の担当所管や関係団体と情報共有を図るとともに、同月16日の本震後、被害状況や被災自治体の状況等を総合的に勘案し、行動計画の適用を決定しました。

この計画に基づき、中央連絡本部を、東京の指定都市市長会事務局に設置するとともに、該当地域ブロックの支援グループの先遣隊として、既に熊本県に入っていた広島市(現地支援本部設置担当市)並びに岡山市、北九州市及び福岡市(以上、支援隊派遣都市)を中心とした現地支援本部を、熊本県庁(のち熊本市役所に移転)に設置しました。

そして、九州地方知事会、関西広域連合等との調整により、指定都市市長会は対口支援先として、熊本市を支援することとなり、指定都市全市による物的支援及び人的支援を開始しました。

この指定都市市長会による迅速な支援活動は、発災直後の混乱する本市にとって大きな助けとなりました。

まず、物的支援については、本市のニーズに応じて、飲料水、アルファ米や保存パン等の食料品、毛布、簡易トイレや排便収納袋、また、トイレットペーパーや紙おむつ、生理用品等の生活必需品といった大量の物資を供給していただきました。

また、人的支援については、先遣隊や現地支援本部の職員とは別に、4月19日から8月31日までの約5ヶ月弱の間に、避難所の運営や罹災証明の発行、建物被害認定調査等を行うために、延べ23,700人の職員を派遣していただきました。

このような中、これら熊本市への支援と並行する形で、平成28年5月の「指定都市サミットin名古屋」において、会長の林文子横浜市長より、平成28年熊本地震で適用した行動計画に基づく指定都市市長会の対応について、早速検証を進めていくことが提案されました。

各指定都市へのアンケート調査やヒアリング等では、「行動計画適用の判断が早かった」、「指定都市が一丸となることで、物的支援や人的支援でスケールメリットを生かした迅速な対応ができた」など、当初の策定意義に叶った評価があった一方で、中央連絡本部の体制、現地支援本部の機能、対口支援の実施方法等についての改善や整理を求める意見がありました。

これらの検証結果に基づき、行動計画及び行動計画の運用マニュアルでもある実施モデルを速やかに改定し、平成29年4月に改正施行しました。また、全都市においても受援計画の策定・改定に取り組むとともに、各都市が保有する災害用備蓄物資の状況について情報共有を図っております。

平成28年熊本地震対応(写真提供:指定都市市長会)
平成28年熊本地震対応(写真提供:指定都市市長会)

今後について

平成29年6月、「大規模災害からの被災住民の迅速な生活再建を支援するための応援職員の派遣の在り方に関する研究会」において報告書がまとめられ、被災市区町村を抜本的に支援するための仕組みとして、「被災市区町村応援職員確保システム」の構築と「災害マネジメント総括支援員」制度の構築が掲げられました。

「被災市区町村応援職員確保システム」では、対口支援団体として、都道府県と並んで指定都市が位置づけられるとともに、対口支援のマッチングのために、被災都道府県等に設置される現地調整会議、及び対口支援を超えて行う全国的な支援の調整のために設置される応援職員確保調整本部の構成員として、総務省及び全国知事会、全国市長会、全国町村会と並んで指定都市市長会の参加が予定されています。

また、指定都市市長会が20年来要請を続けてきた災害救助体制の見直しについては、平成28年12月より、「災害救助に関する実務検討会」が開催され、約1年間に亘り、内閣府、道府県、指定都市の実務担当者による協議が行われてきました。

平成29年12月には、その最終報告において、「内閣府としては、大規模・広域的災害に備えて迅速かつ円滑な事務実施のため、包括道府県と連携体制が取れる指定都市を新しい災害主体とすること、都道府県の広域調整権が適切に機能するように法律で明記することが適切である」旨が示されました。

私も、指定都市市長会の災害復興担当市長として、また、平成28年熊本地震で被災をした指定都市の長として、被災経験とその経験から得た教訓を生かし、基礎自治体としての総合力を有する指定都市が最大限その能力を発揮し、被災された方への支援がより迅速に、より効果的に行き届くような体制の構築に取り組んでまいりたいと存じます。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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