不屈の大地 Build Back Betterの軌跡

美瑛・上富良野(北海道) 大正15年(1926) 十勝岳噴火からの復興

大正15年(1926)5月24日、北海道のほぼ中央にある十勝岳で2度の大爆発が発生。残雪を溶かした泥流が瞬く間に山麓の集落を襲い、144人の犠牲者を出す大災害となりました。

地図

北海道のほぼ中央、富良野盆地の東側に位置する十勝岳(2,077m)が大噴火したのは、大正15年(1926)5月24日のこと。2度にわたる大規模な水蒸気爆発によって火口が崩壊し、高温の岩屑なだれが周囲の積雪を急速に溶かしながら大泥流となって山麓の集落を襲いました。そのスピードは驚異的で、2回目の爆発では1分未満で火口から2.4kmの鉱山事務所に、25分余りで25㎞先の上富良野原野に到達したほど。これにより、死者・行方不明者144人という大災害となったのです。

十勝岳では昭和37年(1962)にも大規模な爆発的噴火が発生。死者5人・負傷者11人の被害となりました。

こうした中、ふもとの街を守るために国と北海道が協力し、美瑛川や富良野川にさまざまな砂防施設の建設を推進。土砂や流木を止めるもの、流れをコントロールするものなど、大小合わせて200数十基の施設によって、泥流の被害に備えています。

また、最も危険性が高い白金温泉地区には集中監視機能を備えた「火山砂防情報センター」、標高930mの十勝岳望岳台には情報発信も行う「防災シェルター」を建設するなど、いざという時には避難所としての役割も果たす施設を設置。さらに、火山活動を見守る監視カメラやGPSなどの観測機器を各地に整備し、ハザードマップを作成して全戸に配布するなど、火山と共生する街づくりが進められています。

大正15年の噴火の際に発生した泥流の様子。大量の流木と土砂を取り込んで破壊力を増し、ふもとの街一面を海のように変えました。(写真:上富良野町教育委員会所蔵)

大正15年の噴火の際に発生した泥流の様子。大量の流木と土砂を取り込んで破壊力を増し、ふもとの街一面を海のように変えました。
(写真:上富良野町教育委員会所蔵)

美瑛川を上空から見た様子。川底や川岸の侵食を防ぐもの、大きな岩や流木を止めるものなど、さまざまな砂防施設が整備されています。(出典:国土交通省北海道開発局旭川開発建設部)

美瑛川を上空から見た様子。川底や川岸の侵食を防ぐもの、大きな岩や流木を止めるものなど、さまざまな砂防施設が整備されています。
(出典:国土交通省北海道開発局旭川開発建設部)

泥流災害を防ぐために整備された砂防設備に水が溜まってできた「青い池」。冬季にはライトアップされるなど人気の観光名所となっています。(出典:国土交通省北海道開発局旭川開発建設部)

泥流災害を防ぐために整備された砂防設備に水が溜まってできた「青い池」。冬季にはライトアップされるなど人気の観光名所となっています。
(出典:国土交通省北海道開発局旭川開発建設部)

表紙の写真

十勝岳のふもと、美瑛から富良野にかけての一帯に広がる、なだらかな丘が連なる美しい景観。
これは、まだ十勝岳連峰が生まれる前の100~200万年前に起きた巨大噴火によるものとされ、大自然の力強さを随所で感じることができます。

表紙絵

(写真提供:photolibrary)

Build Back Betterとは

「Build Back Better(より良い復興)」 とは、2015年3月に宮城県仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」の成果文書である「仙台防災枠組」の中に示された、災害復興段階における抜本的な災害予防策を実施するための考え方です。

本シリーズでは、災害が発生した国内外の事例を紹介し、過去の災害を機により良い街づくり、国土づくりを行った姿を紹介いたします。

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