防災リーダーと地域の輪 第31回

自分たちの町は自分たちで守る

兵庫県宝塚市の中山五月台中学校区では地域住民が自ら地区防災計画を策定することで、地域全体の防災対策の強化につなげている。
自分たちの町は自分たちで守る

兵庫県宝塚市の中山五月台中学校区(中山台コミュニティエリア)は、人口約13,500人(5,900世帯)のうち、65歳以上の住民の割合が約35.6%(宝塚市全域では26.2%)と、高齢化が進む地域である。山間部を削って開発された住宅地のため坂道が多く、広範囲にわたって土砂災害警戒区域があり、地震や土砂災害による被害の発生が想定されている。

この地域で、「自分たちのまちは自分たちで守る。」をスローガンに、防災活動に取り組むのが「中山台コミュニティ災害対策委員会」(以下、災害対策委員会)である。災害対策委員会は、中山五月台中学校区にある自治会、マンション管理組合、幼稚園、小中高校、福祉施設、事業所など、22の団体の代表者、民生児童委員、地域ボランティアで構成されている。

災害対策委員会の立ち上げから地区防災計画の策定に至るまで、約5年間に亘って委員長を務めた細川知子さんに、委員会の活動について伺った。

「中山五月台中学校区は高齢化が進んでおり、大規模災害が発生した時に、公の助け無しに、地域住民だけで、十分な対応ができるだろうかという不安がありました。そこで、平成23年2月、災害時の連携体制の構築を目的として、当時の自治会長が中心となり、災害対策委員会を立ち上げました。最初は、約10団体が参加して始まりましたが、立ち上げ直後に、東日本大震災が発生したことで、一気に参加団体は増えました。当時、地域では、防災活動があまり活発に行われていませんでした。そこで、災害対策委員会は地域の防災意識調査アンケートを実施し、その結果から、中山五月台中学校区全域を対象とする大規模な避難訓練を実施することを決めました。平成24年以降、毎年行われている大規模避難訓練では、災害対策委員会が地区災害対策本部を立ち上げ、仮想の宝塚市災害対策本部からの指示のもと、中山五月台中学校区にある4つの指定避難所と、福祉避難所を一斉に開設し、地区本部を中心として連携をとるトレーニングを行っています。訓練の参加者は各避難所で、避難者受付訓練、炊き出し訓練、段ボールベッドの組み立て訓練などを行います。また、指定避難所ごとに捜索隊を編成して災害時要援護者宅を訪問し、安否確認を行う自宅避難者捜索訓練も実施しています。」

地区防災計画の策定

平成26年4月から「地区防災計画制度」が開始されると、災害対策委員会は地区防災計画の策定に取り組んだ。災害対策委員会では、自治会の会長や防災担当者、自主防災会の代表、民生児童委員、防災リーダー、地域ボランティア、学校の教員、福祉施設職員など約30人が集まり、毎月定例会議を開催しているが、その中から地区防災計画を担当する7人程のチームで原案をまとめ上げた。

「災害対策委員会で重ねてきた地域の防災活動に関する議論や、実際に大規模訓練を実施してきた経験が、地区防災計画の策定に大いに役立ちました。計画策定にあたっては、外部からの支援が後回しになる可能性も考え、公助に頼らない体制づくりを目指しました。」と細川さんは言う。

災害対策委員会は、中山五月台中学校区に住む住民の議決機関である中山台コミュニティ常任評議会に「中山台コミュニティ地区防災計画」を提案し了承され、平成27年11月に宝塚市へ提出された。中山五月台中学校区は平成27年度内閣府地区防災計画モデル地区にも選ばれ、平成28年5月、中山台コミュニティ地区防災計画は宝塚市地域防災計画の中にも正式に位置づけられた。

中山台コミュニティ地区防災計画は、「大規模災害が発生して孤立し、ライフラインが止まった状況下でも、地域が一体となって、発災から一週間を自分たちで生き延びることを目標」に策定されており、地震、土砂災害を対象とする「平常時の取組み」、「災害時(非常時)の取組み」などがまとめられている。

「平常時の取組み」としては、災害対策委員会による定例会議開催、家庭内備蓄・住宅耐震化の促進、中山台コミュニティエリア全体での大規模訓練の実施、防災資機材の整備・点検、伝令・無線などによる情報伝達網構築などが盛り込まれている。

「災害時(非常時)の取組み」としては、震度6弱以上の地震が発生した場合、3時間以内に住民が集まり、地区災害対策本部を立上げ、宝塚市へ報告すること、地区災害対策本部の役割として、災害情報の収集と住民への周知、避難者情報の集約と宝塚市への報告などが明記されている。

「地区防災計画の策定で、大規模避難訓練の内容、災害本部立上げの手順や役割などを明確化できました。災害対策委員会のメンバーが替わっても、引き継ぎが滞りなくできるようになりました。災害対策委員会が策定した地区防災計画が公的な計画である宝塚市地域防災計画に位置付けられたことは、地域にとって非常に意義深いことです。」

地区防災計画の策定により、中山台コミュニティ災害対策委員会は宝塚市から地区防災計画活動推進補助金の支給を受けることが可能となった。災害対策委員会は無線機、炊き出し用大釜、ライト、発電機、防災倉庫などの防災関連の資機材を購入し、地域に配備している。また、災害対策委員会は地区防災計画を周知するために、説明会の開催、計画をシンプルにまとめた計画概要版の全戸配布、大規模避難訓練参加者には計画冊子の配布を行った。

「説明会の参加者には『こうした計画を作る人が地域にいることは、とても心強いことです。』とおっしゃって頂きました。計画は作っただけでは意味がありません。今後、さらに多くの住民の方々に、計画を理解して頂き、大規模災害が発生したら、地域が一体となって、非常時を生き抜くことが出来るように、常日頃から備えることが重要です。」

細川さんは、現在も副委員長を務めながら、裏方として活動に携わっている。

  • 「大規模避難訓練指定避難所(中山五月台中学校会場)での救援物資配布訓練風景」
    「大規模避難訓練指定避難所(中山五月台中学校会場)での
    救援物資配布訓練風景」人数分に満たない救援物資でも、
    皆で分け合えるように配布の訓練をしています。
  • 「地区防災計画概要版全戸配布の準備作業風景」
    「地区防災計画概要版全戸配布の準備作業風景」自治会等で
    配布するために、委員が仕分け作業しています。

  • 「大規模避難訓練地区災害対策本部訓練風景」
    「大規模避難訓練地区災害対策本部訓練風景」集まる
    地域情報を地図上に落とし込んでいます。

  • 「大規模避難訓練指定避難所(中山五月台中学校会場)での救命講習風景」
    「大規模避難訓練指定避難所(中山五月台中学校会場)
    での救命講習風景」救急隊員の指導のもと、
    AEDや心臓マッサージに取り組みます。

(写真提供:中山台コミュニティ)


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