Disaster Management News―防災の動き

活動火山対策特別措置法の改正

平成26年9月に発生した御嶽山噴火災害の教訓や、火山災害の特殊性等を踏まえ、活動火山対策の強化を図るべく、火山地域の関係者が一体となり、登山者を含めた警戒避難体制の整備を行うこととする「活動火山対策特別措置法の一部を改正する法律(平成27年法律第52号。以下「改正法」といいます。)」が、平成27年7月に成立し、公布されました。ここでは、この改正法について紹介いたします。

1.改正法の経緯

平成26年9月に発生した御嶽山の噴火では、予測困難な水蒸気噴火が突如発生し、火口周辺の多くの登山者が被災しました。この御嶽山の噴火では、登山者も対象とした警戒避難体制の整備や、火山研究体制の強化と火山専門家の育成が必要であることなど、様々な火山防災対策に関する課題が改めて認識されました。これを受け、政府においては、中央防災会議の下に「火山防災対策推進ワーキンググループ」を設置し、平成27年3月に、今後の火山防災対策の推進について最終報告を取りまとめました(最終報告については平成27年度夏号(第79号)をご覧ください。)。
改正法は、この最終報告を受け、法制化すべき点を措置したものです。具体的には、活動火山対策の対象として登山者を明記すること、火山地域の関係者が参画した火山防災協議会の意見聴取を経て地域防災計画に警戒避難体制の整備に関する事項を位置づけること等の措置を講じ、登山者・観光客も対象とした警戒避難体制の整備を図り、ハード・ソフト両面から活動火山対策を推進するものです。
改正法は、平成27年5月29日に閣議決定、同日に衆議院に提出され、衆参両院での審議を経て、同年7月1日に可決・成立し、同8日に公布されました。

2.改正法の概要

(1)基本指針の策定
内閣総理大臣は、活動火山対策の総合的な推進に関する基本的な指針(以下「基本指針」といいます。)を定めなければならないものとしました。基本指針には、活動火山対策の推進に関する基本的な事項や、各種地域指定や計画作成の指針となるべき事項等を定めることとしています。

(2)警戒避難体制の整備等

1.火山災害警戒地域
内閣総理大臣は、噴火の可能性が高く、人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき地域を、火山災害警戒地域(以下「警戒地域」といいます。)として指定できるものとしました。

2.火山防災協議会
警戒地域に指定された都道府県及び市町村は、警戒避難体制の整備に関する協議を行うための協議会(以下「火山防災協議会」といいます。)を組織するものとしました。火山防災協議会は、都道府県知事及び市町村長、気象台、地方整備局、自衛隊、警察、消防、火山専門家、観光関係団体その他の都道府県及び市町村が必要と認める者から構成されます。

雲仙岳の火砕流(平成6年6月24日)

霧島山(新燃岳)の噴火(平成23年1月27日)

3.都道府県地域防災計画に定めるべき事項等
警戒地域に指定された都道府県は、都道府県地域防災計画において、当該警戒地域ごとに、火山現象の発生及び推移に関する情報収集・伝達や予警報の発令・伝達に関する事項、避難のための措置について市町村長が行う通報及び警告に関する事項や避難場所及び避難経路に関する事項について市町村地域防災計画に定める際の基準に関する事項、広域調整に関する事項等について定めるものとしました。

4.市町村地域防災計画に定めるべき事項等
警戒地域に指定された市町村は、市町村地域防災計画において、当該警戒地域ごとに、火山現象の発生及び推移に関する情報収集・伝達や予警報の発令・伝達に関する事項、避難のための措置について市町村長が行う通報及び警告に関する事項、避難場所及び避難経路に関する事項、避難訓練に関する事項、救助に関する事項等について定めるものとしました。また、警戒地域内の不特定多数の者が利用する施設又は要配慮者利用施設で火山現象発生時に利用者の円滑かつ迅速な避難を確保する必要があるものについて、施設名称等を定めるものとしました。

5.住民等に対する周知のための措置
警戒地域内の市町村は、火山現象の発生及び推移に関する情報伝達方法、避難場所及び避難経路等、円滑な警戒避難を確保する上で必要な事項を住民等に周知させるため、これらの事項を記載した印刷物の配布等を行わなければならないものとしました。

6.避難確保計画の作成等
4で市町村地域防災計画に施設名称等を定められた施設の所有者等は、利用者の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な措置に関する計画(避難確保計画)を作成し、避難訓練を行わなければならないものとしました。

7.登山者等に関する情報の把握等
地方公共団体は、登山者等の円滑かつ迅速な避難の確保を図るため、例えば登山届の導入、携帯電話による災害情報に関するメール配信登録サービスの導入等を通じ、登山者等に関する情報把握に努めなければならないものとしました。また、登山者等は、噴火のおそれに関する情報の収集、関係者との連絡手段の確保等、火山現象発生時における円滑かつ迅速な避難のために必要な手段を講ずるよう努めるものとしました。

(3)火山現象の研究観測体制の整備等
国及び地方公共団体が火山現象の研究及び観測のために努めるべき事項に、研究機関相互間の連携の強化並びに火山現象に関し専門的な知識等を有する人材の育成及び確保を加えることとしました。

(4)改正法の施行日
改正法は、公布の日(平成27年7月8日)から6ヵ月以内で政令で定める日から施行するものとしました。

活動火山対策特別措置法の一部を改正する法律の概要

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