Disaster Management News―防災の動き

地区防災計画ガイドラインについて

平成25年6月に災害対策基本法が改正され、市町村内の一定の地区の居住者及び事業者による自発的な防災活動に関する「地区防災計画制度」が創設されました。
内閣府は、地区居住者等が地区防災計画を作成するための手順や方法、「計画提案」する際の手続等を説明した「地区防災計画ガイドライン」を公表しました。

1 地区防災計画制度の創設

我が国は、これまで多くの自然災害に見舞われてきましたが、近年は、首都直下地震、南海トラフ地震等の大規模地震の発生が懸念されています。
このような災害に対応するため、従来、防災計画としては国レベルの総合的かつ長期的な計画である「防災基本計画」と、地方レベルの都道府県及び市町村の「地域防災計画」を定め、それぞれのレベルで防災活動を実施してきました(図表1参照)。

図表1 防災計画の体系(内閣府(2014)「地区防災計画ガイドライン」より)

しかし、平成23年3月の東日本大震災において、自助、共助及び公助がうまくかみあわないと大規模広域災害後の災害対策がうまく働かないことが強く認識され、自助・共助による防災活動が注目されるようになりました。
その教訓を踏まえて、平成25年6月の災害対策基本法の改正では、自助及び共助に関する規定が追加されました。その際、地域コミュニティにおける共助による防災活動を推進する観点から、市町村内の一定の地区の居住者及び事業者(地区居住者等)が行う自発的な防災活動に関する「地区防災計画制度」が創設されました。同制度は、平成26年4月1日から施行されました(図表2参照)。

図表2 地区防災計画制度の全体像(内閣府(2014)「地区防災計画ガイドライン」より)

2 地区防災計画制度の特徴

「地区防災計画制度」の特徴は、1地区居住者等を主体としたボトムアップ型の計画であるほか、2地域のことに詳しい地区居住者等が作成する「地区の特性に応じた計画」であり、3計画を作成するだけでなく、計画に基づく防災活動が実際に実践され、定期的な評価や見直しが行われ、その活動が継続的に実施されること(継続性)を重視しています(図表3参照)。

図表3 地区防災計画制度の特徴(内閣府(2014)「地区防災計画ガイドライン」概要より)

3 計画提案制度の採用

「地区防災計画制度」では、住民参加によるボトムアップ型の手法の一つとして、地区居住者等による計画提案の仕組みを採用しています。
具体的には、地区防災計画を定める方法として、1市町村の判断で地区防災計画を市町村地域防災計画に規定する場合のほかに、2地区居住者等が、市町村防災会議に対して地区防災計画を定めることを提案することができることとしています。この2が「計画提案」です。なお、市町村防災会議には、計画提案に対する応諾義務が課せられています(図表4参照)。

図表4 計画提案のイメージ(内閣府(2014)「地区防災計画ガイドライン」より)

4 地区防災計画ガイドラインの概要

「地区防災計画制度」は、平成26年4月に施行されましたが、それに先立ち、内閣府では、パブリックコメントを経て、地区居住者等による計画作成等の促進を目的とした「地区防災計画ガイドライン」を作成しました(図表5参照)。

図表5 ガイドライン各章の主な内容

このガイドラインは、これから地区防災計画の作成を検討している地区居住者等が、地区防災計画を作成するための手順や方法、「計画提案」の手続等について説明しています。
「地区防災計画制度」では、地区の特性に応じて、自由な内容で計画を作成することが可能であり、地区の過去の災害事例を踏まえ、想定される災害について検討を行い、活動主体の目的やレベルにあわせて、地区の特性に応じた項目を計画に盛り込むことが重要です。
また、平常時、発災直前、災害時、復旧・復興期の各段階で想定される防災活動を整理することが重要であるほか、行政関係者、学識経験者等の専門家のほか、消防団、各種地域団体、ボランティア等との連携が重要になります(図表6参照)。

図表6 防災活動の例(内閣府(2014)「地区防災計画ガイドライン」より)

そのためには、地域コミュニティのメンバーが協力して防災活動体制を構築し、自助・共助・公助の役割分担を意識しつつ、平常時に地域コミュニティを維持・活性化するための活動、地域で大切なことや災害時にその大切なことを妨げる原因等について整理し、「災害時に、誰が、何を、どれだけ、どのようにすべきか」等について地区防災計画に規定することが重要になります(図表7参照)。

図表7 地域コミュニティを維持するためのプロセス(内閣府(2014)「地区防災計画ガイドライン」より)

さらに、地区居住者等が、災害時に実際に地区防災計画に規定された防災活動を実施できるように、市町村等と連携して、毎年防災訓練を行うことが重要であり、防災訓練の結果については、専門家も交えて検証を行い、地区居住者等が、その課題を把握し、活動を改善することが重要です。 そして、防災訓練の検証結果等を踏まえ、PDCAサイクルに従って、毎年の市町村地域防災計画の見直しと連動する形で、地区居住者等が計画の見直し案を提案する等定期的に地区防災計画について見直しを行うことが望まれます。

5 最後に

発災時に、地区居住者等が、「地区防災計画制度」を活用して、行政と連携して、地域コミュニティごとに効果的な防災活動を実施できることは、地域防災力の向上につながるほか、平常時・災害時等を通した地域コミュニティにおける住民の生活や事業者の活動等の維持・活性化につながります。
一方、地域コミュニティにおいて、1人的なネットワーク、2お互い様の意識(規範・互酬性)、3相互の信頼関係等が構築されている場合には、共助による活動が盛んであり、防災や復興にも良い影響があるともいわれています。このような要素を中心として、社会的な効率性を高めるものとして、「ソーシャル・キャピタル」という用語が使われますが、この「ソーシャル・キャピタル」を促進することによって、日頃の地域コミュニティにおける良好な関係を維持することが、いざというときに地域コミュニティにおいて効果的な防災活動を実施することにつながります。
また、防災活動をきっかけとして共助による活動が活発化し、地域コミュニティの良好な関係を構築する可能性もあります。
今後、地区防災計画制度が、地域コミュニティの維持・活性化を通して、地区の実情に応じたきめ細かいまちづくりや被害想定に基づくまちの復興を事前に考えておくこと(事前復興)等にも寄与することが期待されます。
〈地区防災計画制度については、以下のホームページを御覧ください〉
http://www.chikubousai.go.jp/guidline.html

内閣府(防災担当)普及啓発・連携担当参事官室 西澤雅道・筒井智士

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