Disaster Management News―防災の動き

避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン(案)について

内閣府防災は、水害、土砂災害、高潮、津波による災害のおそれがあるときに市町村が発令する避難勧告等の指針となる「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」について、学識経験者や地方公共団体、国の関係機関の意見を聞いて全面的な見直しを実施し、4月8日、都道府県を通じて市町村に通知しました。その概要をご紹介します。

1.改定の経緯

「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」は、平成17年に策定されましたが、その後も洪水や土砂災害において、避難行動の問題や避難の遅れ等により、依然として多くの犠牲者が出ていたことや、東日本大震災等の災害を受けて、平成25年に災害対策基本法が改正され、住民等の円滑かつ安全な避難の確保に関わる事項が充実しました。また、土砂災害警戒情報の提供、指定河川洪水予報の見直し、気象警報等の市町村単位での発表、特別警報の運用開始など、防災気象情報の改善や新たな情報の提供が行われました。これらを踏まえ、ガイドラインの見直しを実施することとなりました。

2.改定のポイント

ガイドラインの改定の主なポイントは次の通りです。

(1)「避難」に関する考え方をあらためて整理
○避難は、「災害から命を守るための行動」であることをあらためて定義した
○従来の避難所への避難だけではなく、家屋内に留まって安全を確保することも「避難行動」の一つとした
・立ち退き避難…指定避難場所や近隣の高い建物等の安全な場所へ移動する避難行動
・屋内安全確保…屋内に留まる安全確保行動
○災害種別毎に、命を脅かす危険性がある事象、立ち退き避難が必要な区域の考え方を示した(図1「水害の対象区域と避難行動の例」)
・水害…大きな河川の堤防沿い、山間部の川の流れが速いところの川岸、浸水深が深いところ(平屋家屋で床上浸水、2階建てで2階以上等)、地下・半地下部分、ゼロメートル地帯のように浸水が長期間継続するところ
・土砂災害…土砂災害警戒区域、土砂災害危険区域等
・高潮災害…高潮により浸水が想定されるところ
・津波災害…津波が到達する範囲全て

図1 河川において避難勧告等の対象とする区域と避難行動について

○市町村が発令する避難勧告等は、空振りをおそれず、早めに出すことを基本とした
・避難が必要な状況が夜間・早朝となる場合に「避難準備情報」を発令

(2)避難勧告等の判断基準をわかりやすく設定
○避難勧告等の判断基準を可能な限り定量的かつわかりやすい指標で示し、判断のために参照する情報を具体的に示した(図2)(図3)
【避難勧告の判断基準の設定例】
 水害…はん濫危険水位に到達 等
土砂災害…土砂災害警戒情報の発表 等
 高潮災害…高潮警報の発表 等
 (津波災害は警報等が出れば全て避難指示)
【参照する情報】
 気象情報…防災情報提供システム(気象庁)
 河川の水位等…川の防災情報(国土交通省) 等

図2 防災情報提供システムの表示例(注意報・警報等)

図3 川の防災情報の表示例(流域平均雨量)

○避難勧告等の発令基準の設定や防災体制に入った段階での防災気象情報の分析について、助言を求める相手を明確にした
【助言を求める相手】
 管区・地方気象台、国土交通省河川事務所等、都道府県の県土整備事務所等

(3)市町村の防災体制の考え方を例示
○市町村の防災体制の移行段階に関する基本的な考え方の例を示した
【防災気象情報と防災体制の例(土砂災害の場合)】
 大雨注意報…連絡要員を配置し、気象状況を見守る体制
 大雨警報…首長等が登庁し、避難勧告の発令が判断できる体制
 土砂災害警戒情報…防災対応の全職員が登庁 等

(4)住民が避難行動を認識してもらう仕組を提案
○住民は、自宅等にどの災害のリスクがあり、避難勧告等が発令された場合にどのような避難行動をすべきかについて、あらかじめ認識してもらうための仕組みを提案した
・災害・避難カード(建物毎に避難が必要となる災害と避難方法を記しておくカード)(図4)

図4 災害・避難カードの記載イメージ:○○市○○町○○丁目○番○号

3.今後の予定

ガイドライン(案)は、平成26年度から試行しますが、避難勧告等の基準を検討するには防災関係機関との調整が必要であることから、市町村に対して、1~2年を目処に見直しを求めることとしています。また、試行期間を経た後、運用実態等を見ながら、必要に応じてガイドライン(案)を修正する予定です。
避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン(案)(平成26年度)https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/guideline/guideline_2014.html

内閣府政策統括官(防災担当)調査・企画担当

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.