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フィリピンにおける台風被災地調査と復興

フィリピンの災害特性と今回の台風

多島海国家であるフィリピンは、世界で三番目の深さのフィリピン海溝等の地殻運動によって東西1100キロ、南北1800キロの海域に7000以上もの島々が散らばるという地形を作り出しており、約30万平方キロの国土はマヨン山、ピナツボ山など活火山を含む山岳が占めていることから、火山噴火とプレート型地震が多く発生しています。同国はまた、熱帯海洋性の気候につき高温多湿で、年平均20個の台風が通過する「通り道」にあたり年間降水量5000㎜の地域も抱えていることから、洪水や土砂災害も頻発しています。2013年11月8日に同国中部を直撃した大型台風が、死者・行方不明約8千人、被災者約1600万人、倒壊家屋110万戸以上という甚大な被害をもたらしたことを受け、アジア防災センターは、IRP及びDRIと連携して現地調査を実施しました。

フィリピンにおける努力の過程は一定の評価をすべき

今回の調査では、早期警戒体制や地域住民の避難状況、防災システムの有効性の確認等の視点により、国・州・市各政府と住民に聞取りを行い、復興に向けての課題と支援策を抽出しました。調査で明らかになったのは、国防省市民防衛局や気象庁により事前予防プログラムが整備されており、台風発生直後から災害情報を把握、予報と警報は中央政府から州、市町村レベルまで伝達、地域住民に対しても避難行動を呼びかけるなどの努力が確認されたことでした。

これはフィリピンが、同じ災害多発国である我が国をモデルとして、2010年の防災法の制定、2012年の国家防災計画の策定など着実に法整備を進めてきたこと、また過去の台風被害を踏まえ、中央・地方政府と一体となって防災に取り組んできた証左であり、こうした防災行政上の努力は一定の評価を受けるべきだと考えられます。他方、今回の台風が未曾有の規模だったことや、地方防災計画が2013年以降に順次策定していく移行期の中で住民レベルの個々の理解の深化には至ってなかったこと、台風に伴う高潮発生が地方レベルの防災担当者にとっては想定外の事象となり、災害情報伝達に影響が出たこと等から大きな人的・物的被害が生じました。

復興に向けては、たとえば、短期的な仮設住宅建設や中長期的な住宅復興等の復興事業において地元被災者を雇用する、また学校・カトリック教会・役所・集会所といった公共建築物を強化することにより、脆弱な家屋に居住せざるを得ない低所得層のための指定避難場所を確保するといったような、地域特性・所得レベルに応じた柔軟な政策誘導が必要だと考えられます。

日本との共通項としての防災、そして復興に向けて

同じ海洋国家であるフィリピンと日本は、人口規模も国土面積も地形的特徴も類似、民主主義や義理人情・恩返し(ウータンナロブ)、伝統的相互扶助慣行(バヤニハン)といった価値観も共有しています。その上、台風・高潮、地震、火山噴火、津波、洪水・土砂災害といった災害が多発する中で、同時に国土強靭化を進めなければならないという共通基盤があります。この台風によって防災の重要性がさらに再認識された今、アジア防災センターでは、IRPとともに、人材育成や復興計画策定、衛星利用などの支援策を展開し、Build Back Betterの概念を持って、フィリピンにおける災害に強い国づくりの実現に向けて積極的な国際貢献を行ってまいります。

(河内紳吾 アジア防災センター研究部参事兼国際復興支援プラットフォーム(IRP)復興専門官)

高潮被害にあったサマール州バセイの村落

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