防災リーダーと地域の輪 第15回‐内閣府防災情報のページ

アイデアと行動力の防災教育

「ジオパーク」という豊かな自然環境に囲まれた新潟県糸魚川市立根知小学校では、さまざまな工夫をこらしたカリキュラムで地域一体の防災活動に取り組んでいる。

根知小学校は、全校児童約30名、教職員約10名の学校で複式教育(複数学年で1クラスを編成)を行っている。同校は、大断層の糸魚川静岡構造線などの複雑で多様性に富んだ地質を有する「糸魚川ジオパーク」内にあり、周辺は古くから地すべりや土石流等の地質災害や雪害も多い地域である。
根知小学校は、2011年度に初めて防災教育チャレンジプランに応募し、それ以来、「ジオパーク」、「防災教育」、「地域」の3つを関連づけた活動を行っている。1年目には、児童たちが防災に関するさまざまなミッションにチャレンジする「防災宿泊体験学習」など、アイデア溢れる活動で(平成23年冬号 №65参照)、防災教育チャレンジプラン「防災教育特別賞」を受賞した。
翌2012年度は、新たな試みとして、学校オリジナルのヒーロー「防災戦隊チャレンジャー」が登場。これは、全教職員が「チャレンジャー」に扮し、レッド(火災)、ブルー(風水害)、グリーン(地震)、ホワイト(雪害)など、各々のテーマに沿ったミッションを児童たちに与えるというものだ。
「『一人ひとつ以上の研究に取り組む』という教職員の校内研修と防災教育を包括して実践できること、また、児童も教職員も防災に取り組みやすくなるように〝楽しむ〟要素を盛り込むことを考えました」と根知小学校教頭の宮川高広さんはユニークなヒーロー誕生の経緯を語ってくれた。
月2回出されるミッションは、小学生には若干ハードルが高いのだが、「回答できたときの達成感やゲームに挑戦するようなワクワク感が児童のやる気につながります」と宮川さんは話す。また、難しい問題は家族と一緒に解くことで、地域の防災知識普及につなげたい考えもあるのだという。
ミッションに正解すると防災カードが1枚もらえ、たくさん集めると対戦ゲームも楽しめる。また、地域を学ぶ「糸魚川ジオパーク検定」(糸魚川ジオパーク協議会主催)に合格すると、カードが複数枚もらえるという特典がある。

根知小学校2012年度の防災教育活動。(写真左上から時計回り)夏の防災宿泊体験中に地域に手作りの「安否札」を配布、運動会での避難訓練、バケツリレー、水をかける消火訓練をかねた運動会競技
(写真提供 糸魚川市立根知小学校)

学校が地域防災を牽引する

児童向けの活動にとどまらず、地域防災にも積極的に関わってきた根知小学校では、周辺世帯への手作りの「安否札」配布や、地域住民が参観に訪れる運動会で、事前通知をしない「サプライズ避難訓練」も実施した。
緊急地震速報を受信、地震で火災も発生したとして、児童と地域住民が一緒に避難行動やバケツリレー、消火訓練を行った「サプライズ避難訓練」は、「役立つ体験ができた」と参加者に大好評だった。また、「安否札」は地域の防災訓練でも活用されている。
このような地域ぐるみの活動が評価され、根知小学校は、2012年度の防災教育チャレンジプラン「防災教育大賞」を受賞した。
約2年の防災教育を経て、児童たちは、積極的に防災活動のアイデアを提案するなど、地域防災に対する使命感も芽生えてきている。また、学校との協働により地域の防災活動も活性化され、2013年4月に、念願の「自主防災組織」が立ち上げられた。
学校では今後、自主防災組織と合同の防災訓練や地域の研修会実施も検討している。根知小学校の防災教育は、地域との信頼関係を深めながら、さらに進化していくことだろう。

根知小学校オリジナルヒーロー「防災戦隊チャレンジャー」
(提供 糸魚川市立根知小学校)

防災リーダーの一言

「学校は多忙! 安全教育をしっかりやっていれば防災教育は必要ない!」という声を聞いたことがあります。しかし私は、閉鎖された学校の中で児童と教職員のみで災害安全の学習や避難訓練をしていても、防災教育にはなりにくいと考えています。それは、被災地で聞いた「学校の先生はマニュアル通りにしか動こうとしない」といった声などについて考えた時に、日頃から保護者や地域を巻き込んだ防災教育こそが必要だと感じたからです。
また、へき地小規模校にいると、「町の要は学校である」と強く思います。
防災教育は町づくり、防災教育の推進は、地域とともに歩む学校運営そのものです。

宮川高広
みやがわ・たかひろ
糸魚川市立根知小学校 教頭

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内閣府政策統括官(防災担当)

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