特集 新しい津波警報‐内閣府防災情報のページ

2013年3月から、新しい津波警報の運用が開始されました。
新しい津波警報では、津波により甚大な被害が生じた東日本大震災の教訓を生かし、避難行動を適切に支援するための改善がなされています。
これを機に、イザという時に津波から身を守る行動ができるように備えておきましょう。

東日本大震災の教訓

東日本大震災は、従来の津波警報の課題が明らかになった災害でした。
各地の津波観測施設で観測された津波の高さは、福島県相馬で9.3m以上、岩手県宮古で8.5m以上、大船渡で8.0m以上など。また、岩手県宮古市では、30mを越す遡上高(陸地の崖や斜面を駆け上がった津波の高さ)が確認されたほか、仙台平野等では、津波が海岸線から約5km内陸まで浸水したところもありました。この震災による死者は、約1万6千人で、その多くが津波による犠牲者でした(2013年1月現在)。
この津波では、地震規模の推定が過小評価であったために、津波警報第1報で、予想される津波の高さが実際の観測値よりも低く発表されたことが、避難の遅れにつながった一因と考えられています。またその他の要因として、広帯域地震計(通常の地震計よりも長周期の波形を観測することができる地震計)が振り切れたために、初期の段階で地震の規模(マグニチュード)を正しく把握できず、津波警報の更新が速やかにできなかったことなども挙げられています。
気象庁は、このような課題の改善に向けた検討を重ね、精度の向上と、避難行動に結びつく警報を目指して、3月から新しい津波警報を運用開始しました。

津波警報・注意報

津波警報は、津波による災害発生が予想される際に発表される重要な情報です。
津波に関連する警報等は左記の考え方に基づいて発表されます。
大津波警報
 住家の全壊が見られるなど甚大な災害となる恐れがある場合
津波警報
 陸上に遡上する津波が予想され、住家への浸水などの重大な災害の恐れがある場合
津波注意報
 沿岸部の海上、海中及び海岸付近へ注意を呼びかける場合
津波警報・注意報は、避難に当てられる時間を出来るだけ確保するため、第1報が地震発生後約3分で発表されます。そして、その後「予想される津波の高さ」や「津波の到達予想時刻」等の情報が発表されます。
マグニチュード8を超えるような巨大地震の場合は、正しい地震の規模をすぐには把握できないため、その海域における最大級の津波を想定し、予想される津波の高さを数値ではなく「巨大」、「高い」という表現で発表し、非常事態であることを伝えます。
「巨大」という言葉を見聞きしたら、東日本大震災クラスの津波の襲来を考え、ただちに、より高い場所に避難しましょう。
また、正確な地震の規模が分かった場合は、予想される津波の高さが、1m、3m、5m、10m、10m超の5つの区分で発表されます(5頁表「津波警報・注意報の分類と、とるべき行動」参照)。
津波の高さの予想に対し、各区分の高い方の値が、予想される津波の高さとして発表されます。例えば、3mから5mの区分の津波が予想された場合は、発表では、「予想される津波の高さは5m」となります。この「津波の高さ」とは、津波がない場合の海面からの高さです(7頁「津波のメカニズム」参照)。

津波警報・注意報の分類ととるべき行動

津波警報の配信

気象庁から発表される津波警報は、防災行政無線、専用の受信機、自治体広報車、テレビ・ラジオなどを通して提供されます。また、携帯電話やスマートフォン等では、対象となる地域にいる場合、「津波警報」が自動的に配信され、メッセージが表示されます。対象機種や受信設定の方法などの詳細を、携帯電話各社のホームページ等で確認しておきましょう。
なお、携帯電話等への一斉同報メールによる津波警報では、限られた情報のみが配信され、津波警報の更新や解除の通知はありません。詳細情報について、必ず気象庁のホームページや、防災行政無線、テレビ、ラジオ等で確認するようにしましょう。

マグニチュードは1つじゃない?

津波から身を守る

津波から身を守るための鉄則は、「すぐに避難」です。強い揺れ、あるいは弱くてもゆっくりとした長い揺れを感じたら、また、揺れがなくても、津波警報を見聞きしたら、自ら進んで、できるだけ高い場所に避難しましょう。
古くから何度も大津波の襲来を受けた東北地方には、「津波てんでんこ」、「命てんでんこ」という言い伝えがあります。「津波が来たら、家族がてんでバラバラでも、とにかく逃げろ」という「自ら進んで避難」を促す教訓です。
東日本大震災後に内閣府等が被災地の住民の方に行ったアンケートでは、避難しようと思ったきっかけとして、「大きな揺れから津波が来ると思ったから」が最も多く、次いで「家族または近所の人が避難しようといったから」、「津波警報を見聞きしたから」、「近所の人が避難していたから」が多いという結果でした。地域における避難の呼びかけや、率先した避難が周囲の人の命を救うことに繋がっていることがわかります。
なお、実際の津波発生時には、予想されていた範囲よりも浸水が広がることや、浸水が深くなることがあります。あらかじめ決められた避難経路や避難場所で安心せずに、より安全な場所へ逃げられないかを考えるなど、周囲の状況を見ながら自分で判断して、身を守る最善の方策を講じるように心がけましょう。

津波に備える

津波について知る、どのように避難するか考える、避難訓練をする。このような事前の備えが発災時の冷静な判断、適切な避難に役立ちます。
身近な日常でできる備えとして、自治体などから発表されている津波ハザードマップや海岸等に掲示されている津波標識を活用しましょう。
東日本大震災後、また、新しい津波警報に合わせ、多くの自治体がハザードマップを見直し、更新しています。常に最新の内容を確認しましょう。

避難場所・避難経路の確認
津波ハザードマップには、津波発生時に浸水が予想される区域や浸水深、避難場所や避難ビル、また各地点の標高・海抜などが明示されています。色々な場面を考えて、自分の職場や生活圏の避難場所や避難経路、また海抜などを確認しておきましょう。
所要時間の確認
避難場所などを把握したら、避難に必要な時間も確認しておきましょう。一般的に、5分間で避難可能な距離は、大人の標準的な歩行速度で300~400m程度と考えられています。高齢者や幼児等の場合は、さらに遅くなることに留意しておきましょう。
実際に歩く
実際に避難経路を歩いてみることも大切です。地図だけでは分からなかった地形、避難経路の道幅、危険なブロック塀の有無がわかり、避難にかかる時間を再確認できます。また、避難の際に目印となる津波標識もチェックしてみましょう。津波注意(津波危険地帯)、津波避難ビル、津波避難場所、また、海抜を明示したものなど様々なものがあります。

新しい津波警報を知り、津波に備えましょう。イザという時の鉄則は、「すぐに避難」です。

津波のメカニズム

地震が発生すると、海底が隆起あるいは沈降します。これに伴い海面が変動し、大きな波となって四方八方に伝播するのが津波です。
「津波の前には必ず潮が引く」といわれることがありますが、津波が引き潮で始まるとは限りません。津波を発生させた地下の断層の状況、また、津波が発生した場所と海岸の位置関係等によっては、最初に大きな波が海岸に押し寄せる場合もあります。
津波は猛スピードで襲来し、陸地に近づくと高くなる
津波は海の水深が深いほど速く伝わり、浅くなるにつれて速度は遅くなります。しかし、遅くなるとはいっても、その速度は、海岸近くでもオリンピックの短距離選手並みです。
また、津波は水深が浅くなるほど速度が遅くなるため、津波が陸地に近づくにつれて後から来る波が前の津波に追いつき、高さが高くなります。
津波は膨大な力を持つ
津波は、波浪とは発生の仕組みも、その力にも大きな違いがあります。
波浪は、風の力で海面付近の海水だけが動きますが、津波は海底から海面までの海水が動くのです。また、津波は、波長(波の山から次の山までの長さ)が長く、数kmから数百kmにも及びます(波浪は数mから数百m程度)。波の高さは同じでも、津波で沿岸に押し寄せる海水の量は、波浪よりも桁違いに多く、すさまじい力で陸上に流れ込み、そして引いていくのです。
津波が陸上に及ぶと、たとえ浸水深が浅くとも、その流れの速さによって、屋外では人が巻き込まれ、住家まで浸水する恐れがあります。
津波は繰り返しやってくる
津波は、何度も繰り返し押し寄せることがあります。また、第一波の津波が一番高いとは限りません。津波は陸や海底の斜面で反射を繰り返すことで何回も押し寄せたり、複数の波が重なって非常に高い波となることがあり、あとからやってくる波の方が高くなることがあるのです。
特に、海外で発生した地震による津波の場合は、水位の変動が長い時間継続する傾向があります。
津波警報・注意報が解除されるまでは、海岸に近づかないようにしましょう。
地形によって大きく変化
津波の高さは海岸付近の地形によって大きく変化します。岬の先端や、三陸地方に特徴的なリアス式海岸に多くみられるV字型の湾の奥などでは、津波の力が集中し、局地的に高くなることがあります。
また、津波が陸上などを駆け上がる高さは、津波の高さの何倍にも達することがあります。東日本大震災でも、津波が陸上で崖や斜面などを20m、30mと崖を駆け上がった(遡上した)ことが確認されています。

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