防災リーダーと地域の輪 第12回

「町へ出よう!」地域に貢献する中学生の防災活動

徳島県の徳島市立津田中学校では、2011年の東日本大震災後に地域の防災意識調査を実施。
さらに、調査の結果からわかった問題解決にも取り組んだ。

徳島市立津田中学校では、2005年から総合学習の講座のひとつに防災講座が設けられ、毎年、2年生、3年生の希望者が受講している。当初は主に校内で活動していたが、生徒たちの声をきっかけに、積極的に地域とかかわるようになったという。

「『防災は、校内にいたら何ら意味がない。(町に)出ようよ』と断言した生徒たちがいたんですよ」と話すのは当初から防災講座を担当する津田中学校教諭の小西正志さん。

現在、津田中学校の生徒による地域の幼稚園・小学校での出前授業や高齢者への非常食配布は毎年恒例となっている。

2011年、津田中学校の防災講座では、3年生約30名が地域住民の防災意識調査を実施した。「3・11に避難したのか」、「避難場所は大丈夫か」、「3・11後の意識の変化」などのテーマで、戸別調査や街頭調査を実施。調査の引率には、先生だけでなく、町内の自主防災会や中学校ОBも協力した。集めた合計約2,000人分のデータは、夏休み中に何日もかけて、生徒たちが年代別、地域別など様々な分析や集計を行った。わかりやすいグラフを工夫し、生徒たちの考察や提案も添えた報告書は、現在、飲食店や銭湯など町内50箇所に貼り出されている。

また、この意識調査では、新たな避難場所の整備や防災無線増設の要望が多いことがわかった。町の人たちから「どうにかならないかな…」と何度も相談されたこともあり、生徒の代表が市の担当者へ要望書の提出を行った。

「町内の人たちが生徒の活動にかける期待は予想以上に大きいと感じました」と当時を振り返る小西さん。「生徒たちには、夏休み中のアンケート調査や集計などで苦労させました。しかし、自分たちのやったことが町内の防災意識の向上に役立ち、そのことで自分たちも成長出来るということがわかり、満足しているのではないでしょうか」

2011年度の津田中学校の防災活動(左上から時計回り)。地域の防災訓練に参加(6月)、町内の防災対策の希望を反映させた要望書を市役所に提出(10月)、地域の幼稚園・小学校で出前授業を実施(11月)、避難支援マップ看板が完成(2012年2月)
(写真提供 徳島市立津田中学校)

教訓を活かす

さらに生徒たちが取り組んだのは、地域の防災意識啓発対策だ。

東日本大震災では、津田中学校のある徳島市にも大津波警報や避難勧告が発令された。しかし意識調査の結果、「避難した」という回答は約2割のみだった。

「人はすぐに忘れる。見るたびに『まさかの時は避難だ』と思い出す掲示板を作ろう」と、生徒たちは、校区内の「津波避難支援マップ」を提案した。生徒、町内の人、市役所に加え、徳島大学の協力も得て完成させたマップには、避難場所や避難ルートの他、各所の地盤標高や海岸近くの主な地点から避難場所までの距離等が表示されている。2012年2月には、生徒たちの提案通り、マップの大型看板が町内に設置された。そしてこれらの活動により、津田中学校は前年に続き2011年も「1・17防災未来賞『ぼうさい甲子園』」グランプリを受賞した。

今年度の防災講座の内容は、2年生はタブレット形コンピュータを使った「バーチャル避難訓練」。そして3年生は、災害後の町づくりを事前に考える「事前復興町づくり」をテーマにした地域の意識調査だ。津田中学校では、地域とつながりながら新たな防災活動にチャレンジを続けている。

東日本大震災後に実施した地域の防災意識調査の報告書のひとつ。

防災リーダーの一言

防災学習の基本は「つながる」こと。町内の大人、今の「被災地」の人たち、「体験した」お年寄りと「これから体験する」子どもたち。色々なパターンで子どもをつなげることが防災学習なのではないかと思っています。
将来の「背骨」になる人を今つくっておく、そしてそれが上と下でつながっておくことが必要です。「背骨」にあたる部分がつながれば、あとは横につながることもできるからです。上は、OBに参加してもらったり、下は、幼稚園や小学校に出前授業に行っているのはそういうことなのです。20年、30年先を見据えて、町づくりや、まさかの時の人づくりをやっていくことが大事なのだと考えています。

小西正志

小西正志
こにし・まさし
徳島市立津田中学校 教諭

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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