防災リーダーと地域の輪 第10回

未来の町に虹の橋を架ける子どもたち

東日本大震災で被災した福島県相馬市川原町児童センターの子どもたちが、災害を乗り越え、大人たちと触れ合いながら町を歩き、未来のマップを作り上げた。

川原町児童センターは7年前の第2回コンクールから毎年参加。その間に四度の受賞があり、マップづくりはセンターの伝統となり、「3年生になったらマップを作るんだ」という子どもたちの夢になっていた。
だが、今回は参加を見おくる考えもあった。津波被害を受けた町は探検する状況ではなく、子どもたちもこころに傷を負っていたからだ。
子どもたちを指導する同センターの永井清美さんは「被災と子どもたちの未来を考えると迷った」が、子どもたちの答えは明快だった。
「やりたい!」と。
その美しさで知られた相馬市松川浦の風景は津波で一変。瓦礫だらけで放射能の影響の心配から海岸地区には車で出かけてインタビューした。センターからほど近い市役所でも職員の説明を聞いた。しかしマップを作るにはそれだけでは足りない。
子どもたちは第5回コンクールで審査員特別賞を受賞したマップ「つなみが来たらどこににげる?」を永井さんに見せられた。そこには高台への経路や避難場所が分かりやすくまとめられていた。

マップづくりのため、海岸地区でインタビューを行ったり、市役所で説明を受ける川原町児童センター「みつばち・かもめ防災探検隊」の子供達。(永井清美さん 提供)


これを参考に考え抜いてできあがった子どもたちのマップには、愛する町の防災、安全な町の未来が描かれた。
「1階から4階までがショッピングモールでその上は住宅、屋上にはヘリポートがあるビルなんて、現実的でないかもしれませんが、子どもたちは『こういう町になったらいいなあ』ということを真剣に話し合ってくれました」と永井さんはふり返る。
7年前、同センター初のマップがコンクールで「まちのぼうさいキッズ賞」を受賞すると、マップで「ここは危険」と指摘された高校のブロック塀が金網のフェンスに取り替えられた。子どもたちのマップが行政を動かし、高校関係者も地域の人びとも、子どもたちもとても喜んだ。
今回のマップにも、そうした力が秘められているかもしれない。

第8回「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」防災担当大臣賞を受賞した「みつばち・かもめ防災探検隊」の防災マップ(社団法人 日本損害保険協会 提供)

防災リーダーの一言

幼稚園と保育園を経営する永井清美さんは、長く防災教育の重要性を訴え活動してきた。
「小さくとも自分の身は自分で守ることの大切さをしっかり教えたい。幼児期、児童期に防災教育を受けたか否かが、後々の行動に大きな違いを生む」と、早期の防災教育と継続性が重要だと語る。「地域の大人達や消防関係者を巻き込んで防災の輪を広げたい」。永井さんのこれからの課題だ。

永井 清美
ながい・きよみ
川原町児童センター所長

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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