特集 大雨に備えよう!自分で、みんなで取り組む豪雨対策を

治山・治水などの防災対策や気象予測技術の発達など、水害を軽減するための様々な対策が講じられてきました。それでも、日本は雨の多い国です。梅雨の時季には、毎年、各地で集中豪雨によるさまざまな被害が発生しています。最近の豪雨被害をもう一度思い起こし、自分で出来る対策、みんなで取り組める対策を考えてみましょう。

財団法人 消防科学総合センター 提供

豪雨が引き起こした河川の氾濫によって、大型トラック10台が100mも押し流されたことを覚えていますか?
  2010年7月14日、日本海から東に進んだ梅雨前線が北陸から近畿、九州に至る広い範囲に大雨をもたらしました。岐阜県可児市では15日夜の豪雨で可児川が氾濫。その勢いは非常に激しく、大型トラックを押し流すほどでした。

昨年も大きな豪雨被害が発生

この大雨は、同年6月中旬から7月中旬にかけて、九州から本州東北地方にわたる範囲に停滞した梅雨前線によるもので、局地的に1時間に80mmを超える猛烈な雨が繰り返されました。この大雨のため、延べ8水系の10河川で危険水位を超え、或いは土砂災害警戒情報が出されました。9県14市町村の1万456世帯に避難指示が出されました。
  また、42の道府県で土石流や地滑りを含む576件の土砂災害が発生し、死者・行方不明者21人、負傷者21人、建物の全半壊116棟に及ぶ大きな被害を各地にもたらしました。10万5,800戸が停電、1万6,726戸が断水する等ライフラインが寸断されたほか、各地の鉄道や道路で運転中止・通行止めなどの被害に見舞われました。また各地で農林水産業に大きな被害が出ました。

政府の対応

こうした災害に対し広島県と山口県内の4市は災害救助法が適用され、岐阜県、広島県、山口県、鹿児島県内の6市町は被災者生活再建支援法が適用されました。政府は、情報連絡室を設置し、関係省庁は情報収集と共有を行いました。さらに、激甚災害として指定し、農地等の災害復旧事業等に係る特別措置等を適用しました。
  また、近年の災害状況をふまえ、甚大な住宅被害が広域的に散在している場合にも対応できるよう、被災者生活再建支援法施行令を改正し、被災者生活再建支援制度の適用要件を拡充しています(9月3日公布)。
自衛隊の災害派遣は、人員延べ1,088名、車両延べ232両、航空機延べ4機に及びました。

局地的な大雨の発生

近年、世界的に水害が多発しているように、日本でも局地的な大雨の発生頻度が増加傾向にあります。局地的な大雨などが引き起こす水害による被害を最小限に食い止めるための対策が重要です。

岐阜県の可児川が氾濫し、トラック10 台が100m 流される
(岐阜県可児市 提供)

地域コミュニティの力で豪雨災害に備える

地域コミュニティの力を結集して、風水害対策に取り組む「共助」の動きも拡大しています。
  地域コミュニティの力を活用するにあたって何がポイントとなるのでしょうか? 予想される被害の種類も規模も地域の地理的要因によってさまざまですが、災害からみんなで身を守るという目線で考えてみれば、次のようなことが言えます。
・地域で、水位等の監視、雨量観測、緊急時の情報収集・伝達等、平常時から水害の警戒態勢を取る
・洪水ハザードマップ等の活用によって、水害の危険を予想・認知する工夫と努力を行う
・自主避難の判断、状況に併せた安全確保行動をとる
・地域内で住民参加による水防活動を行う
・要援護者の安否確認、避難支援体制を整える
・事前に避難所運営の訓練をしておく
・消防団、福祉団体、ボランティア等との連携を図る
  皆さんの地域では、このような準備をされていますか?

都市は豪雨に強くない

急激に進んだ都市化などにより中小河川の氾濫や土砂災害による犠牲者がふえています。梅雨期にかぎらず、台風や局地的な大雨が発生すれば、コンクリートに覆われた都市部では、下水の処理量を超えた大量の雨水が地下街や低い地域に流れ込み、浸水を引き起こし、被害も甚大なものになりやすいのです。
  都市部においては、こうした特有の災害を引き起こす危険性をはらんでいます。

図3 阪神・淡路大震災時の建築物倒壊

レーダーがとらえた岐阜県上空の雨雲と降水量

情報を集めて身を守る

誰でも出来る、身近な「自助」は、大雨に関する防災気象情報に注意することから始まります。
  気象庁では、全国に配置した様々な気象レーダーや衛星などを活用して24時間体制で気象状況の観測・監視を行っています。気象データは、気象庁等のホームページ(図参照)で公開しており、各種メディアの天気予報で役立てられています。
  テレビやラジオ、携帯電話やパソコン等、多様な手段で防災気象情報を入手できる環境が整っています。

図4 阪神・淡路大震災の死亡原因

日頃の想像力が身を守る

大雨から身を守るためには、まず危険な場所には近づかないこと、そして情報を集め、想像力を働かせる習慣を身につけることが大事です。
  例えば、近隣に河川があれば溢れたときにどう逃げるかをイメージしておく。ハザードマップで避難場所や避難経路を確認しておくこと、時間を見つけて自分の目で現地を確認しておくことが大切です。
  災害時に適切な判断を行うには、事前の情報収集と「いざというとき」の想像力を身につけておく日頃の備えが必要なのです。

東日本大震災の二次災害を防ぐ

今年5月30日、台風2号から変わった温帯低気圧と前線の影響で、日本列島は西日本から東北地方の広い範囲にかけて大雨に見舞われました。
  この大雨により、岩手県、宮城県、福島県の一部に土砂災害警戒情報が発表され、避難勧告を発令した市町村もありました。
  床上・床下浸水や道路の冠水、土砂災害が多数発生し、鉄道や道路が運休や不通になるなど、交通機関にも大きな影響が出ました。
  東日本大震災の被災地では、地震や津波の影響により、地盤の緩みや地盤沈下が生じたほか、各地で堤防や護岸の損壊やひび割れも数多く確認されており、十分な注意が必要です。

図5 要救助者約3.5 万人の救出方法

浸水した住宅街

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内閣府政策統括官(防災担当)

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