特集 いまこそ災害に強いまちづくりを

「防災まちづくりの実際」

ここでは、各地で活動しているさまざまな防災まちづくりを紹介します。

Case 1 「防災ゲームで子どもとともに」NPO法人はままつ子育てネットワークぴっぴ(静岡県浜松市)

 「はままつ子育てネットワークぴっぴ」は、浜松市とその周辺地域での子育て支援のために活動を始めた組織で、情報交流をはじめとするさまざまな活動を行っています。東海地震の発生が危惧されている静岡県でこのNPOは、女性と子どもの視点で防災を考えているのが特徴です。そして、アトピーや障害を持つ子どもたちの災害時対応を含めて、防災に関するさまざまなワークショップ活動を行っています。
 子どもを守る防災ワークショップでは、新聞紙のスリッパづくり、広告紙のコップづくり、ゴミ袋のレインコートづくりや、アルファ米試食、手作りランプや卓上コンロづくりなどを行っています。そして、防災ゲームなど、子ども自身が楽しみながら学習し、防災意識を高める工夫をしています。
 また、最近では県外への出張ワークショップなどに広がっています。「子どもを守る防災ワークプロジェクト」として、母親そして主婦としてのアイデアをふくらませた取組を創意工夫し、他のNPO法人や社会福祉法人、行政や災害ボランティアコーディネーターなどの関係組織との連携も強化しています。

子どもの視点からの防災ゲーム

中林教授のココがポイント

 幼児とその母親は、高齢者とともに要援護者と位置づけられていますが、この団体は弱者ネットワークで連携し、自ら災害を乗り越えていく防災活動を展開しています。この活動に、自助の原点を見ることができます。

Case 2 「言葉の壁を越えて」南御厨地区自治会(静岡県磐田市)

 100年前に始まる日本人の南米移住は、20万人にも達したのですが、現在では逆に二世、三世などが20万人来日しているといわれています。日系南米人は静岡、愛知、群馬など各地に住んでいます。浜松もその一つで日系南米人は全住民の5%で集まって生活しています。JR磐田駅から東に4㎞の南御厨地区では全住民の5人に1人にのぼります。
 日本語を話せない人、地震の経験がまったくない人も多く、地域防災訓練に参加した外国人は、内容が理解しにくいのが実情でした。
 そのため南御厨地区自治会では、平成15年からの研修を経て、18年からポルトガル語の説明書の作成と通訳ボランティアを準備して、日系南米人のための防災訓練を行っています。
 これには日系南米人、日本人、消防関係者が参加し、AEDによる心肺蘇生訓練、アルファ米の炊き出し、消火栓放水などの防災訓練を行い、災害時見守り助け合いカード、救護不要カード、要援護者台帳を作成し、災害時に向けてコミュニケーションを高めています。このような防災訓練をきっかけに、顔の見える関係が生まれ、交流も広がりつつあります。

外国人とともに行う防災訓練

外国人とともに行う防災訓練

中林教授のココがポイント

 日本語がわからない外国人も要援護者として位置づけられてきました。この多文化共生型の防災訓練は何より重要な取組であり、効果的です。こうして日常の交流が高まることが、災害時に役立つのです。

Case 3 「楽しく防災、サバイバル」たかしま災害支援ボランティアネットワーク「なまず」(滋賀県高島市)

 阪神・淡路大震災などをきっかけに滋賀県高島市で生まれたグループ「なまず」では、防災・減災のための「備えと構え」をテーマに、1人ひとりが被害を少なくする「減災」を目指した活動を行っています。
 特に、学習・啓発活動としては、多彩なプログラムで出前講座を行っています。県内にとどまらず、大阪、京都、岐阜、福井、愛知などに広がり、年間50回に及んでいます。
 内容は、防災漫才「備えあれば憂いなし」、腹話術「しんちゃんといっしょに備えしような」、「クイズで確認 減災あれこれ」、大型ロール紙芝居「地震その時 時系列」、「歌って確認、地域防災力」といった楽しいプログラム。災害図上訓練「DIG」、救出・救助図上訓練「HELP」、災害対応活動に役立つ「ロープワーク」など本格的なもの。さらに新聞紙、ごみ袋、牛乳パックなどのサバイバル活用法、サバイバル食べ物といったサバイバル術にも取組んでいます。
 また、災害時徒歩帰宅訓練「サバイバルウォーク」、災害ボランティアとしての力をつける研修活動、被災地への救援・支援活動、「高島発 阪神淡路大震災メモリアルイベント」など、実に多彩です。

楽しい防災漫才

楽しい防災漫才

中林教授のココがポイント

 この取組は「防災まちづくり支援活動」といえます。地域型防災まちづくりから飛び出して、さまざまな地域での防災まちづくりを支援しています。そのつながりは、実際の災害時は心強い支援ネットワークになるでしょう。

Case 4 「障がい者とともに、防災運動会」社会福祉法人岐阜アソシア(岐阜県岐阜市)

 明治24年の濃尾地震を契機に生まれた視覚障がい者の施設、訓盲院に始まる岐阜アソシアは「視覚障がい者生活情報センターぎふ」を設立運営し、視覚障がい者とともに生きる社会を目指して活動してきました。
 阪神・淡路大震災では約1カ月、支援活動を行い、その経験から、視覚障がい者は「災害弱者(災害時要援護者)」であると痛感しました。しかし、障がい者は単なる要援護者ではなく災害時にできることが必ずあると、「防災運動会」を開催しています。
 地域の人々や県立岐阜盲学校の子どもたちとともに行うもので、競技も混成チームで進めます。内容は地域の子どもたちの大声競争、煙体験ハウス、バケツリレー、救護者搬送など、災害に関する対応行動を取り入れています。また運動会前には、地元出身の落語家の「防災落語会」を催し参加者を楽しませています。
 「まち発見隊」の活動では、障がい者と2人1組で町を歩き周り、障がい者のための施設・設備探しや危険地域探しなどを行っています。
 これらの活動で、障がい者の不安や健常者との垣根を取り除き、一緒になって防災活動を行うことを目指しています。

障がい者とともに行う防災訓練

中林教授のココがポイント

 災害時の対応活動は、地域での対応活動が基本です。高齢化する日本では、多様な障がい者施設が増えていくでしょう。これらの障がい者も自助し、共助しあったり、これからの障がい者防災の基本となることでしょう。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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