特集 なぜ、住宅の耐震化が進まないのか?

住宅の耐震化の方法

(1)耐震化に対する支援

 昭和56年に建築基準法の耐震基準が強化されました。さらに阪神・淡路大震災によって、平成7年には、建築物の耐震改修を促進するため、多くの人々が利用する特定建築物に対する指導・指示などを定めた「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が制定されました。そして平成18年1月にはこの改正法が施行され、国が基本方針を定め、地方公共団体が耐震改修促進計画を策定し、計画的に耐震改修に取組む仕組みになりました。また、国は、平成15年の約4700万戸の75%の住宅耐震化率を平成27年までに90%まで引き上げることを全国の目標としています。
 さらに、平成21年12月30日に閣議決定された「新成長戦略(基本方針)」において、平成32年までに耐震性が不十分な住宅の割合を5%に下げ、安全・安心な住宅ストックの形成を図ることとしています。
 耐震改修には、所有者にとって決して小さくない費用負担が必要ですが、建築物の大半を占める民間建築物の耐震化を促進するには、その負担軽減が重要です。このため国は、「住宅・建築物安全ストック形成事業」で耐震改修と耐震診断を補助し、地域住宅交付金やまちづくり交付金を活用して、地域の自主的な取組を支援しています。
 また税制面では、平成18年度の税制改正で耐震改修促進税制が創設され、住宅に関しては所得税と固定資産税の特例措置が講じられています。特に所得税に関する耐震改修促進税制は、平成21年度の税制改正で適用要件が緩和されました。
 このほか、耐震改修をした場合の住宅ローン減税を続け、減税の対象となる既存住宅の範囲に、新耐震基準に適合する既存住宅を追加するなど、建築物の耐震化を強力に促進しています。このような耐震化促進策のほか、住宅の耐震改修工事については、住宅金融支援機構の融資を活用できます。また、平成12年からスタートした住宅性能表示制度により、第三者機関に地震に対する強さを評価させ、等級表示を受けることができます。この等級に応じて、地震保険の保険料は最大30%の割引を受けることができ、さらに地震保険への加入を促し、地震災害による被害への備えの自助努力を支援するため、平成18年度に所得税と住民税の地震保険料控除が創設されています。

(2)耐震診断

 自分の住んでいる家が地震に対して安全かどうかの診断を受けることが、耐震化の第一歩です。昭和56年の建築基準法改正前に建築された住宅か、また立地によっても耐震性は違います。専門家の耐震診断を受け、基準を満たしていない場合は補強工事を実施することが重要となります。
 自分の住んでいる住宅が地震に対して大丈夫か、(財)日本建築防災協会のホームページの国土交通省住宅局監修「誰でもできるわが家の耐震診断」で確認することができます。これによって、どういう点が問題なのか概略がわかり、自分の家の耐震性について問題を認識することができます。
 また、多くの都道府県や市町村では、耐震診断や耐震補強を行う会社の紹介や、耐震診断や耐震補強工事の費用の助成などを行っています。住んでいる市町村の防災担当課・建築担当課に問い合わせてみましょう。

(3)耐震化工事、補強の方法

 耐震化・補強の方法としては、次のようなものなどがあります。

  1)基礎の補強
 玉石基礎などの場合は、鉄筋コンクリート造の布基礎に替え、これに土台をアンカーで締め付けます。

  2)壁の補強
 筋かいを入れたり、構造用合板を張って強い壁を増やします。
 柱、筋かい、梁などの接合部は金物等を使って堅固にします。

  3)壁の配置
 壁の量を増やし、かつ、つりあいよく配置します。

出典「誰でもできるわが家の耐震診断」(財)日本建築防災協会

(4)耐震化とともに家具の固定を

 家を耐震化すると、家の倒壊から自分と家族の命を守ることができます。しかし、地震により家具などが倒れ下敷きとなる危険があります。部屋の間取りや家具などに最適な効果のある家具固定方法を実施することが大切です。目黒先生に注意点をうかがいました。

1)チェーン式
 チェーンやベルトで壁に固定する場合、通常は斜め上30度くらいに取り付けることが多いですが、斜め下30度くらいに取り付けるほうが、効果が高い。前者では家具の下が滑って転倒することがあります。

 2)ポール式
 天井の強度が弱く変形しやすい場合2本が独立して動くので、2本のポールの上に板を張り、両者を両面テープで固定するとよいでしょう。

 3)ハニカムボード
 衣服をダンボールに固詰めしたくらいのものをタンスと天井の間に押し込む。天井への負担が軽減するので、効果があります。

出典:間違いだらけの地震対策」目黒公郎

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