防災リーダーの素顔 第6回

東伊豆町大川区自主防災会 山田稔さん

災害で孤立する可能性がある伊豆半島の集落海上や空からの避難に住民たちは備えている

災害による陸の孤島化に備えて

 昭和53年に発生した伊豆大島近海を震源とする地震(マグニチュード7.0)で、静岡県賀茂郡東伊豆町は震度6の揺れに襲われた。地滑り、崖崩れなどで多数の死傷者を出すとともに、道路が塞がれ、陸の孤島となった。
 伊豆半島には「天城越え」で知られる1400m級の天城山があり、山越えが困難なため、地域の生活を支えている海岸線を通る幹線道路が災害で塞がれると、その地域が孤立してしまう。
 なかでも東伊豆町大川区は天城山から流れ出ている大川川などの河川が何筋もあり、地震や台風による土砂の流出による道路の分断の危険が大きい。大川区が孤立した場合の対応策について、日ごろからの備えに住民たちと一体となって熱心に取組んできた。
 「災害時に大川区が孤立する恐れを住民が抱いており、切実な問題です。だから、孤立してしまったときのために、周囲の漁協と協定を結び、住民を救出・搬送できる体制を整えています。さらにヘリポートを作り、負傷者などを空輸できるようにしています」
 「また、大川区には医療施設がないことから、看護師資格を持つ住民の協力で、救護班を作っています」
 山田稔さんはこのように語った。
 防災訓練も多岐にわたる。年に4回で、9月は総合防災訓練、12月に地域防災訓練、6月に土砂災害、7月は津波対象の訓練を実施している。9月には大川区と隣町の漁協、自衛隊の協力で海上搬送訓練、ヘリポート離発着試験を行った。防災訓練には小中高校も参加する。
 「子どもたちは訓練もまじめだから、一緒にやることが活動継続のためには、いいですね。ただ少子化で、子どもが減っていることが悩みです」
 「人口も1200人から900人に減ってしまいました。東伊豆町では下から二番目の人口ですが、町内の体育大会では優勝を争い、周囲の区から、結束が強くていいねえ、とうらやましがられます」
 山田さんは、それは「先人たちが作ってきたつながり」だという。そして、大川区で安心して生活するには、山林の整備が必要だと話す。「人工林が輸入木材の使用で間伐されず、山や沢の土砂災害の危険性を高めています。安心できる山となる整備が進むことを期待しています」
 地域の人たちのつながりを大切にし、人々を思う防災会長山田さんの切なる願いである。

漁協の協力による海上搬送訓練

山田稔さん

やまだ・みのる
東伊豆町大川区自主防災会会長。同区区長も兼任している。消防分団長、PTA 会長などを歴任し、平成20 年から現職。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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