内閣府防災情報のページみんなで減災

内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  防災情報のページ  >  広報・啓発活動  >  広報誌「ぼうさい」 > 平成20年度 広報誌「ぼうさい」-防災情報のページ > 特集 地震発生! あなたの住まいは大丈夫? 耐震補強、家具転倒防止……震災の備えは住居から!

特集 地震発生! あなたの住まいは大丈夫? 耐震補強、家具転倒防止……震災の備えは住居から!

特集 地震発生! あなたの住まいは大丈夫? 耐震補強、家具転倒防止……震災の備えは住居から!

建物倒壊による死者をゼロに!
プロジェクト「TOUKAI〔東海・倒壊〕-0(トウカイゼロ)」静岡県の挑戦

昭和51年に発表された、「東海地震説」。避けられないマグニチュード8程度の地震に備えるために、何ができるのか? 大きな被害が予想される静岡県は地震に対する先進的な取り組みで知られるが、中でも、全国から注目を集めているのが「TOUKAI-0」である。

3段階のサポートで木造住宅を耐震化

阪神・淡路大震災以来、住宅の耐震化の重要性が訴えられている。しかし、「工事費の高さ」「工法のバリエーション不足」「東海地震の切迫性の認識不足」などが壁となり、一般住宅の耐震化はなかなか進まなかった。そこで平成13年、静岡県が立ち上げたのが、旧耐震基準の木造住宅の耐震化を促進し、震災時における人の命の安全を確保する、プロジェクト「TOUKAI-0」。これは、耐震補強工事に対する徹底したサポートを実現した取り組みだ。

静岡県では、耐震化までの過程を3つに分けた。1つ目は、電話1本で申し込める「専門家の無料耐震診断」。高齢者でも安心できるよう、市や町から専門家を派遣し、数時間かけて家を診断。一方で、専門家の育成にも力を入れており、建築士や大工向けに静岡県耐震診断補強相談士の講習会も行っている。

2つ目は、「補強計画の作成」。補強する箇所や方法、工事にかかる費用、そして住む人の生活スタイルを相談しながら、補強計画を頼むことが可能。そのうえ、費用の2/3(1戸あたり9万6000円まで)の補助が受けられる。

最後に、定額30万円の県の補助が出る「耐震補強工事」。補助金を費用に対する割合ではなく定額にしたことで、申請がスムーズに進んでいる。また、20万円の高齢者等割増補助や、単独で5〜30万円の上乗せ補助をしている市や町もあり、多いところでは県と市町合わせて最高80万円の補助が出る。

問題は、いかに広くプロジェクトの存在を伝えるかということだ。そこで、テレビやラジオCM、県民だよりや市や町の広報誌、パンフレットなどを徹底して活用。

「実際の無料耐震診断の利用率増加に最も効果があったのは、各家庭へのダイレクトメールや、市や町の職員や静岡県耐震補強相談士による戸別訪問です」と、県の担当者。各市や町の職員と、年に3回ほど会議を開いて意見交換もし、県全体が一丸となって耐震化の普及に努めてきた。その結果、今年8月末で、耐震診断を受けたのは5万3780戸、耐震補強工事は8642戸に上っている。

「静岡でTOUKAI-0を知らない人なんていませんよ!」と話すのは、現在、耐震補強工事を行っている渡邉さんだ。
「でも、診断結果を知るのが怖かったり、なかなか工事に踏み切れない人もいるかも……。私の場合は、リフォームを相談したとき、建築士の三ツ井孝さんから耐震補強工事を勧められたんです」

三ツ井さんは渡邉さんの希望に応え、間取りや水周りなどをリフォームしながら耐震補強工事を進めている。
「耐震補強だけでなく、住む人の生活が豊かになるような設計も併せて説得できるといいんです」

CASE1 渡邉邸 昭和43年築

間取り(1階)…和室3、洋室1、キッチン1、倉庫1
補強工事の内容…筋かいを26カ所、柱を8本追加、構造用合板による壁の補強のほか、洋室とキッチンをLDKにリフォームするのに伴う壁の追加など
費用…約200万円(リフォーム費は除く)

中央が渡邉さん、右が静岡県耐震補強相談士の「すまい工房」の三ツ井さん。後ろの倉庫の外壁には、耐震補強工事の必要性のPRにも役立つ「耐震補強工事実施中」の幕が

倉庫内の補強工事。筋かいが1本しかなかったため、新たに1本を追加(手前の新しい材木)

柱と土台や、柱、土台、筋かいを固定する接合金物

押入れは、内部をすべて外したのちに筋かいを入れ、構造用合板を張る。中央と左右の壁を同時に補強できる利点もある

厚さ7.5mm以上の強度の強い板材、構造用合板を張っているところ

 今年6月中旬に耐震補強工事を終えた望月さんは、平成14年に診断を受け、しばらく様子を見ていたが、
「最近、地震が多いので安心して生活できるなら、と思い切って決断しました」
 設計を担当した建築士の白坂進さんは、押入れが多いという住居の特徴を生かし、
「見た目が変わらず、コストも抑えられる押入れを中心とした補強にしました。このように、生活の支障にならない方法を提案していくことが大切です」
 人の命を守るには、「倒れない建物」が必須。静岡県では、平成27年度末までに住宅の耐震化率90%を目指している。

CASE2 望月邸 昭和41年築

間取り…和室3、洋室2、DK1、車庫1
補強工事の内容…8カ所の押入れを中心に、筋かいを14カ所に2本追加、5カ所に1本追加したほか、屋根裏の補強と、屋根の軽量瓦化など
費用…約100万円(軽量瓦代は除く)

本瓦(土をのせない場合)より1m2あたり約20kgも軽くなる軽量瓦

屋根裏の補強。棟方向にくも筋かい(1)を追加し、軒棟方向に合掌筋かい(2)も入れた

補強工事後の押入れ。←の内側に構造用合板がある

補強の内容によっては、家の外観を変えずに工事が可能

耐震補強工事の平均費用(平成18年度)は167万円!

耐震補強工事が終了すると、このシールを張る

(筋かい、構造用合板ともに)
 室内…1カ所につき8〜15万円
 押入れ内…1カ所につき6〜9万円
 外部…1カ所につき10〜20万円
基礎
 補修(ひび割れなど)…1カ所につき1〜2万円
 補強(鉄筋コンクリートの打ち増し)…1mにつき2.5〜3万円
屋根
 軽量化…1m2につき1.2〜2万円

※すべて参考価格で、実際は家の状態などにより異なります。

撮影:高島宏幸

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.