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FMピッカラ・パーソナリティ 船崎幸子さん

「ただいま大きな揺れを感じました。火の元の確認をしてください。あなたは大丈夫ですか?」
平成19年7月16日、新潟県中越沖地震発生からわずか1分45秒後、柏崎市のコミュニティ放送局「FMピッカラ」は、マイクを通して被災者に呼びかけました。
その後も、ガソリンスタンドやコインランドリー、入浴施設など、生活に必要な情報を休みなく送り続けること、41日。 情報を発信する者として震災下で何ができるかを、船崎幸子さんに聞きました。

ラジオを通して伝えたことは「あなたは一人じゃない」

「地震発生時、私はスタジオの外にいましたが、逃げることより『伝えること』を真っ先に考えました。すぐに外に出て、『信号が消えている』『道路が隆起している』など、被害状況を記したメモをスタジオ内のスタッフに渡していったんです」
 市民にも情報の提供を呼びかけたところ、「倒壊したお寺に人がいる」「おじいちゃんがいない!」など、次々と身近な情報が寄せられました。
「よく『情報の信憑性は?』と聞かれましたが、地震発生から1時間ほどで寄せられたものですからね。とにかく、伝えたかったんです」
 その後、FMピッカラは、被害状況の中継、市役所の災害対策本部、事務所での電話・FAX・メール対応と、それぞれにスタッフを配置。地域に根付いたコミュニティ放送の利点を生かして、避難所やトイレ、入浴施設などのほか、ガソリンスタンドやコンビニ、コインランドリーの営業状況など、生活に密着した情報を24時間体制で伝えていきました。
「でも、日を追って変わる情報とともに、人の気持ちも変化していったんです。18日に電気が復旧し、人々の心に余裕が生まれると、私たちに『ありがとう』と言ってくれるようになる。その一方で、テレビでほかの避難所を見て、自分たちとの差を感じたりもする。苦情、行政への不満、倒壊しそうな建物への不安など、夜中にも多くの電話がかかってきて、辛いときもありました。でも、私たちが心掛けていたのは『あなたは一人じゃない』と、自分たちの存在を伝えること。人とのつながりが途絶えると恐怖を感じてしまいます。そんなとき、情報こそライフラインとなる。だから、やめるわけにはいかなかったんです」
 船崎さんたちは、情報だけを伝えていたわけではありません。災害時ということでCMや音楽を制限していた中、唯一、昼間に流していた曲がシンガーソングライター・KOKIAさんの「私にできること」。
「この曲は、KOKIAさんが被災した市内在住のファンからメールを受け取り、わずか2〜3時間で作ったのですが、柏崎全体へのメッセージとして受け止められた。震災の最中に作られた、本当の復興ソングなんです。市民にもそれが伝わったんですね。支援はいつか撤退するけれど、前に進まなければならない。そこで8月6日に復興コンサートをすることになり、KOKIAさんにも来てもらったんです。3000人が集まったこの日を機に、人々の気持ちは変わりました。商工会議所ではネットショップが立ち上がり、子どもたちは避難所で自分にできることを探し始めた。復興の起爆剤となったこの曲はCD化され、私たちが販売しています」
 いつまでも震災をひきずらず、市民の元気な姿も届けた船崎さん。
「それが、みんなの癒しと活力になりましたから」

船崎幸子さん

撮影:花井智子

船崎幸子さん

Profile ふなざき・さちこ
新潟県上越市出身。平成7年秋に新潟放送退社後、結婚を機に東京へ。その後、新潟に戻り、13年2月から株式会社柏崎コミュニティに勤務。現在、水・木・金曜11〜14時の生放送「K"s Town」を担当し、ゲストとのトークも交えて柏崎の魅力を発信中。今年の春からは、他局からも受信できる「柏崎発! 社長の履歴書」も手がけている。震災下、2児を抱えながら泊まり込みで放送をした。

KOKIA「私にできること」
詳細はFMピッカラのホームページ参照。
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復興コンサートで力強く歌うKOKIAさん(写真提供:柏崎市役所)

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