特別企画 平成20年版 防災白書を発表

平成20年6月10日、平成20年版防災白書が閣議決定されました。
我が国では、切迫性が高まっている大規模地震や、毎年多数の死傷者が発生する台風や大雪等に対し、防災対策の実効性を高めることが重要視されています。
今年の白書では、国民の防災意識を実際の防災行動へ結びつけるための「自助」や、地域の防災力を高める「共助」の促進、そして、企業が被災した場合の社会全体へ及ぶ被害の大きさについても指摘し、対策を検討する必要性について言及しています。

防災対策の実効性を高める必要

 我が国では、大規模地震発生の切迫性が高まっている中、防災対策の実効性をこれまで以上に高めることが急務です。マグニチュード8クラスの海溝型の巨大地震については、東海地震はいつ発生してもおかしくなく、東南海・南海地震も今世紀前半にも発生するおそれがあります。また、日本全国には約2000に上る活断層があり、首都圏などの大都市圏でマグニチュード7クラスの地震が発生した場合には、甚大かつ広域の被害が想定されます。
 こうした、一度発生すれば甚大な被害が想定される大規模災害だけではなく、台風や大雨の際の外出時の事故や豪雪時における除雪中の事故といった身近な災害によって亡くなられた方も多くいます。
 政府としては、大規模地震などへの対策を着実に進めているほか、平成19年12月には、自然災害の「犠牲者ゼロ」を目指す取組みとして、国民一人ひとりが実際に直面する可能性の高い被災事例について必要な対策を取りまとめました。さらに平成20年4月には、災害対策をソフト・ハード両面から進めていくため、自助や共助促進の環境整備や防災基盤整備のあり方についての基本的な考え方と施策の方向を明らかにした総合プランを策定しました。
 防災対策の実効性をさらに高めるには、自助、共助の取組みを促進するため、国民の防災意識をいかにして実際の防災行動へとつなげていくか、防災対策を取り巻く経済、社会、自然環境の変化に如何に対応していくかが重要です。

平成20年版 防災白書

1.国民の防災意識を防災行動へ

国民の防災意識と行動のギャップ

 災害から生命、財産を守るためには、公助に加え、自らの身は自ら守る自助が基本です。自然災害に見舞われやすい我が国では、国民の災害に対する関心は高いが、現実には、その高い関心が実際の行動に必ずしも結びついていません。例えば、最近の意識調査では、大規模地震に対して関心や不安があると答えた人は9割以上ですが、家具等の固定の備えをしている人の割合はなお30%未満であり、意識と行動のギャップが見られます。
 家具等を固定しない理由を見てみると、こうしたギャップの要因には、まず、大規模災害による被害が現実に自分に発生しうるとの切迫感が必ずしも充分でないことが考えられます。さらに、日常生活の中で行動を起こすために必要な実践的な防災知識を容易に得られないことも考えられます。
 自助に基づく防災対策の実効を挙げるためには、国民の自発性を促しながらこのギャップを埋めることが重要であり、特に、

  1. 自然災害が決して「他人事」ではなく、いつ、どこでも自分の身に起こり得るものだという切迫感を国民が持ち、防災を日常生活の視点に取り入れるための啓発活動を強化すること、
  2. 国民が実際の減災行動を行おうとする場合に、それがスムーズに行えるよう、わかりやすく実践的な防災知識を提供する取組みを強化すること、

が必要です。

国民の意識と行動のギャップ

災害に対する切迫感を持って、防災の視点を日常生活に取り入れるための普及啓発

 自然災害がいつ、どこにでも起こりえるものだという当たり前の事実を、自分のこととして現実味を持ってとらえるきっかけとなるような機会を用意したり、将来、自分の身に起こりうる災害を分かりやすくイメージできるよう、災害リスクをより一層「見える」ようにする取組みも重要です。
 災害に対する関心が相対的に低い若年層に焦点を当てて、災害を具体的にイメージする能力を高めるための防災教育が有効です。今後は、パソコンなどにより自宅においても行うことができる参加型の防災訓練・教育ツールを、最新のIT技術を活用して作成・提供する取組みなどが考えられます。
 さらに、災害に対する意識を日々の生活の中で、実際の減災行動として活かしていくため、ショッピングモールや公民館といった身近な場所で、家具固定などの身近な防災への取組みのきっかけを提供することが重要です。こうした取組みを地域に根ざした団体が積極的に行っていくことが期待されます。

実際の減災行動をスムーズに行えるよう、わかりやすく実践的な防災知識を提供すること

 災害に備えるために、家庭や職場で必要なことには様々なものがあります。これらの対策の要点について、パンフレット等により分かりやすく提供したり、家具等の転倒・落下防止など個別の対策について専門的な見地から評価分析する試みも重要です。
 今後は、これらの知見を基に、各家庭や職場で実際に減災活動を行おうとする場合に役に立つ知識を提供する試みを充実・強化することが必要です。また、各家庭で行うべき災害への備えのチェックシートや、必要な備えを行うための実践的な知識を分かりやすくまとめた手引き書を作成したり、提供することも重要です。

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