特集 風水害の危険! そのとき、 あなたは?

平成16年台風23号、その後 〜災害を乗り越えて強くなる、地域のつながり〜

各地に大きな傷跡を残した台風23号から約4年。特に被害の大きかった地域を中心に、その後の経過を見てみよう。
平成16年台風23号、その後。

岐阜県高山市  広域に渡る市内の情報を迅速に提供

 日本一広い面積の市である岐阜県高山市。東西約80km、土地の高低差は約2700mあり、同じ市内でも天候が大きく違う。「台風23号の時には屋外防災無線からの音声が聞き取りにくかった」との市民の声を受け、高山市では屋外防災無線の台数を増やし、災害情報の迅速な提供に努めている。また、広い市内各地の情報を収集するために監視カメラを増やすなど、災害情報をいち早く集め、携帯電話やコミュニティFMを使った多様な方法で、市民に情報を提供するための対策を充実させた。

京都府  さまざまなボランティアを組織して団結

 北部を中心に15人の死者、さらに浸水やがけ崩れなど大きな被害を受けた京都府。復旧には府民や多くのボランティアが協力した。その際、ボランティアと支援を必要としている被災者とを結び付けるボランティア活動の拠点の必要性を感じ、平成17年5月より「京都府災害ボランティアセンター」を常設。社会福祉協議会やNPO、民間団体などが加盟し、府内の各団体とともに迅速で的確な救援活動ができるよう、リーダーの育成や訓練などを重ねてきた。一方で、以前からの「京都府災害救援専門ボランティア登録団体」を再編し、平成19年8月に「京都府災害時等応援協定ネットワーク会議」を設立。医療、土木、情報など専門的な団体の連携を深め、情報共有に努めている。

由良川があふれ、立ち往生したバス。(写真提供:読売新聞社)

京都府では、平成19年度に復旧が完了したのを機に、台風の教訓を子どもたちに伝えるための副読本として、記録誌を制作。

兵庫県西脇市  防災行政無線を、市内全域に完備

 市街地が冠水し、床上浸水による大きな被害が出たこの地域では、広報車による広報が住民に伝わらず情報伝達が大きな課題となった。これを受け、平成17年の黒田庄町との合併後、旧町で導入されていた防災行政無線を全域に完備。また、要援護者が安全に避難できるよう隣近所で見守る近隣協力体制づくりを推進している。自主防災組織の活性化にも力を入れ、地域の防災訓練や研修会の充実に努めている。

兵庫県洲本市  独自の防災マップを作成する地域も

 床上浸水166棟、床下浸水1065棟もの被害が出た洲本市。この災害経験をふまえて、消防防災課が設けられ、地域防災の訓練や地域学習を進めている。また、行政防災無線を持たないため、共助が災害時に大きな役割を果たしてきたが、この災害以降「自治会で防災学習を行いたい」という要望が寄せられるようになった。また、独自の防災マップや災害時要援護者リストを作成するなど、熱心に取り組む地域も出てきている。

岡山県玉野市  住民と企業の助け合い

 台風が多発した平成16年を機に、市では翌年の平成17年から自主防災組織の充実を図り、現在55団体。中でも、平成16年台風16号で高潮被害にもあった藤井地区自治連合会の活動が活発だ。倉庫には資機材を置き、公園には土のうを常備。避難場所に関しても、地形を考えて、高台に建つ三井造船玉野事業所と一時避難所として使用する協定を自分たちで締結。「自分たちでできることをやれば、行政も動いてくれます」と会長の片山軍次さん。地区に必要な水門や防潮堤の新設などの要求書を市に提出し、徐々に整備されつつある。

台風23号の時、藤井地区では高潮被害に備えて土のうを積み上げた。(写真提供:片山軍次)

香川県高松市  全住民を粘り強く説得

 浸水被害により床下、床上浸水を受けた古高松地区自主防災連合会では共助の必要性を感じ、すべての自治会を自主防災組織とするための呼びかけを開始した。「防災は行政の仕事じゃないか」と非協力的な意見もあったが、「警察や消防などの公の機関は、道路の陥没や水没により、行きたくてもすぐには救助に向かえない場合もある。自分の命は自分で守り、近所の人と共に助けあうことが必要だ」と説得。約3年かけて地区の自治会すべてを自主防災組織とした。
 また、高齢者や障害者、介護が必要な人といった災害時要援護者を助けるため、市に先んじて地域独自のリストを作成。それと同時に、誰が誰を助けるかを取り決め、災害による犠牲者ゼロに向けて備えている。

高知県室戸市  防災の日を定め訓練を実施

 高知県室戸市では、台風23号の激しい高浪により、海岸堤防が約30mにわたって倒壊し、流入した海水等により、死者3人、背後の家屋13戸が全半壊した。その被災経験を忘れぬよう被害のあった10月20日を防災の日と定め、毎年防災訓練を実施している。
 訓練では、高波の災害に備えて海辺から高台へ逃げたり、炊き出しや、発電機を利用してお湯を沸かし、非常食を食べるといった実地的な訓練を行っている。

台風23号の概要

 10月13日に発生し、18日18時に大型で強い勢力となって沖縄の南海上を北上。20日13時ごろに高知県土佐清水市付近に上陸し、15時過ぎに高知県室戸市、18時前には大阪府南部に再上陸して近畿・東海地方を進み、21日3時に関東地方で温帯低気圧となった。広い範囲で大雨となり、特に20日は九州から関東地方の多くの地点で過去の日降水量を上回った。この台風による全国の死者・行方不明者は98人。兵庫県では円山川・出石川、京都府で由良川が氾濫。また、西日本を中心に多くの土砂災害が生じた。

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