Disaster Management NEWS— 防災の動き

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首都直下地震避難対策等専門調査会報告の概要について

中央防災会議「首都直下地震避難対策等専門調査会」(座長:中林 一樹 首都大学東京教授)では、首都直下地震発災時の避難者・帰宅困難者等に係る対策について、約2年にわたり検討を行い、平成20年10月に専門調査会報告をとりまとめました。本稿では、専門調査会報告に示された主な課題とその対策についてご紹介します。

避難者に対する対策

避難所の不足への対応
 首都直下地震では、発災1日後に約460万人の避難所生活者が発生すると見込まれており、被害が大きい地域を中心に避難所が大幅に不足する可能性があります。例えば、東京都区部の避難所では、各区の住民が居住する区内で避難した場合には約60万人分、23区全体で広域的な避難を実施したとしても約49万人分不足すると想定されています(図1)。
 このため、応急危険度判定等の迅速な実施による自宅への早期復帰、避難所に指定されていない都県立学校や企業施設などの公的施設・民間施設の活用、地方公共団体の連携による広域的な避難体制の整備などの対策を進めることが必要です。

応急住宅の不足への対応
 1都3県で約162万戸の応急住宅需要が想定されるのに対して、発災6ヶ月後の供給可能量は、応急仮設住宅12万戸、自宅の応急修理31万戸、公営住宅0.2万戸と見込まれ、これらだけでは需要を満たすことはできません。しかし、民間賃貸住宅の空き家、空き室を、周辺県も含めて最大限活用することができれば、需要を満たすことが可能となります(図2)。
 このように、膨大な応急住宅需要に対しては、応急修理等による自宅への早期復帰、公営住宅の利用や応急仮設住宅の早期提供、民間賃貸住宅の空き家・空き室の活用など、多様な手段を用意しておくことが必要です。

図1:東京都の区市町村別の避難所収容数の不足状況
図2:応急住宅の需要量と供給可能量の推計

帰宅困難者等に対する対策

一斉帰宅の抑制
 首都直下地震では、約650万人の帰宅困難者の発生が見込まれていますが、人々が一斉に徒歩帰宅を開始した場合、満員電車並みの混雑となる道路が数多く発生し、帰宅時間が平常時に比べて大幅に増加すると見込まれるほか、集団転倒等の危険や応急対策活動への支障も懸念されます。
 このため、複数の安否確認手段を使用することの必要性や、家族間で複数の安否確認手段の使用順位等を決めておくことの重要性について周知・広報することにより、安否確認を迅速に行うとともに、「むやみに移動を開始しない」という基本原則を周知・徹底することにより、一斉帰宅を抑制していくことが必要です。
 また、専門調査会での検討において実施した帰宅行動シミュレーションの結果、翌日帰宅や時差帰宅を行った場合には、混雑が大きく緩和されることがわかりました(図3)。このため、企業等において翌日帰宅や時差帰宅を促進していくことも重要です。

円滑な徒歩帰宅のための支援、滞留者への対応
 円滑な徒歩帰宅のためには、帰宅経路の混雑状況等の情報を適切に把握し提供することや、地域の自治会等の協力を得て混雑箇所等での交通誘導を実施することなどの対策に取り組むことが重要です。
 また、都心部等における滞留者や徒歩帰宅者への対応として、飲料水、トイレ、情報等を提供する機能を持った帰宅困難者等支援広場や一時滞在施設の確保、駅周辺における混乱防止のための組織づくりなどの対策を進めることも必要です。

図3:翌日帰宅、時差帰宅による混雑緩和の効果

共通する課題への対応

 発災時の避難所では、多数の避難者に加えて、帰宅困難者等が休憩やトイレ利用等のために帰宅経路周辺の避難所に集まることも想定されるため、避難所運営マニュアル等に帰宅困難者等への対応方法を明確化しておくことが必要です。
 また、企業等においても、外部から避難者、帰宅困難者等が訪れた場合の対応方針をあらかじめ定めておき、事業継続計画(BCP)等に記載することが望まれます。

おわりに

 首都直下地震発災時には、避難所や応急住宅の不足、一斉帰宅による混乱など様々な課題が想定されます。公的機関のみならず、企業、学校、そして一人ひとりの国民が連携・協働した取組を進め、自助・共助・公助のすべての力を結集して対策を講じていくことが望まれます。
※専門調査会報告等の資料につきましては、以下のホームページからご覧頂けます。
https://www.bousai.go.jp//kaigirep/chuobou/senmon/shutohinan/index.html

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