・200002:2000年(平成12年) 三宅島噴火災害
【概要】
(1)被害の概要
平成12年6月26日に気象庁が緊急火山情報を発表した。それ以降の雄山の噴火活動により、人的被害はなかったものの、平成12年6月から12月までに下表のとおりの被害が確認されている。
表1 三宅島噴火災害の主な被害状況(平成12年12月時点)
被害種別 | 箇所 |
道路・河川 | 仏沢(ほとけざわ) |
三七沢(さんしちさわ) | |
地獄谷(じごくだに) | |
椎取神社 (しいとりじんじゃ) | |
釜の尻沢(かまのしりさわ) | |
坊田沢(ぼうたさわ) | |
伊ヶ谷地区(いがやちく) | |
空栗橋(からくりぱし) | |
東部、北部道路全般 | |
港湾・漁港 | 湯の浜漁港 |
伊ヶ谷漁港 | |
坪田漁港 | |
空港 | 三宅島空港 |
水道 | 水源(大路(たいろ)、金層(かなそ)) |
送水管(伊ヶ谷、三七沢、立根(たつね)) | |
ポンプ場(見取畑(みどりばた)) | |
電気 | 島内全域 |
電話 | 坪田地区 |
農業 | 島内全域 |
林業 | 島内全域 |
漁業 | 魚場・漁港 |
(2)災害後の主な経過
表2 災害の主な経過(国・都・村の対応)
年 | 月日 | 災害概要 |
1800頃 地震が多発。気象庁が緊急火山情報を発表。 | ||
2045 三宅村災害対策本部を設置。阿古地区、坪田地区に避難勧告を発令。西方海底で小規模な噴火。 | ||
627日 | 東京都災害対策本部を設置。 伊ヶ谷地区に避難勧告。 坪田及び三池地区について避難勧告解除。のち避難勧告全面解除。 | |
629日 | 有感地震 都は、災害対策本部を廃止。村も災害対策本部を廃止。 | |
630日 | 山頂で噴火が発生、少量の火山灰が放出。 | |
74日 | 山頂の新カルデラから最初の噴火。 | |
78日 | 白い火山灰を主成分とする噴火 | |
9:00 三宅村災害対策本部を設置。 | ||
1640 神着地区の一部(島下、下馬野尾)に避難勧告 | ||
715日 | 9:00 神着地区の避難勧告を解除 | |
717日 | 8:30 島下、下馬野尾、沖ケ平の一部に避難勧告 | |
726日 | 1530 三池地区(御子敷の4世帯、9人を除く)に避難勧告 | |
1100 沖ケ平の一部に避難勧告を追加 | ||
1400 沖ケ平の一部の避難勧告を解除 | ||
728日 | 1600 避難勧告を全解除 | |
82日 | 6:30頃 噴火。噴煙の高さ | |
8:43 神着間川橋から坪田三宅島空港入口までの聞に避難勧告 | ||
1600 下馬野尾・御子敷を除き、避難勧告を解除都は、「三宅島・新島・神経島近海地震等災害対策会議」を設置。 | ||
811日 | 8:00 門の原地区から三宅島空港入口までの間に避難勧告 | |
812日 | 9:50 御子敷地区を除き、避難勧告を解除 | |
1600 避難勧告を全解除 | ||
1700 最大規模の噴火。 | ||
818日 | 火砕流の発生。神着地区、続いて坪田地区に噴煙柱が崩れて流れ下った。低温火砕流と呼ばれる。人的被害なし。 | |
829日 | 三宅村現地対策本部設置 | |
92日 | 7:00 全島避難指示(2~4日で避難実施) | |
15日 | 三宅村村長、平成17年2月1日をもって避難指示を解除する旨を発表 | |
21日 | 1500 避難指示解除 | |
331日 | 東京都災対本部廃止。 |
【参考文献】
1)東京都『平成12年(2000年)三宅島噴火災害誌』平成19年3月。
2)内閣府『三宅島噴火災害教訓情報資料集』平成17年度。
三宅村復興計画策定委員会(三宅村が平成14年1月29日に設置)は、噴火災害から1日も早く立ち直るための社会基盤整備対策を講じるとともに、将来の噴火などの災害に備えた、災害に強い島づくりと、これまで島を支えてきた農林漁業などの地域の基幹産業の振興との調和を図りながら観光産業を核として、三宅島独自の再建策の構築に早急に取り組むために設置された。同委員会は、平成14年12月4日に「三宅村復興基本計画」を三宅村へ答申した。
○復興計画の基本理念
島民が「安心して」、「活き活き」、「安全に」生活できることに加えて、三宅島らしさを追求し、時に厳しさをみせる自然と共生しながら、三宅村の目指す将来像である「人と自然にやさしい健康で豊かな村」を実現することを目指して、次の3つを基本理念と定めている。
・三宅島民の生活再建を最優先とした復興計画とする(生活再建)
・火山をはじめとした島の自然と三宅島民の文化や伝統を活かし、世界に誇れる観光地としての三宅島振興を実現するためのきっかけとなる復興計画とする(地域振興)
・噴火などの災害に備え、災害に強い三宅島づくりを目指した復興計画とする(防災しまづくり)
○復興計画の概要
「三宅村復興基本計画」では、基本計画の完成目標年次を10ヶ年と定めている。計画策定時は、帰島時期が不確定だったため、それらを踏まえて、「現時点から推進すべき事業」と、「帰島時期に応じて推進するべき対策」とに、復興施策や事業を大別している。
また、大きな特徴として、ハザードマップを作成しで噴火災害、泥流災害等の危険地域については、新たな個人資産の形成や社会基盤の建設は行わないことを前提としている。
生活再建、地域振興、防災しまづくりの分野での復興事業を推進するために、三宅村を14のゾーンに分けている。
各分野のゾーンは、それぞれが独立したものではなく、互いに関連しあい、相乗効果をもたらすものとし、すべての分野にわたって、火山との共生を目指す計画としている。また、統一的なまちなみの整備や広域的なバリアフリー化の推進など、島民・来島者にやさしく、三宅島らしい景観形成を目指している。
図 復興計画のゾーニング図
図 復興計画のゾーニングの体系
【参考文献】
1)東京都『平成12年(2000年)三宅島噴火災害誌』平成19年3月。
2)内閣府『三宅島噴火災害教訓情報資料集』平成17年度。
3)三宅島復興計画策定委員会『三宅島復興基本計画』平成14年12月。
○村民の避難生活が困窮状態に陥らないようにするとともに、帰島してから自らの努力により生活の再建が可能となるよう支援。
○対象
・被災日に三宅村に住所を有し、かつ帰島の意思を有する世帯実施予定
・災害保護の対象とならない世帯
・収入認定額が基準額以下であること
・義援金、支援金を含めて預貯金の保有額が500万円以下で預貯金を預託する世帯
○支給額
・生活保護基準額を準用する基準額と世帯の収入認定額を比較して、収入認定額が基準額に満たない場合に、その不足額を支給。
○実績:44世帯2,599万円(H16.2末)
○避難指示が4年半にも及んだことから、次のような固定資産税の特例措置が実施された。
1) 住宅が震災等により滅失・損壊した土地で、やむを得ない事由で住宅用地として使用できず、避難指示等が長期に及ぶ場合は、避難指示等の解除後3年度分の固定資産税等を軽減。
2) 三宅島噴火災害により滅失・損壊した家屋等の代わりに取得する家屋等に係る固定資産税について、最初の4年間2分の1減額(解除のあった年の翌年から3年を経過する間)
○経済産業省は、被災中小企業者の政府系中小企業金融機関からの既往債務について、東京都等と協力して以下の措置を実施した。
・元本については、政府系中小企業金融機関が被災中小企業者からの求めに対して、返済猶予等の柔軟な対応を行う。
・金利については、返済猶予措置のとられている間について、国と東京都等が協力して利子補給を実施。
・民間金融機関からの既往債務については、東京都等が利子補給措置を行う。