第4節 被災者支援体制の充実
関東大震災発災直後には、東京市において、当時の人口約248万人のおよそ4割に当たる推計100万人の避難者が発生したといわれている。13第2節で述べたとおり、建築物の耐震性等は関東大震災の時と比べると大幅に向上しているが、その後の急速な市街化の過程で生じた木造密集市街地における家屋倒壊や火災による延焼が懸念されるとともに、断水や停電などのライフラインへの被害によって、自宅への被害が軽微であっても在宅での避難生活が困難となる被災者が多数発生することが懸念される。
関東大震災の発生時には、被害の甚大さと応急対策準備の不足のため、行政機関による迅速な応急対策を行うことができず、被災者支援の遅れや被害の拡大を招いた。国は、想定される首都直下地震、南海トラフ地震及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震への対策として、基本計画等を策定して応急対策準備を行うとともに、各種訓練等を通じてその実効性を高めるための計画の改善に努めている。
また、高齢化の進展や外国人の増加等の環境変化に伴い、関東大震災の発生時とは異なる新たな課題が生じている。さらに、女性やこども、障害者等も含めて、それぞれの被災者ニーズを踏まえた対応を進めていく必要がある。このため、災害時の情報提供、避難誘導及び避難所の生活環境向上を通じた災害関連死の防止など、災害時要配慮者をはじめとする被災者に対するきめ細やかな施策を、福祉等の関連施策との連携の下で進める必要がある。
さらに、災害の激甚化・頻発化が今後予想される中、行政による「公助」だけでは十分な被災者支援を行うことができない。このため、国民一人一人の「自助」の意識を高めていくとともに、「共助」の取組を促進するため、男女共同参画の視点を踏まえるとともに、NPO、ボランティアを始めとした様々な民間団体が参画するなど、多様な主体が連携した被災者支援体制を構築していく必要がある。加えて、東日本大震災や関東大震災の際に受けたような海外からの支援との連携も強化していかなければならない。
13 中央防災会議(2009)、「関東大震災報告書 第2編」p6(関沢愛氏・西田幸夫氏執筆)