3-3 地域の原子力防災体制に係る訓練や研修
(1)地方公共団体における原子力防災訓練への支援
地方公共団体は、「災害対策基本法」等に基づき定期的に原子力防災訓練を実施することとなっている。道府県が主催する訓練では、例年、道府県知事を始めとする地方公共団体及び警察、消防、海上保安庁、自衛隊といった国や地域の関係実動組織が参加し、住民避難や避難退域時検査については、一部実動訓練を取り入れた形で実施されている(図表3-3-1)。
各地域原子力防災協議会においては、地域防災計画及び避難計画の具体化・充実化が図られた地域について、地域防災計画及び避難計画の具体性や実効性の検証を目的として、訓練の企画・実施や評価方法の普及、訓練を通じたPDCAサイクルの実践等、必要な支援を行っている。
また、内閣府は平成30年3月に、道府県が主体となる訓練の企画、実施及び評価までの訓練全般における基本的な指針となる「原子力防災訓練の企画、実施及び評価のためのガイダンス」を策定しており、平成31年3月には同ガイダンスの改訂等を行った。
(参照:https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/kunren/kunren.html)
(2)国や地方公共団体、実動組織等の職員への研修の実施
(国による研修事業)
内閣府では、国や地方公共団体等の防災業務関係者に対し、原子力災害対策指針の防護措置の考え方について理解し、原子力災害時の対応力を向上させることを目的として、原子力災害対策要員研修及び原子力災害現地対策本部図上演習を実施した。
また、防災業務関係者の中から中心的な役割を担う者等を対象に原子力災害時の事態進展に応じた国の本部運営等の理解を促すことを目的とした中核人材研修を実施するとともに、地方公共団体の防災業務関係者を対象に、原子力災害時の住民避難等を円滑に行うために必要な防護措置に関わる情報共有等の対応等の能力向上を目的とした実務人材研修を実施した。
さらに、国の防災業務関係者を対象とし、放射線防護のために必要な基礎知識を習得することを目的として、原子力防災基礎研修を実施した。
<1>原子力災害対策要員研修
原子力災害に対応する国や地方公共団体等の防災業務関係者を対象とし、原子力防災に関する法令、原子力災害対策指針、東京電力福島第一原子力発電所事故から得られた教訓を踏まえた原子力防災に関する基礎知識を修得することを目的として、原子力災害対策要員研修を実施している。令和3年度においては、36回開催した。主な研修内容は、以下のとおりである。
・原子力防災関連法令の概要(座学)
・原子力災害対策指針に基づいた放射線防護の基本的な考え方(座学)
・東京電力福島原子力発電所事故の教訓(座学) 等
<2>原子力災害現地対策本部図上演習
原子力災害に対応する国や地方公共団体等の防災業務関係者を対象とし、緊急時の災害対応能力を習得すること、また、地方公共団体が策定する地域防災計画及び避難計画の検証及び改善を図ることを目的として、原子力災害現地対策本部図上演習を実施している。令和3年度においては13回開催した。主な研修内容は、以下のとおりである。
・緊急事態応急対策拠点施設における活動(座学)
・機能班別課題演習
・シナリオに基づいた図上演習 等
<3>中核人材育成研修
原子力災害に対応する国や地方公共団体等の防災業務関係者の中から中心的な役割を担う要員を対象に、原子力災害時に対応できるよう中核的役割を担う人材を育成するため、必要な知識の習得及び能力の向上を目的として中核人材育成研修を実施している。令和3年度においては、国及び道府県の要員に対してそれぞれ2回開催した。主な研修内容は、以下のとおりである。
・発電用原子炉における緊急事態(座学)
・原子力緊急事態と健康影響(座学)
・原子力緊急事態における防護措置(座学)
・図上演習
<4>実務人材研修
a.避難退域時検査等の対応
避難退域時検査及び簡易除染の実施計画等を担当する地方公共団体等職員を対象とし、避難退域時検査の具体的計画及びマニュアル等の作成担当者や検査場における責任者となる人材を育成することを目的として、実務人材研修を実施している。令和3年度においては4回開催した。主な研修内容は、以下のとおりである。
・避難退域時検査の基本的考え方等(座学)
・避難退域時検査の計画策定及び運営に関する演習 等
b.バスによる避難等の対応
バスによる避難計画等を担当する地方公共団体等職員を対象とし、バスによる避難等の対応の具体的計画及びマニュアル等を作成できる人材を育成することを目的として、実務人材研修を実施している。令和3年度においては4回実施した。主な研修内容は、以下のとおりである。
・住民の避難バスの確保・手配業務に関わる業務手順と事前の準備等(座学)
・各道府県のバス等による住民避難に関する準備状況の共有、課題の抽出と改善の検討
c.防護措置の状況等の共有等の対応
「防護措置の状況等」に係る情報の取りまとめ・共有等を担当する地方公共団体等職員を対象とし、各事態における防護措置を具体的に進めるために必要な被災状況等の把握方法、関係者間での情報共有等の実施方法について理解することを目的として、実務人材研修を実施している。令和3年度においては2回実施した。主な研修内容は、以下のとおりである。
・「防護措置の状況等の共有等」に必要な情報の取りまとめ・共有等の運用について(座学)
・各事態における確認すべき事項の整理、確認方法等に係る検討
(地方公共団体による研修事業)
防災業務関係者研修及び原子力防災基礎研修は、各道府県が主体的に企画・実施し、必要に応じて内閣府が支援した。
<1>防災業務関係者研修
防災業務関係者研修は、原子力災害時に住民防護活動を行う民間事業者等を対象とし、放射線防護のために必要な基礎知識、住民防護の基本的考え方及び住民防護活動の流れ等を習得することを目的として実施した。
<2>原子力防災基礎研修
原子力防災基礎研修は、原子力災害に対応する地方公共団体等の防災業務関係者を対象とし、放射線防護のために必要な基礎知識を習得することを目的として実施した。