2-7 災害時における船舶を活用した医療提供体制の整備の検討
病院船(災害時等において船内で医療行為を行うことを主要な機能とする船舶をいう。以下同じ。)に関しては、従来から政府において、調査研究や既存船舶を活用した実証訓練が実施されてきた。
令和2年度には、新型コロナウイルス感染症への対策として、医療提供の場の確保のための病院船の活用の検討を行い、令和3年3月に内閣府、厚生労働省、防衛省及び国土交通省が連名で、病院船の活用に関する調査・検討を踏まえた政府の考え方を取りまとめ、公表した。この政府の考え方では、病院船について、大規模災害発生時に、特に陸路が途絶された地域や離島に対して、陸上医療機関を補完することが期待されるとし、<1>医療従事者の確保、<2>運航要員の確保、<3>平時の活用方策という課題について引き続き対応策を検討しつつ、これらの課題が解決していない現状を踏まえ、当面、新たに病院船の建造に着手するのではなく、既存船舶を活用した災害医療活動の具体化に取り組むこととした。
これを受けて、令和3年度は医療関係団体の意見等を踏まえつつ、医療従事者約150名が参加し、初動(要員の参集)から完了(患者の搬出)までの活動を実証する自衛隊艦艇を活用した本格的な訓練の準備を進めた。令和4年1月の新型コロナウイルス感染症の拡大のため、実動訓練は中止することになったが、実動訓練の準備段階や図上訓練で得た知見については、今後の検討に活用していく。
また、令和3年6月に、議員立法により「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律」(令和3年法律第79号)が成立し、公布の日から3年以内に施行される予定である。同法は、災害時や、感染症の発生・まん延やそのおそれがある時に備え、船舶を活用した医療提供体制の整備を推進することを目的とするものであり、基本方針として、<1>陸上医療との役割分担・連携協力、<2>災害時等における医療の提供の用に主として供するための船舶の保有(国以外の者により保有することを含む)、<3>人員の確保、<4>人材の育成、<5>物資の確保、<6>平時の活用、<7>民間活用が挙げられている。政府は、基本方針に基づき、必要な法制上又は財政上の措置等を講じるとともに、整備推進計画を策定することとされている。
政府は、同年10月に関係府省連絡会議を開催し、法の施行に向けて、政府一体となって検討を開始したところであり、これまでの政府の取組を活かしつつ、引き続き医療関係団体の意見にも十分に耳を傾けながら、災害時の医療提供体制の充実に取り組んでいく。