第7節 気候変動リスクを踏まえた防災・減災対策
(1)緩和策と適応策は気候変動対策の車の両輪
近年の平均気温の上昇や大雨の頻度の増加など、気候変動及びその影響が世界各地で現れており、気候変動問題は人類や全ての生き物にとっての生存基盤を揺るがす「気候危機」とも言われている。個々の気象現象と地球温暖化との関係を明確にすることは容易ではないが、今後、地球温暖化の進行に伴い、このような猛暑や大雨のリスクはさらに高まることが予測されている。
我が国では、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けることとしている。しかしながら、2050年カーボンニュートラル実現に向けて気候変動対策を着実に推進し、気温上昇を1.5℃程度に抑えられたとしても、熱波のような極端な高温現象や大雨等の変化は避けられないことから、現在生じている、又は将来予測される被害を回避・軽減するため、適応の取組が必要となる。
(2)気候変動適応計画の改定
気候変動適応の法的位置づけを明確化し、一層強力に推進していくべく、平成30年6月13日に「気候変動適応法」(平成30年法律第50号)(以下「適応法」という。)が公布され、同年12月1日に施行された。適応法施行前の同年11月には適応法の規定に基づき、「気候変動適応計画」(以下「適応計画」という。)が策定された。
また、令和2年12月には、気候変動及び多様な分野における気候変動影響の観測、監視、予測及び評価に関する最新の科学的知見を踏まえ、「気候変動影響評価報告書」を公表した。本報告書では、科学的知見に基づき、自然災害・沿岸域をはじめとする、7分野71項目を対象に、重大性、緊急性、確信度の3つの観点から評価を行った。
(参照:http://www.env.go.jp/earth/tekiou.html)
令和3年10月には、気候変動影響評価報告書で示された最新の科学的知見を勘案し、適応計画の改定を行った。本計画では、後述する「気候変動×防災」の考え方を組み込む等、幅広い分野で適応策を拡充している。
(参照:https://www.env.go.jp/press/110115.html)
(3)「気候変動×防災」「適応復興」の取組
環境省及び内閣府は、令和2年6月に気候変動対策と防災・減災対策を効果的に連携して取り組む戦略である「気候危機時代の『気候変動×防災』戦略」を公表した。本戦略の内容は以下のとおりである。
- あらゆる主体が、各分野で、気候変動対策と防災・減災対策を包括的に講じていく、すなわち「気候変動×防災」の考え方を組み込む。
- 地域を災害前の元の姿に戻すという原形復旧の発想に捉われず、自然の性質を活かして災害をいなしてきた古来の知恵にも学びつつ、土地利用のコントロールを含めた弾力的な対応により気候変動への適応を進める「適応復興」の発想を持ち、いわば「災害をいなし、すぐに興す」社会を目指す。このため、被災後に速やかに対応できるよう、災害発生前から未来を見据え、復興後の社会やまちの絵姿を地域で検討・共有し「より良い復興」を目指す、事前復興の取組を進める。
環境省では、各分野の政策において「気候変動×防災」を組み込み、政策の主流にしていくため、「適応復興」の取組を促進するための地方公共団体向けマニュアルを作成するなど、気候変動対策と防災・減災対策を効果的に連携させた取組を進めている。