1-5 住民主体の取組(地区防災計画の推進)
「地区防災計画制度」は、平成26年の災害対策基本法の改正により、地区居住者等(居住する住民及び事業所を有する事業者)が市町村と連携しながら、自助・共助による自発的な防災活動を推進し、地域の防災力を高めるために創設された制度である。これによって、地区居住者等が地区防災計画(素案)を作成し、市町村地域防災計画に地区防災計画を定めるよう、市町村防災会議に提案できることとなった。
令和元年4月1日現在では、3,028地区で地区防災の策定に向けた活動が行われ、さらに827地区では地区防災計画が地域防災計画に定められた。制度創設から6年が経過し、地区防災計画がさらに浸透してくることが期待される。
(1)地区防災計画の意義
地区防災計画は、地区住民等が、自助、共助の精神に基づき、地域の災害リスクや人口特性等に応じて、皆で安全な地区をつくるためのツールであり、計画に定める共助の取組は、自分が、そして自分の親が、高齢になっても安心して暮らせるための自分事の取組でもある。地区の大人たちが積極的に計画を考え、実施する姿勢は、地区の安全を高めることにとどまらず、地区を守ろうという次世代を育む防災教育の効果をも有するものである。
(2)地区防災計画の動向
内閣府において、平成30年度中に地域防災計画に反映された地区防災計画579地区(23市町村)の事例を分析したところ、以下のような特徴が見受けられた。
<1>計画策定に向けた活動のきっかけは、行政(市町)の働きかけによる場合が96%あった。地区防災計画が本来、住民主体のボトムアップの取組であることを確保しつつ、住民等による地区防災計画の策定に向けた取組を活性化するためには、行政の働きかけが重要である。
<2>地域の災害リスクを理解するために、住民が主体になって、発生のおそれのある災害や危険な箇所を調査したり、地域の社会的な特性(高齢化率、昼夜間人口等)の調査を行ったりしている取組が見られた。例えば、過去に当該地区で発生した災害を住民が検証している事例(例:北海道札幌市厚別西地区、)、行政が提供した防災マップを地区の詳細な地図に重ねて表示し、危険な場所を認識した事例(例:茨城県阿見町霞台地区、埼玉県熊谷市奈良地区)、まち歩きを通じて適切な避難路をマップに整理した事例(例:高知県高知市下知地区)、地域の成り立ち、歴史、自然環境等を分析した事例(例:静岡県三島市三春台地区)等がある。
<3>計画内容としては、活動目標や活動予定などの長期的な計画、防災訓練や組織・体制などの体制整備、要配慮者支援や避難など命を守る上で重要事項については、ほとんどの地区で記載されている。(図表1-5-1)。
<4>町会・自治会、自主防災組織が計画の「作成主体」とされている例が多い。そのほか、数は少ないものの、学校区やまちづくり協議会などが主体の事例もみられる。地域の社会的特性に応じ、作成主体の多様化が期待される(図表1-5-2)。
(3)内閣府の取組
<1>「地区防災計画の素案作成に向けた進め方ガイド」の作成・公表
地区防災計画の策定促進に向けては、市町村から地区への働きかけが重要であるところ、計画作成を支援、推進する市町村職員の取組を促進するため、計画の作成支援に当たっての「地区防災計画の素案作成に向けた進め方ガイド」を作成・公表している。本ガイドでは、地区防災計画が共助の避難方法を定める重要なツールとして、その役割が再認識されるよう、まずは命を守るため最も重要な避難に関するものに絞ってでも計画作成することが重要であり、避難の要素だけをもって地区防災計画の作成とできることなどを明示している。
<2>地区防災計画に取り組む自治体ネットワーク「地区防’z(ちくぼうず)」の活動支援
地区防災計画の作成支援に取り組む自治体職員が、より日常的に計画作成時の課題等について情報交換を行い経験の共有を行えるためのプラットフォームである地区防災計画に取り組む自治体ネットワーク「地区防’z」には、令和2年3月末現在326名が参加しており、適時に勉強会が行われている。
<3>地区防災計画ライブラリの構築
地域防災計画に定められた地区防災計画を、計画内容(対象とした課題、対策、取組主体)別に分類し、内閣府HPで一覧できるライブラリが構築されており、計画作成主体等の作成作業を支援している。