1-2 「気候変動×防災」の検討の方向性
- 気候変動を踏まえた防災の視点を様々な政策へ導入
防災対策は、気候変動対策にもつながり、様々な政策の中に横断的に取り込んでいくことが重要である。例えば、地域での気候変動を踏まえた防災の取組は、コミュニティの強化や地域の活性化にもつながり、企業の取組は、企業の事業継続力や信用力の向上のみならず地域経済や雇用の安定につながる。このようにして総合的に防災・減災能力を向上しつつ、持続可能で強靱な社会をつくることが必要である。
- 自助や共助の意識向上、取組主体の連携
全ての国民や企業が、気候変動による災害リスクの高まりを受け止め、あらためて防災意識を高めて、確実な避難行動など災害に備える具体的な行動に移すことが重要であり、これを促す自助や共助の意識向上を図る取組が必要である。その際、市民、企業・団体、行政など様々な主体が連携して取り組むことが、社会の総合的な防災・減災能力を高めることになる。
- 高まる災害リスクに対応した防災・減災の態勢の整備
防災に関する施設を、気候変動により高まる災害リスクに対応できるものに強化していくことのほか、災害の危険のある場所にはできるだけ住まわせないようにする、あるいは住む場合も災害リスクを理解した上で安心して暮らせる工夫を考える等、ハード、ソフトのあらゆる手段により新たな防災・減災の態勢を整備していくことが必要である。
- 新たなビジネスや市場機会の創出
気候変動による災害リスクの意識の高まり、適応策の重点化は国際的な流れでもある。わが国で進める気候変動を踏まえたハード、ソフトの防災対策は、気候変動の適応策として、また複数のSDGsに貢献する対策として、諸外国でも受け入れられ、活用される可能性がある。そうした視点に立ち、災害リスクの高まりの危機(ピンチ)を、わが国の技術やノウハウを高め、世界でも活かす機会(チャンス)とも捉え、一層前向きに「気候変動×防災」に取り組む環境を整えることが重要である。
- 気候変動対策の加速
気候変動による災害リスクを低減するためには、地球温暖化を抑制することが根本的な対策であり、脱炭素社会に向けた取組の一層の推進も必要である。また、追加的な温室効果ガスを排出しなくても一定程度の温暖化は避けられないことから、社会の持つ脆弱性等も踏まえた気候変動リスク情報等の整備及びこれを活用したあらゆる分野における気候変動の主流化が重要であり、これらがひいては防災、減災対策ともなることを認識すべきである。
「気候変動×防災」という視点に立った政策の検討に当たっては、こうした方向性をまとめて示し、これも踏まえ、内閣府防災担当、内閣官房国土強靱化推進室及び環境省をはじめ関係省庁において、気候変動により新たなステージに上がった災害リスクに対応できるよう、施策を検討し、講じていく。