第2節 住民の避難行動対策
2-1 令和元年東日本台風等を踏まえた政府の避難対策の検討経緯
平成30年7月豪雨では、大雨特別警報が11府県に発表される記録的な大雨により、岡山県・広島県・愛媛県を中心に河川の氾濫、土砂災害等が多数発生し、死者・行方不明者が200名を超え、昭和58年8月豪雨以来死者数が初めて100名を超える大惨事となった。
この未曽有の豪雨災害を教訓とし避難対策の強化を検討するため、中央防災会議防災対策実行会議の下に設置された平成30年7月豪雨による水害・土砂災害からの避難に関するワーキンググループでは、目指す社会として、「住民が『自らの命は自らが守る』意識を持って自らの判断で避難行動をとり、行政はそれを全力で支援するという住民主体の取組強化による防災意識の高い社会を構築する」必要性が示された。
これを踏まえ、国及び地方公共団体は、「自らの命は自らが守る」という意識の徹底や、地域の災害リスクととるべき避難行動等についての住民の理解を促進するため、行政主導の避難対策のみでは限界があることを前提とし、住民主体の取組を支援・強化することにより、社会全体としての防災意識の向上を図ることとしたところである。
令和元年台風第19号(令和元年東日本台風)では、1都12県309市区町村に大雨特別警報が発表され、国及び県管理河川において142か所が決壊する等、同時多発的かつ広範囲に甚大な被害が発生した。さらに、10月24日から26日にかけての低気圧等による大雨により、千葉県や福島県を中心に河川の氾濫、土砂災害等が発生しており、これらの豪雨災害による人的被害は死者104名(うち災害関連死者7名)、行方不明者3名に上った。
これら豪雨では、避難をしなかった、避難が遅れたことによる被災や、豪雨・浸水時の屋外移動中の被災、また高齢者等の被災が多く、いまだ住民の「自らの命は自らが守る」意識が十分であるとは言えない。また、行政による避難情報や避難の呼びかけがわかりにくいとの課題や、タイミングや避難場所等広域避難の困難さが顕在化した。
本ワーキンググループでは、令和2年度出水期までに速やかに実施するべき対策と、令和2年度以降も検討を行い早期に結論を得る抜本的な対策について議論した。出水期までには、「自らの命は自らが守る」意識を一人一人に醸成させるべく、避難行動を促す防災への理解力を向上させるためのキャンペーン等普及啓発等に関わるものを集中的に行い、避難情報や避難行動要支援者の避難等、制度的検討が必要となるものについては主な論点を整理し、引き続き議論・検討を進めることとした。