平成9年版防災白書

平成9年版防災白書について

<「災害の状況と対策」のポイント>


平成9年6月
国土庁防災局


1.我が国の災害の状況(第1章)

阪神・淡路大震災をはじめ、近年甚大な被害をもたらす大規模な災害が発生。防災対策の充実・強化は緊急かつ重要な課題

2.我が国の災害対策の現況と課題(第2章)

阪神・淡路大震災後の体制整備

防災基本計画を改訂
  • 具体的かつ実践的な内容となるよう震災対策、風水害対策、火山災害対策等の災害の種類別に体系構成し、災害予防、災害応急対策、災害復旧・復興の各段階ごとに実施すべき措置等を規定。
災害対策基本法を改正
  • 緊急災害対策本部の設置要件の緩和及び組織の強化 、 非常災害対策本部設置の迅速化 (閣議を経ずに設置)、災害時の交通の規制に関する措置の拡充等を規定。
首都直下型等大規模地震発生時の体制整備
  • 首都直下型等大規模地震発生時の内閣の初動体制を整備するため、 内閣総理大臣の職務代行、参集場所等について閣僚懇談会で申し合わせ 。
情報収集体制の整備
  • 大規模災害発生時の第一次情報収集体制の強化 、 中央防災無線網の都道府県への拡充 、 ヘリTV画像情報伝達体制の整備 、 地震防災情報システム(DIS)の整備 等を実施。
救援体制の整備
  • 自衛隊の自主派遣の運用方針の明確化と派遣要請手続きの簡素化 、 広域緊急援助隊及び緊急消防援助隊の創設 等救援体制を整備。

事故災害対策のための体制整備

  • ○近年の防災を取りまく社会構造の変化に対応し、防災対策の一層の充実強化を図るため、海上災害、航空災害、鉄道災害、道路災害、原子力災害、危険物災害等の事故災害対策について、防災基本計画に新たに追加し、体制を整備
  • 自然災害対策編と同様に、具体的かつ実践的な内容となるように、災害予防、災害応急対策等の段階ごとに実施すべき措置、施策等について詳細に規定

震災対策の推進

地震防災対策特別措置法(平成7年7月施行)に基づく取組み
  • 地震調査研究推進本部を新たに設置し、政府の関係機関が密接な連携協力を行いながら地震に関する調査研究を推進する体制を整備。
  • 地方公共団体は地震防災緊急事業五箇年計画を作成、同計画に基づく事業を推進。
即時情報の活用
  • 国土庁において「地震防災情報システム(DIS)」の整備を行っているのをはじめ、即時情報を活用するためのシステム等を各機関で整備。
都市の防災構造化
  • 緊急輸送手段の確保、避難地・避難路の確保及び整備、都市の不燃化等の推進、防災拠点の整備等を推進。
施設の耐震性の向上
  • 道路、鉄道、港湾といった各種の施設について耐震基準を見直し
  • 耐震性の十分でない既存施設の耐震改修を積極的に推進
  • 建築物については「建築物の耐震改修の促進に関する法律」を制定し現行耐震基準に適合しない一般の建築物の耐震改修を促進

風水害対策等の推進

  • ○平成7年7月の防災基本計画の改訂において新たに風水害対策編・火山災害対策編等を策定、これに基づき各種対策を実施。
  • ○風水害対策では、被害を未然に防止し又は軽減するとの観点から、①気象観測の充実と迅速な予報・警報等の発表、②治山・治水対策の推進、③土砂災害の防止、等が重要な課題であり、これらについての施策を計画的に推進。
  • ○火山災害対策では、①火山観測研究体制の整備、②活動火山対策特別措置法等に基づく対策、等を推進。

3.平成8年度に発生した主要な災害(第3章)

地震

平成8年度に発生した主な地震は以下の通りであり、これらについて政府として対応を実施。
秋田・宮城県境を震源とする地震(平成8年8月)
伊豆半島東方沖群発地震(平成8年10月)
伊豆半島東方沖群発地震(平成9年3月)
愛知県東部を震源とする地震(平成9年3月)
鹿児島県薩摩地方を震源とする地震(平成9年3月)

12.6蒲原沢土石流災害

  • ○平成8年12月6日新潟県と長野県の境界、蒲原沢(姫川支流)で土石流が発生。
  • ○人的被害は死者13人、行方不明者1人、負傷者8人。建設省、警察・消防・自衛隊等が行方不明者の捜索等を実施。

ナホトカ号海難・流出油災害

  • ○平成9年1月2日、「ナホトカ号」海難事故発生。この事故により重油が流出し、1府8県に漂着。
  • ○政府は、「ナホトカ号海難・流出油災害対策本部」(本部長:運輸大臣)、「ナホトカ号流出油災害対策関係閣僚会議」(主宰:官房長官)を設置して対応。
  • ○海上保安庁、警察、消防、自衛隊等が人員、機材等を派遣し乗組員の救出、流出油の防除・回収及び運搬、情報収集等を実施。

4.阪神・淡路大震災の災害復興対策(第4章)

復旧・復興の状況

生活の再建
  • 兵庫県下のがれき処理状況(平成9年2月末現在)
建物等の解体進捗率 99.0 %
処分率 96.0 %
  • 兵庫県における公的供給住宅の整備状況(平成9年3月1日現在)
計画戸数 77,000戸  
用地確保ができた戸数 約66,500戸 (86%)
着工された戸数 約45,600戸 (59%)
インフラ施設の復旧・復興状況
神戸港の港湾施設は、予定どおり平成8年度内に港湾機能を回復。
道路は、阪神高速3号神戸線が平成8年9月に全線開通するなど、順次復旧。
<経済復興の状況
総合的に判断して、被災地の経済は震災に伴う大きな落ち込みから全体としては緩やかに回復しつつあるものの、業種、分野によっては依然として厳しい状況。

住宅対策

公営住宅の確保等
約3万9千戸の低廉で良質の公営住宅の確保が図られるよう公的住宅供給計画の中で見直し。
被災者の希望地に近い場所に住宅を確保するべく努力。
公営住宅家賃負担の軽減
低所得被災者に対して国の支援により公営住宅家賃を引き下げ。
(神戸市の40m2の公営住宅の場合、所得 100万円以下の夫婦世帯で家賃6,000円程度)
恒久住宅への円滑な移転の支援等
相談体制の充実。
引越しに必要な費用に充てるため、生活福祉資金貸付制度の充実・活用。

生活支援対策

きめ細かい施策の展開
社会福祉分野の諸制度を活用した、被災地における特別養護老人ホームの整備、心のケアセンター設置等。
地元地方公共団体が作成した生活再建支援プランを支援
恒久住宅へ移転する高齢者世帯等の自立支援対策
高齢者や要援護者のいる低所得の被災世帯に対する給付。
(月額1万5千円から2万5千円を5年間支給)
兵庫県が実施している生活復興のために必要な資金貸付の限度額引き上げ。
基金の積み増しに係る地方債利子に対する交付税措置。

産業復興対策

  • ○金融上の支援措置、税制上の特例措置、民活法等の活用による産業基盤整備の支援措置、工場等制限法の運用緩和をはじめとする各種規制緩和措置など、種々の支援策を実施。

予算措置

  • ○平成8年度までに、国費で総額3兆 9,600億円に上る経費を確保。平成9年度予算においても様々な復興関係経費を計上。

今後とも、復興に向けての取組みに対し、地元地方公共団体等と緊密な連携を図りながら、全力を挙げて支援。

5.近年に発生した主な災害の復興状況(第5章)

雲仙岳噴火災害

  • ○噴火活動が沈静化し、災害応急対策がほぼ終了していることから,平成8年6月地元の災害対策本部及び政府の非常災害対策本部を廃止。
  • ○政府は、土石流等の二次的な災害が今後も発生する可能性があること等を踏まえ,雲仙岳災害復興関係省庁連絡会を設置し,密接な連携の下に地域の安全を確保しつつ復興対策を推進。

北海道南西沖地震災害

  • ○復旧・復興対策は順調に進捗していることから、平成8年3月、政府の非常災害対策本部を廃止。
  • ○政府は、引き続き、実施中の防潮堤の建設、まちづくりに関連する復興事業等の円滑な推進を図り、被災地域の振興を支援。

6.防災知識の普及方策及び防災とボランティアについて

防災知識の普及方策

  • ○災害による被害を軽減するため、防災広報等による防災知識の普及を推進することが重要。国土庁では、各地域での防災知識普及の実態を把握し今後の施策に活かすため、都道府県及び政令指定都市(計59地方公共団体)における防災知識の普及方策について平成9年2月アンケート調査を実施。
アンケート結果
防災知識の普及に当たって59団体全てが震災に重点。風水害も80%の団体が重視。
現在、重点を置いている普及方策は、パンフレット・小冊子等の作成・配付、講習会・研修会の実施等。
今後、講習会・研修会、パンフレット等に重点を置きたいという団体が多い。一方でマルチメディアに代表される新たなメディアの可能性も指摘。
今後の課題
災害弱者へのきめ細かい防災広報、防災ボランティア活動に関する広報、新しい広報手段の開発・活用等が今後の課題。

防災とボランティア

  • ○我が国の災害対策においては、柔軟かつ機動的なボランティアの役割が不可欠。
  • ○阪神・淡路大震災、ナホトカ重油流出事故においても、ボランティアが活躍。
  • ○ボランティアの活動環境の整備の推進、「防災とボランティア週間」における普及啓発活動の実施。
  • ○取り組むべき課題としては、多数のボランティアをまとめるコーディネーターの不足、行政とボランティア団体との連携体制の整備等。

7.国際防災協力の推進

  • ○世界各国が国際協調行動を通じ自然災害による被害の軽減に取り組むための活動を推進。特に、災害の状況が似ている近隣諸国との地域レベルにおける国際協力が重要。
アジア防災専門家会議>(平成8年10月・東京)
  • アジア防災政策会議(平成7年12月・神戸)を受けて開催。
  • アジア地域を中心とする各国政府の防災担当部局の局長クラスが参加。
  • 「アジア地域における防災センター機能を有するシステムの創設」について検討。
第1回日米地震シンポジウム>(平成8年9月・ワシントン)
  • 地震防災に関する日米間の情報交換の重要性を確認。
  • 平成9年に第2回を日本で開催すること、また、その後、引き続き日米間の協力関係を強化していくため、「日米地震防災政策会議」を設置すること等について合意。

連絡先:
国土庁防災局防災調整課  金子、森
TEL 03(3593)3311 内線 7251,7253
e-mail:boucho@nla.go.jp

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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