令和元年版 防災白書|第1部 第1章 第2節 2-6 防災におけるICTの活用


2-6 防災におけるICTの活用

近年の災害においては、特に平成28年(2016年)熊本地震に見られるように、被災者が避難所に滞在せず、車中泊等をしていた例が多く見受けられた。これらの人々の動向をはじめ、避難所における被災者のニーズや物資の配送状況等、情報の把握が困難になる場合がある。このような課題を解決するためには、平常時から国や地方公共団体、民間企業・団体等による官民連携による円滑な情報の共有化を行い、災害時に迅速に対応することが必要である。

このため、内閣府では、情報の共有を図るために効果的な手段と考えられる情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)の活用、また、関係機関間における情報共有の方法や期間等のルール及びこれを通じた情報のやりとり(以下「災害情報ハブ」(図表2-6-1)という。)を推進するため、平成29年度から中央防災会議防災対策実行会議災害対策標準化推進ワーキンググループの下に、「国と地方・民間の『災害情報ハブ』推進チーム」を設置し、検討を進めている(参照:https://www.bousai.go.jp/kaigirep/saigaijyouhouhub/index.html)。

図表2-6-1 「災害情報ハブ」のイメージ図
図表2-6-1 「災害情報ハブ」のイメージ図

平成30年度は、前年度に引き続き、災害対応にあたる国・地方公共団体・民間事業者等が共有できる情報の更なる拡大を図るため、関係者との調整を継続して行うとともに、ビッグデータの活用による被災者の避難動向把握や、衛星データの災害対応への活用方策の検討を行った。また、ISUT(Information Support Team)を都道府県の災害対策本部等に派遣し、府省庁連携防災情報共有システム(SIP4D)を活用して、災害対応に当たる地方公共団体や民間団体等の関係機関の状況把握を支援する取組を試行的に開始した。

災害現場では、被害状況や避難所の情報等、時々刻々と変化し事前にデータで共有する体制が整えられないもの(動的な情報)が存在する。災害対応者の適確な意思決定には、これら情報も地図上に重ね合わせ、状況を体系的に把握することが大変重要であり、ISUTがそのような情報を収集・整理・地図化し、関係機関へ共有することで、災害対応者の迅速かつ適確な意思決定を支援することが可能となる。

ISUTはこれまで、平成30年6月18日の大阪府北部を震源とする地震(図表2-6-2)、平成30年7月豪雨、平成30年北海道胆振東部地震と、3度にわたり災害対応を行ってきた。特に、平成30年7月豪雨においては、特別警報が発表された翌日の7月7日から8月9日にかけて広島県庁で活動し、SIP4Dを活用して情報の収集・整理を支援するとともに、作成した地図を用いて県幹部や実働機関、他県からの応援職員への状況説明等により災害対応で活用し、ISUTの有効性について一定の評価を得ることができた。

図表2-6-2 大阪府北部を震源とする地震でISUTが作成した地図の例(入浴支援検討用地図)
図表2-6-2 大阪府北部を震源とする地震でISUTが作成した地図の例(入浴支援検討用地図)

一方で、必要なデータを手作業で加工する必要が生じたりするなど、情報集約や整理に時間がかかり地方公共団体をはじめとした関係機関への地図情報の共有が円滑に進まないという課題があった。このため、平成30年度末には、全国の都道府県及び指定都市に対して、ISUTの活用に係る説明会を実施し、ISUTから提供可能な情報やISUTに提供してほしい情報等について説明するとともに、発災に備えて平時からのデータ整備の重要性について理解を求めた。

ISUTは、平成31年度から本格的に全国運用を開始する。今後はより迅速な地図情報の作成・提供に向けて、データの入手・入力作業を極力自動化する仕組みを検討するなどISUTのより効果的な運用を図っていくとともに、関係者へ共有可能な情報の拡充に向けて、関係機関との調整を継続していく。


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内閣府政策統括官(防災担当)

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