特集 気象災害の脅威~九州北部豪雨災害等を中心に~
近年、世界中で大規模な気象災害が頻発している。平成29年(2017年)も、世界各地や日本において気象災害が発生し、暴風雨や洪水などによる水災害の被害は非常に大きいものとなっている。同年8月にインドを中心とした洪水や土砂崩れで1,200人以上が命を落とし、同じく8月に西アフリカ(シエラレオネ共和国)で洪水や土砂崩れ、地すべりにより900人以上の死者・行方不明者を出すなどの災害が発生している(附属資料26(附-42頁)参照)。我が国でも同年7月に発生した九州北部豪雨により、多くの人的・物的損害が発生した。
世界気象機関(WMO)は、2017年は地球温暖化の進行に伴って世界各地で気象災害が多発し、経済損失は過去最高の3,200億ドル(約34兆円)になったとの試算公表を行った。うち、損失の約8割(約2,600億ドル以上)は大型ハリケーン「ハーヴィー」、「イルマ」、「マリア」等による米国の被害額と推計されている。
地球温暖化による継続的な気候変動は、気象現象にも大きな影響を与えており、この方向性は今後も長期的に続くと考えられている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)によれば、将来温室効果ガスの排出量がどのようなシナリオにおいても、21世紀末に向けて、世界の平均気温は上昇し、気候変動の影響のリスクが高くなると予測されている。
このため、平成30年版防災白書の「特集」では、近年多発する日本の気象災害を中心に、まず、改めて現在の我が国を取り巻く気候変動の状況について理解を深め(第1章)、そのうえで、特に2017年に大きな損害をもたらした九州北部豪雨による気象災害の被害状況や政府等の応急対応、施策等について説明する(第2章)。これらを踏まえ、日本の気象災害の脅威に対するこれまでの政府の取組等を概観し、今後の取組について展望したい(第3章)。