平成29年版 防災白書|第3部 第1章 1 災害一般共通事項


第1章 科学技術の研究

1 災害一般共通事項

(1)総合科学技術・イノベーション会議による防災科学技術研究の推進

総合科学技術・イノベーション会議においては、第5期科学技術基本計画及び科学技術イノベーション総合戦略等に基づき、Society 5.0実現に向け、防災・減災機能強化のための科学技術研究、危機管理技術等の研究開発の推進を図る。

(2)戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

総合科学技術・イノベーション会議においては、府省・分野横断の科学技術イノベーションを実現するため、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」において、その対象課題の一つとして「レジリエントな防災・減災機能の強化」を設置している。自然災害の激化とそれを受ける社会の脆弱化、東日本大震災を経て芽生えたレジリエンス(被害を最小限に留めるとともに被害からいち早く立ち直り元の生活に戻らせる)の考え方を踏まえ、災害予測・予防・対応と情報共有の高度化を図る最新技術の開発によって災害情報の共有化を進め、国、自治体、企業、国民の防災・減災の実践力向上を果たすことを目標とし、研究開発活動を推進する。

29年度予算額
科学技術イノベーション創造推進費50,000百万円の内数
28年度予算額
科学技術イノベーション創造推進費50,000百万円の内数
(3)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)

総合科学技術・イノベーション会議においては、将来の経済社会・産業のあり方に大きな変革をもたらすハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を推進する「革新的研究開発推進プログラム」において実施する研究開発プログラムの一つとして、極限災害環境に対応が可能な遠隔自律ロボットの実現を目指す「タフ・ロボティクス・チャレンジ」を推進する。

29年度予算額
平成25年度補正予算で措置された革新的新技術研究開発基金55,000百万円の内数
28年度予算額
平成25年度補正予算で措置された革新的新技術研究開発基金55,000百万円の内数
(4)防災リモートセンシング技術の研究開発

国立研究開発法人情報通信研究機構においては、航空機等からの先端リモートセンシング技術の高性能化を進める。

(5)災害情報通信システムの研究開発等

国立研究開発法人情報通信研究機構においては、災害予測や災害状況の把握に資する、都市上空等の雨、風向・風速、水蒸気等を精密に計測し、ネットワーク上で短時間に処理・配信するシステムの研究開発を行う。

(6)耐災害ICTに関する研究成果の展開等

国立研究開発法人情報通信研究機構においては、東日本大震災の被災地である仙台に産学官連携の研究開発拠点「耐災害ICT研究センター」を設置し(平成24年4月)、災害対応に資する耐災害ICTの研究開発を推進してきた。平成28年熊本地震では、研究成果である無線システムにより被災地の情報通信ネットワーク環境を構築するとともに、被害状況の把握手段として対災害SNS情報分析システム「DISAANA」の利活用を推進し、これらの情報を一まとめにすることで、よりコンパクトに被災報告を要約して提示する災害状況要約システム「D-SUMM」を平成28年10月に公開した。また自治体の防災訓練等においてもこれらのシステムの実証を実施した。引き続き耐災害ICTの研究開発と社会実装を促進する。

(7)災害時の消防力・消防活動能力向上に係る研究開発

消防庁消防研究センターにおいては、南海トラフ巨大地震、首都直下地震によって発生が危惧される市街地における大規模延焼火災発生に備え、市街地火災延焼シミュレーションの高度化、(火災)被害の拡大要因である火災旋風・飛火の現象の解明、住民の避難誘導や消火活動への活用等に関する研究開発を行う。また、災害時の消防活動能力を向上させるために、ガレキが堆積している地域へ侵入可能な消防車両の開発を行う。併せて、広島市土砂災害等の教訓を踏まえ、UAVなど上空からの画像情報を活用した捜索救助活動、乱雑に堆積したガレキ等を取り除く手法等に関する研究開発を行う。

29年度予算額
30百万円
28年度予算額
33
差引増△減
△3
(8)消防防災科学技術研究推進制度(競争的資金制度)の促進

消防庁においては、消防防災科学技術研究推進制度(競争的資金制度)により、火災等災害時において消防防災活動を行う消防本部等のニーズ等が反映された研究開発課題や、「科学技術イノベーション総合戦略2016」(平成28年5月24日閣議決定)等の政府方針に示された目標達成に資する研究開発課題に重点を置き、消防本部が参画した産学官連携による研究開発を推進する。

29年度予算額
126百万円
28年度予算額
128
差引増△減
△2
(9)災害対策のための消防ロボットの研究開発

消防庁消防研究センターにおいては、エネルギー・産業基盤災害において、G空間×ICTを活用した自律や協調連携技術の導入により、人が近づけない現場で接近し、情報収集や放水を行うための消防ロボットを研究開発する。

29年度予算額
347百万円
28年度予算額
259
差引増△減
88
(10)衛星等による自然災害観測・監視技術

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構においては、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)を運用し、国内外の防災機関に大規模災害における被災地の観測画像の提供を行う等、災害状況の把握に貢献する。

29年度予算額
運営費交付金111,286百万円の内数 等
28年度予算額
運営費交付金105,343百万円の内数 等
(11)災害をリアルタイムで観測・予測するための研究開発

国立研究開発法人防災科学技術研究所においては、今後発生が懸念される首都直下地震をはじめとする内陸部を震源とする地震、南海トラフや日本海溝等における海溝型巨大地震及びその余震、火山災害による被害の軽減に向け、海陸の基盤的地震観測網等を活用した研究開発を行う。

(現状)地震・火山噴火災害の発生メカニズムを解明するために、各種の観測・監視システムの開発・運用・拡充を実施してきた。また観測データとモデルを組み合わせることによって、災害を高精度に予測するための技術開発を行ってきた。

(目標)地震・火山・津波災害に関しては、各観測システムの安定的運用を継続する。また、海陸の基盤的地震観測網のデータ等を活用した地震動・津波即時予測研究等に加え、火山観測網やリモートセンシング技術等を活用した火山活動や噴火現象の把握及び火山災害のリスクコミュニケーションの在り方等の研究を実施する。

29年度予算額
運営費交付金7,100百万円の内数
28年度予算額
運営費交付金7,021百万円の内数
(12)災害リスクの低減に向けた基盤的研究開発の推進

国立研究開発法人防災科学技術研究所においては、各種自然災害のハザード・リスク、現在のレジリエンスの状態を評価するとともに、各種災害情報を各セクター間で共有・利活用することで連携・協働し、予防力・対応力・回復力を総合的に強化する災害対策・技術について研究開発を行い、社会全体への浸透を目指す。特に風水害、土砂災害、雪氷災害分野においては、ゲリラ豪雨等の予測技術開発やハザード評価技術等の研究開発を行い、ステークホルダーと協働した取組を通じて成果の社会実装を図る。

(現状)自然災害による被害を軽減するため、それらの発生メカニズムの解明を進め、より高精度に観測・予測する技術の開発を行うとともに、自然災害に対するハザード・リスク評価に関する研究開発及び災害に関するリスク情報を利活用するための研究開発を実施した。特に、全国地震動予測地図の改訂、官民協働クラウドシステムの開発等を実施した。

(目標)先端的なマルチセンシング技術と数値シミュレーション技術を活用した気象災害の早期検知技術等の研究開発とともに、自然災害に対するハザード・リスク評価手法を高度化する。リアルタイムで災害の状況を推定・把握するシステムを開発する。災害情報を共有化するための技術の高度化及び標準化の研究開発を行う。災害リスク情報に基づく災害対策・技術の高度化及び標準化の研究開発を行う。

29年度予算額
運営費交付金7,100百万円の内数
28年度予算額
運営費交付金7,021百万円の内数
(13)農作物、農業用施設等の災害防止等に関する研究

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構においては、耐冷性・耐寒性・耐湿性・高温耐性品種の育成や、作物の気象災害の防止技術に関する研究、農村地域の強靱化に資する防災・減災技術の開発に関する研究を行う。

(14)漁港・海岸及び漁村における防災技術の研究

国立研究開発法人水産研究・教育機構等においては、漁村地域の防災機能を強化するために、大規模な地震・津波に耐える漁港施設・海岸保全施設の研究等を行う。

(15)港湾・海岸及び空港における防災技術の研究

国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所においては、既往の災害で顕在化した技術的な課題への取り組みを継続しつつ、沿岸域における災害の軽減と復旧に関する研究開発課題に取り組む。

(16)災害等緊急撮影に関する研究

国土地理院においては、関係機関の迅速な災害対応に資することを目的に、デジタル航空カメラに加えて、火山観測に特に有効なSAR(レーダ画像)等による地震、火山噴火、水害等の被災状況の把握、迅速な情報提供を行うための手法の検討を行う。

29年度予算額
112百万円
28年度予算額
99
差引増△減
13
(17)寒冷地における沿岸防災に関する研究

国立研究開発法人土木研究所においては、寒冷地における沿岸域の安全確保のため、流氷来襲地域における冬期の津波防災に関する研究及び沿岸施設の安全性向上に関する研究を行う。

(18)気象・水象に関する研究

気象庁においては、気象研究所を中心に気象業務に関する技術の基礎及びその応用に関する研究を推進する。特に気象観測・予報については、集中豪雨等の監視・予測技術に関する研究等を行う。また、地球温暖化対策に資するため、数値モデルの改良を行う。

29年度予算額
910百万円
28年度予算額
907
差引増△減
3

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