平成29年版 防災白書|第1部 第2章 第3節 3-4 国際的な連携強化


3-4 国際的な連携強化

オフサイトの原子力防災に関しては、国際原子力機関(IAEA)等の国際機関や諸外国においても様々な取組が行われており、我が国の原子力防災の水準の向上のためにも、その先進的な知見を取り入れて行くことが必要である。

そのため、各国の原子力防災を担当する部局と連携体制を強化して定期的な意見交換を行うとともに、多国間訓練に参加する等により、原子力防災に関する国際的な知見・経験の共有等を推進することや、オフサイトの原子力防災に関するIAEAの基準等や主要な原子力発電利用国の制度・運用の調査等を行った。

(1)原子力防災体制に係る協力

<1> 米国との協力

平成24年に設置された「民生用原子力協力に関する日米二国間委員会」の下に設置された、「緊急事態管理ワーキンググループ(EMWG:Emergency Management Working Group)」の枠組みに基づき、米国エネルギー省(DOE:Department of Energy)や米国連邦緊急事態管理庁(FEMA:Federal Emergency Management Agency)、米国原子力規制委員会(NRC:Nuclear Regulatory Commission)等の米国の関係機関と定期的な意見交換や訓練の相互招待を通じて原子力防災体制に係る連携を深めている。

具体的には、平成28年度、本枠組みの下で2回の意見交換と2回の訓練等相互招待を行い、我が国の東京電力福島第一原子力発電所事故等、日米の過去の原子力災害経験や教訓、原子力防災組織体制、人材育成・研修等について意見交換を行った。まず平成28年9月に米国カリフォルニア州で開催された原子力緊急時対応に係る上級者向け教育プログラムに参加し、原子力防災の教育・研修に関する意見交換を行った。また、同年11月には日本の北海道電力株式会社泊発電所(以下、「北海道電力泊発電所」という。)を対象とし、原子力災害の対応体制を検証することを目的として行った原子力総合防災訓練に米国関係者を招待し、訓練視察及び意見交換を行った。

また、日米間の国際協力強化を目的に、同年7月には、丸川内閣府特命担当大臣(原子力防災)(当時)がFEMA、NRC及びDOEを訪問し、避難計画の実効性向上のための取組や検査制度等について意見交換を行った。

丸川内閣府特命担当大臣(原子力防災)(当時)とフューゲートFEMA長官(当時)の対談の様子
丸川内閣府特命担当大臣(原子力防災)(当時)とフューゲートFEMA長官(当時)の対談の様子

<2> 仏国との協力

平成27年5月5日に締結した「日本国内閣府大臣(原子力防災担当)とフランス共和国内務省(国民安全・危機管理総局)との間の原子力事故に係る緊急事態管理分野での協力に関する覚書」に基づき、フランス共和国内務省(国民安全・危機管理総局)等の仏国の関係機関との意見交換や訓練の相互招待を通じて原子力防災体制の連携を深めている。具体的には、平成28年5月に井上内閣府副大臣(当時)による内務省関係者との原子力防災に係る意見交換を行い、また同年11月に、同国ボルドー地方ジロンド県で開催された原子力防災訓練を視察し、当該訓練における訓練の体制やシナリオ作成等について知見を共有した。

井上内閣府副大臣(当時)訪仏時の様子
井上内閣府副大臣(当時)訪仏時の様子

<3> その他国際協力

その他IAEAや経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等の国際機関や英国、仏国、中国、韓国、台湾等についても、意見交換や訓練視察の相互招待を行ってきた。

平成28年11月に日本の北海道電力泊発電所を対象とし、原子力災害の対応体制を検証することを目的として行った原子力総合防災訓練では、国際機関や諸外国の原子力防災関係機関から17名の視察者を受け入れた。本視察団は、事前説明会や意見交換会を含み3日間にわたり現地に滞在し、住民避難の様子や内閣総理大臣が原子力緊急事態宣言を行う様子を視察した。

(2)多国間訓練への参加

我が国は、平成28年11月に、OECD/NEAが主催する国際的な原子力防災訓練であるINEX5(アイネックス ファイブ)を実施した。

INEXは、OECD/NEA主催で行う国際的原子力防災の「質問主導型」机上訓練であり、第6回目となる今回のINEX5は、複合災害で通信機能を喪失した状態での意思決定のプロセスに焦点を当て、我が国では、海外への情報発信及び国際緊急援助の受入れの2テーマを中心に実施された。

(3)国際ワークショップの開催

平成28年11月に福島県において、OECD/NEA及び内閣府が共催で事故後の食品安全科学に関する国際ワークショップを開催した。

同ワークショップでは、福島の現状や生産者の取組のほか、県内における食品の管理状況や消費者の見解等、現場の貴重な経験を世界に発信した。また、世界の科学者から、世界の基準やチェルノブイリ等での対応と比較し、福島の生産者、自治体、国等が科学的見地から合理的に行動していることが、改めて認められた。これらを踏まえ、今後、OECDをはじめ国際機関において、食品の放射性物質に関する安全の考え方の議論が進められていくことが確認された。

また、同ワークショップでは、福島県立相馬農業高等学校の生徒が考える福島の農業の未来像を発信した。その内容はOECD/NEAが取りまとめる報告書に掲載されるほか、OECD/NEAがフランスで開催する学生との交流イベントに招待されるなど、将来に繋がるものとなった。

伊藤内閣府副大臣によるワークショップ開会の挨拶の様子
伊藤内閣府副大臣によるワークショップ開会の挨拶の様子
相馬農業高校生との意見交換
相馬農業高校生との意見交換
(4)国際基準の調査等

オフサイトの原子力防災に関するIAEAの基準等や主要な原子力発電利用国の制度・運用の調査等を実施するため、平成27年12月に新設されたIAEAの原子力防災に係る基準委員会(EPReSC:Emergency Preparedness and Response Standards Committee)に出席し、IAEA及びその加盟国の有識者との議論に参加した。


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