3-2 ゼリー状安定ヨウ素剤の備蓄・配布、原子力災害を想定した避難時間推計ガイダンス等
(1)ゼリー状安定ヨウ素剤の備蓄・配布
安定ヨウ素剤の丸剤は、嚥下機能が発達していない乳幼児(3歳未満)には対応しておらず、緊急時には薬剤師等が安定ヨウ素の粉末剤をシロップに溶いて服用させることになっており、事前配布等ができないことが大きな課題であった。
平成28年3月に丸剤の製造事業者が、有効成分(ヨウ化カリウム)を事前にゼリーに溶いた剤形でパッケージした商品を開発したことを受け、PAZ・UPZ圏内の地方公共団体は内閣府と連携して備蓄を進めた。具体的には、平成28年9月から平成29年3月に、地方公共団体が国の財政支援の下、十分に配布が行えるようPAZ・UPZ圏内の乳幼児人口の約1.5倍のゼリー状安定ヨウ素剤を購入・備蓄して、準備が整い次第事前配布を行った。
(2)原子力災害を想定した避難時間推計ガイダンス
避難計画の更なる充実化を目的として、これまでの地方公共団体における避難時間推計(ETE:Evacuation Time Estimation )の実施事例や、原子力災害対策指針、ETEの国際的な動向等を踏まえ、内閣府は平成28年4月に原子力災害を想定した避難時間推計ガイダンスを整備した(図表2-3-4)。
同ガイダンスは、地方公共団体の実務担当者向けに、ETEを実施する際に必要となる基本的な考え方と技術的な手順として主に以下の内容について解説するものである。
<1>ETEの活用方法を踏まえた実施目的の設定
「避難計画の実効性向上」、「緊急時における対応への活用」、「住民への避難計画の啓発」の視点におけるETEの活用策
<2>実施目的に基づくシナリオ設定の考え方
避難計画や各種施策(避難の運用、避難経路の設定、避難手段の検討、交通施策、避難退域時検査場所や避難先の運用等)の効果を適切に評価するために必要となるシナリオ設定の考え方
<3>シナリオに応じた入力データ整備
必要となる入力データの入手先や、現実的かつ実効性のあるシナリオに資するための入力データ整備の留意点
<4>ETEの評価・活用
避難計画や各種施策を適切に評価するためのETE実施結果の整理方法や、実施目的に応じたETE実施結果の評価・活用方法
(3)オフサイトセンターの指定
原子力災害対策特別措置法第12条第1項に基づき、内閣総理大臣は、原子力事業所ごとに、緊急事態応急対策等拠点施設(オフサイトセンター)を指定することとなっている。
オフサイトセンターの満たすべき要件は、原子力災害対策特別措置法に基づく緊急事態応急対策等拠点施設等に関する内閣府令で定められているが、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓等を踏まえ、平成24年9月に、実用発電用原子炉に係るオフサイトセンターは、その立地場所について、基本的に、5~30km圏内(緊急防護措置を準備する地域(UPZ)域内)とする等の改正を行ったところである。
この改正を踏まえて、平成28年7月、東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所並びに中部電力浜岡原子力発電所のオフサイトセンターがそれぞれ移転することに伴い、同法第12条の規定に基づき、これらの施設を新たにオフサイトセンターに指定した。
また、平成28年7月に福島県南相馬市及び楢葉町において、丸川内閣府特命担当大臣(原子力防災)(当時)、福島県知事、国会議員、地元首長等の出席の下、東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所のオフサイトセンターの開所式が行われた。
(4)原子力災害対策の充実に向けて
平成28年3月に開催された原子力関係閣僚会議において、原子力政策に関し、地域の防災を担う地方公共団体の声に応えるために、全国知事会からの要望に対する対応として「原子力災害対策の充実に向けた考え方」をとりまとめた。この考え方を踏まえ、原子力災害対策の充実について、政府一体となって対応するため、平成28年4月に原子力災害対策関係府省会議を開催し、同会議の下に実動部隊の協力(第1分科会)、民間事業者の協力(第2分科会)、拡散計算も含めた情報提供の在り方(第3分科会)の3つのテーマについて分科会を設置することを決定した。各分科会においては、地方公共団体の意見を聴きながら、専門的かつ実務的な検討を行っている。