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平成29年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-6 リスクファイナンスによる事前の備え


1-6 リスクファイナンスによる事前の備え

災害時には人命の保護が図られることが最優先であることに加え、被災地の迅速かつ円滑な復旧・復興のため、経済被害を早期に回復することも併せて重要である。災害は事業者経営に深刻な影響を及ぼすことになるため、平常時から適切な備えを行い事業の継続性を確保することは、速やかな地域経済の回復にとって不可欠なものである。また、個人(被災者)が生活を再建する上で「住まい」の確保が重要であり、住宅再建の困難さから再起意欲や将来への希望をなくすなどの課題もある。こうした被災による経済的損失を速やかに回復するためには、保険・共済などリスクファイナンスを活用した備えが大切である。

(1)事業者におけるリスクファイナンス

事業者における防災対策「(災害)リスクマネジメント」については、BCPの策定や施設の耐震化等により、リスク自体を減らす「(災害)リスクコントロール」への取組と、保険や資金調達枠の確保等により、リスクを共有(移転)ないしは適切に保有することで経営への影響を緩和する「(災害)リスクファイナンス」の取組とに分けられる(図表1-1-8)。現在の日本においては、後者について十分な議論やその考え方が普及しているとは言えなかった。

こうした状況を踏まえ、「リスクファイナンス」についての現状と課題について整理するとともに、我が国の事業者における自然災害に対するリスク耐性を高めるため、平成28年9月から学識者・実務者・関係府省庁をメンバーとする「激甚化する大規模自然災害に係るリスクファイナンス検討会」を開催し、平成29年3月に報告書をとりまとめた。

同検討会では、事業者におけるリスクファイナンスに対する取組とリスクコントロールに対する取組との相乗効果について期待しながらも、実際には、リスクコントロールの取組に比べ、リスクファイナンスの取組が必ずしも進んでいないこと、また、リスク保有者(事業者)と各サービス提供者(元受保険会社等)との間でリスクへの意識にギャップが生じており、民間による自律的な普及促進はなされにくい現状を確認した。その上で、「多様な主体」が本業を通じて、関係事業者のリスクマネジメントに資するサービス等を行う必要性がある旨も指摘された。そして、継続的に取組を推進するため、多様な主体の行動の指針となる原則を作成するとともに、国や地方公共団体等の公的機関はその枠組みづくりを支援すべきである旨の提言がなされた。

図表1-1-8 自然災害のリスクマネジメントの考え方
図表1-1-8 自然災害のリスクマネジメントの考え方
(2)個人に対する保険・共済の加入促進

リスクファイナンスの概念の一つとして、自然災害による損害を補償する保険や共済の活用が望まれている。

災害により、住宅等に大きな被害を受けた被災者の生活再建を円滑に進めるために、保険・共済が有効であるが、火災補償には、約8割の持家世帯が加入していることに比べ、水災補償や地震補償のある保険・共済の加入率は低い状況にある(図表1-1-9)。

このため、内閣府では、住宅再建等における保険・共済の役割や、保険・共済の普及にあたっての課題や今後の取組の在り方について論点整理を行うため、平成28年12月より「保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会」を開催し、関係省庁や関係団体の協力を得ながら平成29年3月に報告書をとりまとめた。同報告書において、保険・共済の加入を促進させるため必要な今後の方向性として、代理店チャネルを通じた普及啓発の取組方法、既存の不動産情報システムを活用してハザードマップを提示するなどリスク情報の提供手法等が提示された。また、保険・共済の仕組み等に関する中長期的課題として、減災対策や公的支援との連携、財政負担との関係、加入方式毎のメリット・デメリット等が示された。

また、関係省庁・関係団体の協力の下、内閣府において保険・共済の加入促進に際しての情報提供のあり方等について整理し、一般向けのパンフレットを作成した。今後、これらを踏まえ自然災害に対する保険・共済への加入を一層促進することとしている。

図表1-1-9 持家世帯の保険・共済の加入件数・割合(建物のみ)
図表1-1-9 持家世帯の保険・共済の加入件数・割合(建物のみ)
一般向けパンフレット「保険・共済加入のすすめ」
一般向けパンフレット「保険・共済加入のすすめ」

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