平成29年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-3 津波防災に関する取組


1-3 津波防災に関する取組

津波の発生に対しては、人々が迅速かつ適切な行動をとることにより、人命に対する被害を相当程度軽減することができることから、津波及び津波による被害の特性、津波に備える必要性等について、理解と関心を深めることが重要である。津波による未曽有の被害がもたらされた東日本大震災の経験を踏まえ制定された「津波対策の推進に関する法律」においては、ソフト面・ハード面における津波対策の努力義務について規定されているほか、11月5日を「津波防災の日」として定め、国及び地方公共団体は、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとされている。さらに、平成27年12月には国連総会において、我が国をはじめ、142ヶ国の共同提案により、11月5日を「世界津波の日」として制定する決議が満場一致で採択された。平成29年3月には「津波対策の推進に関する法律」が改正され、「津波防災の日」である11月5日が「世界津波の日」とされたことも踏まえ、津波対策に関する国際協力の推進にも資するよう配慮する旨の規定が追加された。こうした背景も受け、内閣府や関係省庁、地方公共団体等においては、津波防災の意識向上に資する取組を各地で行っている。

(1)津波避難訓練

平成28年度は、全国各地で、地震・津波防災訓練が、国(9省庁)、地方公共団体(167団体)、民間企業(120団体)等の主催で実施され、約65万人が参加した。

そのうち、内閣府では、地方公共団体と連携し、住民参加型の訓練を全国10箇所(北海道羽幌町、秋田県にかほ市、神奈川県茅ケ崎市、新潟県佐渡市、三重県松阪市、和歌山県広川町、広島県坂町、徳島県松茂町、高知県黒潮町及び福岡県芦屋町)で開催した。この訓練には、計約2万5,000人が参加し、地震発生時に我が身を守る訓練(シェイクアウト訓練)及び揺れが収まった後に最寄りの避難場所等へ避難する訓練(避難訓練)を行った。また、地域によっては、避難所開設、炊き出し、応急救護といった各種訓練等も併せて実施された。

津波避難タワーへの夜間避難訓練の様子(高知県黒潮町)
津波避難タワーへの夜間避難訓練の様子(高知県黒潮町)
保育園での避難訓練の様子(和歌山県広川町)
保育園での避難訓練の様子(和歌山県広川町)
地元高校生による防災学習(秋田県にかほ市)
地元高校生による防災学習(秋田県にかほ市)
シェイクアウト訓練(福岡県芦屋町)
シェイクアウト訓練(福岡県芦屋町)

また、世界各地(チリ・バルパライソ市、日本・宮崎県、インドネシア・アチェ州、日本・高知県、米国・ハワイ州)においても、関係府省庁、JICA、地方公共団体が協力した訓練を実施し、津波に関する経験・教訓をつないでいく「『世界津波の日』リレー津波防災訓練」を実施した。

(2)普及啓発活動

<1>「津波防災ひろめ隊」による普及啓発活動

「ふなっしー」や「くまモン」などのご当地キャラクターが結成した「津波防災ひろめ隊」が、平成28年度も普及啓発活動を実施した。全国の企業、自治体等における啓発ポスターの掲示、大手コンビニ・スーパーのお客様向けレジ・ディスプレイにおける表示、特設ホームページ「津波防災ひろめ隊サイト」による情報発信、映画館、商業施設モニターでの動画の上映など、全国各地でより多くの方に津波に対する適切な避難行動の認識が広がるよう、様々な媒体を活用して露出を図った。また、「津波防災ひろめ隊」メンバーは、「津波防災の日」啓発イベント(後述)に出演した。

平成28年度啓発ポスター
平成28年度啓発ポスター
平成28年度津波防災啓発ビジュアル
平成28年度津波防災啓発ビジュアル

<2>平成28年度「津波防災の日」啓発イベントの実施

国連で「世界津波の日」が制定されて初めての「津波防災の日」である平成28年11月5日に、「東日本大震災の教訓を未来へ~いのちを守る防災教育の挑戦」と題して東京都千代田区のイイノホール&カンファレンスセンターにて啓発イベントを実施した。本イベントは、東日本大震災時、小中学生が主体的な避難行動を実践し、多数の命が救われたことで知られる岩手県釜石市と、南海トラフ巨大地震の被災想定で最大津波高34mという厳しい数字を示されながらも「犠牲者ゼロ」を目指し、町を挙げて対策に取り組む高知県黒潮町の中学生による知見・取組発表、交流を通じ、東日本大震災の教訓の伝承や、津波に対する平時の取組、防災教育の大切さ等を広く訴えるために企画された。来場者に対するアンケートでは85.9%が「役に立った」、6.3%が「少し役に立った」と回答したほか、「学校において防災教育に一層取り組んでほしい」、「津波防災に対する意識が高まった」などの意見が寄せられた。当日の模様はインターネットでもライブ配信され、5,400件以上の視聴を獲得した。

発表を行う黒潮町大方中学校の生徒
発表を行う黒潮町大方中学校の生徒
釜石中学校の生徒
釜石中学校の生徒
トークセッションの模様
トークセッションの模様

<3>「世界津波の日フォーラム」の開催

平成28年11月5日、内閣官房(国土強靱化推進室)主催による「世界津波の日フォーラム」が開催された。本フォーラムは、国土強靱化施策の担い手となる関係府省庁や地方公共団体、さらには事業者や国民にも、国土強靱化が津波をはじめとした大規模災害などの対策として正しく理解されることを主眼に開催されたものである。

災害への備えは社会経済の持続的な成長に重要であること、防災・減災に関する日本の国際貢献活動が世界の成長に寄与していることなどが、講演者らによる講演を通じて、参加者と共有された。

「かたりすと平野啓子さんの語り」
「かたりすと平野啓子さんの語り」
「講演者による鼎談」
「講演者による鼎談」

<4>防災に関する国際会議の開催

また、海外においても、津波啓発に関する様々なイベントが開催され、津波防災の重要性が世界に発信された。特に、インドで開催された第7回アジア防災閣僚会議においては、「自然災害から尊い命を守るアジアの挑戦!~国土強靱化、海を渡る~」と題した世界津波の日特別セッションが開催され、二階自民党幹事長が、2004年のインド洋大津波や東日本大震災での経験に言及しつつ、長年に亘る国土強靱化の取組について講演を行った。

<5>「津波防災の日」「世界津波の日」に関連する様々な取組

上記以外にも、日本を含む世界30ヶ国から約360名の高校生が、高知県黒潮町に集い、自然災害に関して意見を交わした「世界津波の日 高校生サミット in 黒潮」(主催:高知県・高知県教育委員会・黒潮町・黒潮町教育委員会)、津波防災をはじめとする沿岸防災技術分野に顕著な功績を挙げた国内外の個人・団体を表彰する「濱口梧陵国際賞(国土交通大臣賞)」の創設(国土交通省)など、様々な取組が行われた。

濱口梧陵国際賞(授賞式)
濱口梧陵国際賞(授賞式)
コラム:防災意識向上に向けた啓発動画について

内閣府では、防災意識の向上や、学校現場における防災教育に活用可能な動画を制作し、防災に関する情報が集約されたポータルサイト「TEAM防災ジャパン」https://bosaijapan.jp/で順次公開している。小中学校の生徒に対する防災教育や自治体等職員(防災担当者)の研修用の教材として広く活用を期待している。

防災意識向上に向けた啓発動画のお知らせ
防災意識向上に向けた啓発動画のお知らせ

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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