2-4 支援物資輸送の取組
(1)プッシュ型物資支援
最大震度7の地震が熊本県益城町を中心に短期間に連続して発生したことを受け、平成28年4月16日未明、河野内閣府特命担当大臣(防災)(当時)と蒲島熊本県知事によるテレビ会議を実施し、蒲島熊本県知事から、物資供給について、マネジメントを含め、国で行なって欲しい旨の要請を受けた。この要請を踏まえ、4月16日午前5時に非常災害対策本部事務局に物資調達・輸送班を設置し、物資支援を実施した。
物資支援においては、まず、関係省庁が参集し一元的な調整を行い、被災地の要望を待たずして物資を調達・搬送するプッシュ型物資支援(以下「プッシュ型支援」という。)を初めて実施し(図表2-4-1)、4月17日から22日までの間に、食料約185万食、下着・マスク・トイレ関連用品等の多数の生活用品を供給した(図表2-4-2)。
4月23日からは、物資が現地の避難所に十分に行きわたったことを踏まえ、避難者の多様なニーズに応じて物資を調達・搬送するプル型物資支援(以下「プル型支援」という。)に切り替えた。今回、避難者のニーズ把握にタブレット端末等を活用し(図表2-4-4)、きめ細やかな支援を実現した。
熊本地震における物資支援では、「プッシュ型支援」と「プル型支援」をあわせて、5月6日までに食料約278万食等を供給した(図表2-4-2、図表2-4-3)。今回、東日本大震災等の過去の震災教訓を踏まえ、初めてプッシュ型支援を実施したが、当初対応として効果的であった。
なお、国と都道府県において、物資の要請・調達・輸送に関する情報共有をより円滑に行うためのシステムが平成28年12月より運用開始されている(図表2-4-5)。
(2)民間物資拠点の活用について
熊本地震では、国からの支援物資を受け入れ、各市町村の物資拠点や避難所への搬送を行うための県の物資拠点として位置付けられていた施設が被災し、使用できなかった。
このため、民間の物流事業者の協力の下、まずは佐賀県鳥栖市に、次いで福岡県久山町に所在する流通センターを活用し、物流事業者・自衛隊等の協力を得るなどの工夫により、市町村の物資拠点や避難所に搬送を行った(図表2-4-6)。
このように被災状況によっては、民間物流事業者が管理する物資拠点を輸送拠点として活用する可能性があることから、平成29年3月にはそれらの視点を踏まえた『広域物資拠点開設・運営ハンドブック』の見直しが行われた。
支援物資を受け入れるための都道府県や市町村の拠点の設置や運営等において、様々な課題があった。このため、平成28年10月、内閣府は南海トラフ地震や首都直下地震などの想定地域をはじめ、全国の地方公共団体における災害時の拠点の指定状況等について調査を行った。
ア)都道府県の広域物資輸送拠点の指定状況
- 都道府県の広域物資輸送拠点については、77%が指定(設置)済であり、9%は地震の課題等を踏まえ、民間施設の活用や置き場所等の見直しを行っている(指定を検討中)。
- 南海トラフ地震重点受援県(10県)及び首都直下地震1都3県は、全拠点を指定している。
イ)広域物資輸送拠点の運営
- 拠点の運営については、首都直下地震1都3県のうち67%が、民間事業者への運営を予定している。
ウ)広域物資輸送拠点の安全性
- 広域物資輸送拠点のうち全国で50%、南海トラフ地震重点受援県では47%の拠点について、耐震性や床強度の不足、大型トラックの進入、非常用電源の配備などについて不十分な状況であった。
エ)市区町村の地域内輸送拠点の指定状況
- 市区町村の地域内輸送拠点については、61%が指定済であり、11%は熊本地震の課題等を踏まえ何らかの見直しを行っている。
- このうち、南海トラフ地震重点受援県の市町村では79%、首都直下地震1都3県の市区町村では、73%が拠点の指定を行っている。
オ)市区町村の地域内輸送拠点の運営
- 拠点の運営については、多くの市区町村において、自主運営を行うこととしており、民間事業者への運営を予定している市区町村は、全国で7%に留まっている。
<用語解説>
広域物資輸送拠点:
国の調整によって供給する物資を被災都道府県が受け入れ、各市区町村が設置する地域内輸送拠点や避難所に向けて物資を送り出すための拠点。
南海トラフ地震重点受援県:
南海トラフ地震の被害想定(平成24年8月 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ)を基に、被災地内の警察・消防機関の勢力に比して甚大な被害が想定される10県(静岡県、愛知県、三重県、和歌山県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、大分県、宮崎県)。
首都直下地震1都3県:
首都直下地震により甚大な被害が想定される都県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)。