内閣府防災情報のページみんなで減災

内閣府ホーム > 内閣府の政策 > 防災情報のページ > 会議・検討会 > 防災白書 > 平成29年版 防災白書 > 平成29年版 防災白書|特集 第2章 2-2 避難生活及び自助・共助等の取組

平成29年版 防災白書|特集 第2章 2-2 避難生活及び自助・共助等の取組


2-2 避難生活及び自助・共助等の取組

(1)避難所の状況

内閣府は、平成28年4月17日に「避難所運営ガイドライン」、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」、「福祉避難所の管理・運営ガイドライン」の避難所運営に関する各種ガイドラインを公表し周知することにより、被災地方公共団体において適切に避難所運営が行われるよう促してきた。しかしながら、必ずしも適切な避難所運営が行われなかった側面も指摘された。

そのため、より円滑な避難所の運営に資するため、避難所運営ガイドライン等を補完する事例集等を作成することとし、平成29年1月から2月に関係団体、被災住民へのアンケート調査等を実施した(図表2-2-1)。また、熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援策検討ワーキンググループからは、避難所運営を支援するためのアドバイザー制度の創設等が提案された。

図表2-2-1 アンケートにおける主な意見(抜粋)
図表2-2-1 アンケートにおける主な意見(抜粋)
被災者が避難した熊本市役所1階ロビーの様子(平成28年4月29日)
被災者が避難した熊本市役所1階ロビーの様子(平成28年4月29日)
被災者が避難した益城町保健福祉センターのロビーの様子(平成28年4月29日)
被災者が避難した益城町保健福祉センターのロビーの様子(平成28年4月29日)
益城町保健福祉センターの廊下と部屋の中の様子(平成28年4月29日)
益城町保健福祉センターの廊下と部屋の中の様子(平成28年4月29日)
(2)個人ボランティア、NPO等の活動状況

熊本地震においては、行政や地域住民だけでは対応が困難な状況が見受けられた。これは、避難者の数が一時18万人以上に及び、最大855ヶ所の避難所が開設されるなど数が膨大であったことや、地方公共団体の職員や地域住民が必ずしも大きな被害が発生する災害への対応に、習熟していなかったことと考えられる。このため、個人ボランティア(後述)やNPO等の支援は被災者や被災地にとって大きな力となった。

この中でも、熊本において「熊本地震・支援団体 火の国会議(後述)」を核としたNPO等の支援が特筆される。同会議は、平成28年4月19日に体制が立ち上がったという迅速さ、行政との連携の下、NPO間で業務等の調整を図りながら大規模に支援したことなどの点において、行政とNPO等との連携としては我が国初の取組である。

この節では、個人ボランティア、NPO等の活動状況について概観し、今後のあり方を考察する。

<1>個人ボランティア

組織等に所属せず、個人の発意により被災地へ赴き、被災者の支援に当たる人々を、ここでは「個人ボランティア」という。この個人ボランティアの受け入れや業務の割り当て等は、被災地の社会福祉協議会が設置する災害ボランティアセンター(以下「災害VC」という。)が行う場合が多い。被災した17市町村の社会福祉協議会は、同年4月19日以降順次災害VCを設置し、個人ボランティアの受け入れ等を行った(図表2-2-2)。

一般に、発災直後は被災者が避難していることなどにより、被災者ニーズの調査は直ちには行えない。熊本においては発災直後には、余震の影響や、住民の生活復旧やボランティアの安全確保の優先、ニーズを超えるボランティア希望者の対応に対する懸念などもあり、災害VCによっては、ボランティア希望者の居住地で募集範囲を限定する措置(例:熊本県内、九州内など)も取られた。同年4月後半から5月にかけて徐々に被災者のニーズがわかるようになり、ボランティアによる居宅の片付けや瓦礫の撤去作業等が本格化した。しかし、5月連休中には道路混雑が懸念されたことから、県がホームページ上で道路混雑緩和への配慮を呼びかけるなどした。

一方、一部の災害VCでは、その事務能力を超えるボランティア希望者が駆け付けるのに対し、希望者が少ない災害VCもあった。このため、余剰のボランティアをボランティアが不足している災害VCへの紹介が行われた。また、5月連休明けには、現地対策本部が九州経済連合会等を通じて、企業向けにボランティア活動への参加を要請したほか、内閣府等の様々な団体からホームページ、ツイッター等を通じてボランティア参加を呼びかけた。

平成28年11月末時点では避難所が解消され、自宅が全壊又は半壊となった被災者の方々の応急仮設住宅やみなし仮設への引っ越しなども進んだことなどから、大勢のボランティアによる生活復旧支援活動は終息しつつあった。そのため、災害VCは土日のみの募集に変更、もしくは『生活復興支援VC』に改組されるなどし、災害対応のためのボランティア活動は、平成28年末頃から事実上見られなくなっている。

図表2-2-2 熊本地震における災害VCの設置状況
図表2-2-2 熊本地震における災害VCの設置状況
熊本市災害ボランティアセンターの様子
熊本市災害ボランティアセンターの様子

<2>ノウハウや専門性を活かした NPO等支援団体の取組

熊本地震では県内外から300以上のNPO等の支援団体が、行政だけでは対応が難しい避難所の生活環境改善や運営、炊き出し、在宅避難者・車中泊の避難者向けの支援や調査、義援物資の管理・輸送・配布、災害VCの運営支援など様々な活動を行った(図表2-2-3)。

図表2-2-3 NPO等の活動の例
図表2-2-3 NPO等の活動の例

<避難所アセスメント>

熊本地震では、避難所の数が多かったため、その実態がわからないことが課題であった。そのため、NPO等と現地対策本部、熊本県健康福祉部とが連携し、平成28年4月下旬段階で約400ヶ所以上あった避難所のうち、熊本県及び熊本市が実態を把握できていなかった118ヶ所の避難所を、複数のNPO等が手分けして巡回し、個々の避難所の実情を明らかにする「避難所アセスメント」を行った。このアセスメントを実施するため、県からNPO等に対し県の腕章の貸与、各市町村担当課への周知等の協力が行われた。NPO等が実施した避難所アセスメントは、トイレの衛生状態は保たれているか、生活スペースにおける土足禁止が徹底されているか、一人当たりの最低限のスペースが確保されているか、女性専用のスペースはあるかなど多岐に渡る項目について調査を行った。アセスメントの結果を踏まえ、避難所の改善点が提案された(図表2-2-4、図表2-2-5)。

避難所アセスメントは、避難所の全体像を把握し、その後の避難所の生活環境の改善につながったことから、大きな成果と言えよう。

避難所が解消された同年12月以降は、地域支え合いセンターとの連携を中心に、仮設住宅等への入居者に対するケアや、コミュニティづくりなど、よりきめの細かい被災者の生活再建に関する支援が期待されている。

図表2-2-4 NPOの活動例
図表2-2-4 NPOの活動例
図表2-2-5 NPOの活動例
図表2-2-5 NPOの活動例

<3>行政とNPO等支援団体や支援団体間の連携

ア.概要

熊本では、全国各地のNPO(以下「外部支援団体」という。)及び県内のNPO(以下「地元団体」という。)等が支援活動を展開した。こうした活動はそれぞれ自発性、独立性をもって行われるが、他方でそれぞれ自由に行われると、マスコミ報道の多い地域に支援が集中し、全く支援の手が入らない地域があるなど、支援に偏りが発生する。そのため、全体を俯瞰した支援活動の展開、団体間の情報共有、行政との連携などが必要となる。

熊本においては、日本全域と県域のそれぞれにおいて、NPO同士の連絡・情報共有や活動地域・業務内容の調整等の機能を担う団体(以下「中間支援組織」という。)が活躍した。これらの中間支援組織がNPO等間の情報共有会議やNPO等と行政との連携会議を開催することにより、外部支援団体、地元団体等が連携を図りながら活動することができた。

発災直後の緊急期以降、応急的な対応時期や復旧・復興期においても、外部支援団体が様々な災害において対応した経験を豊富に有することから、地元団体と協働し、その協働を通じて外部支援団体から地元団体へそのノウハウが伝えられることとなり、被災後の状況の変化にあわせ、徐々に地元主体の被災者支援に移行が行われた。

イ.NPOと行政との連携体制の構築

NPO等の全国域における中間支援組織である特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(Japan Voluntary Organizations Active in Disaster。以下「JVOAD」という。)が、支援団体間や行政との連絡調整機能を果たし、全体を俯瞰した被災地支援を実現するため、平成27年より活動を開始している(熊本地震当時はJVOADは準備会としての位置付けであり、平成28年11月1日法人化)。このJVOADとは、内閣府も平時から情報共有を図っている。

平成28年4月15日に、熊本県内の中間支援組織である特定非営利活動法人「NPOくまもと」がJVOADと連携しながら、県内のNPO等の調整にあたることとなった。

こうしたNPO間の連携体制ができつつある中、内閣府が熊本県に対しNPO等と県との連携を提案し、NPO等と行政との連携による被災者支援が始まった。4月19日から毎晩、NPO等の情報共有会議「熊本地震・支援団体 火の国会議(以下「火の国会議」という。)」が始まり、NPO等の連携拠点である火の国会議事務局が熊本県庁内の会議室に置かれることとなった。火の国会議は、被災地域や避難所の情報共有の場となっただけではなく、NPO等が相互に業務を補完するための調整を行うと同時に、遅れて参加してきた団体に対して情報入手の機会を提供した。NPO等が多数被災地入りした5月連休中は、100名以上が火の国会議に参加し、情報共有が図られた 。

さらに、行政や災害VCを運営している社会福祉協議会とも連携を図るため、熊本県、熊本県社会福祉協議会、NPO等の3者からなる連携会議が4月25日より週2回の頻度で開催された。また、県と同様に政令市である熊本市とも、5月13日より熊本市社会福祉協議会、NPOの3者からなる連携会議を開催し、行政の対処方針をNPO等へ提供し、NPO等から得られた避難所での課題も迅速に行政へ伝える機能が確立された。こうした動きは他の被災市町村にも広がり、行政や社会福祉協議会、NPO等の連携会議が開催されるに至った(図表2-2-6、図表2-2-7)。

火の国会議における活動地域や活動内容の調整の様子(異なる団体間で災害対応中の体系的調整は初)
火の国会議における活動地域や活動内容の調整の様子(異なる団体間で災害対応中の体系的調整は初)
図表2-2-6 行政とNPO等の連携例
図表2-2-6 行政とNPO等の連携例
図表2-2-7 熊本地震における支援調整のイメージ
図表2-2-7 熊本地震における支援調整のイメージ

<4>今後の課題

全国から災害対応の経験を持つNPO等が被災地における支援活動に参加するが、こうした外部支援団体が長期的に被災地で活動を展開することは現実的ではない(図表2-2-8)。被災直後は活動が困難であったり、あるいは災害対応の経験があまりなく、平時は他分野の活動を行っている地元団体が徐々に活動の中心になることが期待される。例えば避難所が解消され、仮設・みなし仮設に移行するような時期であれば、地域コミュニティに根差した支援が必要となり、支援の「地元化」は一層望まれることとなる。この様な地域による支援を円滑化するためNPOくまもとや熊本青年会議所等が中心となり「くまもと災害ボランティア団体ネットワーク」(KVOAD)が設立された(平成28年10月設立総会、平成29年4月法人化)。KVOADは、団体間のネットワーク構築、各主体間の連携強化を図り、「地域支え合いセンター」との連携や、仮設・みなし仮設入居者の支援活動に対するサポートを行った。

NPO等と行政との連携を図るためには、平常時からの情報共有が重要である。平成29年2月には、都道府県等の職員に対する「災害ボランティア等の活動環境整備に関する研修会(消防庁主催)」が開催され、熊本地震における行政と災害ボランティアとの協働について火の国会議における連携方策等の実例に即して熊本県等が講演した。今後はこのような研修や具体的な交流の場の設定、優良事例の収集と共有等の取組が展開され、各都道府県域においてNPO等と行政との連携が深化することが望まれる。

図表2-2-8 熊本地震におけるNPO等数の推移
図表2-2-8 熊本地震におけるNPO等数の推移
NPOが設置した青空読書コーナー(グランメッセ熊本)
NPOが設置した青空読書コーナー(グランメッセ熊本)
NPO等が実施したコーヒーの炊き出しの様子(グランメッセ熊本、平成28年4月29日)
NPO等が実施したコーヒーの炊き出しの様子(グランメッセ熊本、平成28年4月29日)
(3)自助・共助の取組

熊本地震の際、自助・共助により救出、避難所運営が行われた。一例をあげると、熊本県西原村は、活断層直上に位置することから災害時に孤立することが懸念されていたため、平常時より、孤立に備えた対策を消防団が中心となって協議していた。この備えが熊本地震の際に発揮され、村外の救援が届かない中でも村内の消防団が安否を確認し、家屋の下敷きになった住民が救出された。また、避難所運営も住民自らが「食料」や「救護」等の担当を決め自主的に行うとともに、食料の調達を自力で行うなどの自助・共助の取組が行われた(図表2-2-9)。同様に、熊本県御船町でも住民自治により避難所運営が行われた(図表2-2-10~図表2-2-12)。

また、第2章2-2(2)で詳述したように、熊本地震では地方公共団体と連携したNPO等の新たな活躍が展開され、防災ボランティアやNPO等の力が再認識された。

このように国民一人一人による自助、地域、企業、ボランティア等の枠組みにおいて互いに助け合う共助は、行政による公助では対応しきれない重要な部分を担うため、我が国の総合的な防災力の向上には、これらの自助・共助・公助の連携やバランスが不可欠である。

このため、内閣府では、防災ボランティアやNPO等が活動するための環境整備や、各地域において防災上の課題を把握・共有し、備え、発災時の応急対応や復旧・復興期の諸活動を、自ら協働して行う「地区防災計画制度」(第1部第1章第1節1-4(1)を参照。)の普及等、自助・共助の取組を推進している。

図表2-2-9 食料等の調達が自力で行われた例
図表2-2-9 食料等の調達が自力で行われた例
図表2-2-10 避難所の住民自治により避難所運営された例
図表2-2-10 避難所の住民自治により避難所運営された例
図表2-2-11 学生・生徒の自発的な避難所運営参加の例
図表2-2-11 学生・生徒の自発的な避難所運営参加の例
図表2-2-12 県外の企業等による被災者支援の例
図表2-2-12 県外の企業等による被災者支援の例

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.