平成29年版 防災白書|特集 第2章 2-1 地方公共団体への支援


第2章 熊本地震に対する対応

2-1 地方公共団体への支援

(1)支援の概要

被災した地方公共団体の対応を支援するため、国や日本全国の地方公共団体から、職員が派遣された。国からは、被災者生活支援チームとして、各省庁より68名の情報連絡員(以下、「リエゾン」という。)のほか、延べ8,388名の応援職員等が派遣された。リエゾンは、被災した各市町村の被災状況の把握のほか、市町村ごとの要望・課題、特に避難所におけるニーズ等を把握して現地対策本部に定期的に連絡・報告を行い、必要に応じて国の施策等の説明を行うなど、国と被災市町村の連絡調整役としての役割を担った。

また、全国知事会の全国協定や地方ブロック間協定、全国市長会による応援、市町村間の協定等に基づく応援など、様々なスキームによって、日本全国の地方公共団体から被災地方公共団体を応援するための職員が熊本県・熊本市へ派遣された(図表2-1-1、図表2-1-2)。

益城町役場での国の職員の支援活動の様子
益城町役場での国の職員の支援活動の様子
図表2-1-1 九州・山口9県、関西広域連合、全国知事会、静岡県等との協定に基づく熊本県への職員派遣状況(平成28年4月21日~同年5月30日まで)
図表2-1-1 九州・山口9県、関西広域連合、全国知事会、静岡県等との協定に基づく熊本県への職員派遣状況(平成28年4月21日~同年5月30日まで)
図表2-1-2 大都市及び指定都市市長会等との協定に基づく熊本市への職員派遣状況(平成28年4月21日~同年5月30日まで)
図表2-1-2 大都市及び指定都市市長会等との協定に基づく熊本市への職員派遣状況(平成28年4月21日~同年5月30日まで)
(2)地方公共団体間及び地方公共団体と民間企業との間の協定

発災時に円滑な物資の調達・供給を行うため、地方公共団体においては備蓄等だけではなく、あらかじめ、他の地方公共団体や民間企業と応援協定を締結しておくことが重要である。

熊本県では、地震前に多くの地方公共団体が物資の調達・供給に関連した協定を締結しており、県内の市町村等(熊本県庁を含む)46地方公共団体のうち、40地方公共団体(約9割)が応援協定を締結していた(図表2-1-3)。また、40地方公共団体のうち、33地方公共団体(約8割)が県外の地方公共団体と協定を締結していた(図表2-1-4)。

隣接した地方公共団体は、大規模災害が発災した場合には同時に被災する可能性があることから、遠方の地方公共団体間と協定を締結しておくことも必要である。

また、地方公共団体間だけでなく、民間企業との連携も必要である。熊本県内の地方公共団体においては、40地方公共団体のうち、29地方公共団体(約7割)が地方公共団体及び民間企業の両者と協定を締結していた(図表2-1-5)。

以上のように、熊本県内の地方公共団体の多くが物資の供給・調達に関する協定を締結しており、熊本地震の際、多くの地方公共団体からの応援が円滑に得られた理由の一つになっている。一方、多くの地方公共団体や民間企業が被災したため、協定の内容を十分なレベルで履行することが困難な事態も発生した。これらは、熊本県のみならず日本国内の全地方公共団体共通の課題であり、南海トラフ地震等、今後予期される大規模災害に備え、各地方公共団体は災害によるリスクを分散させるため、複数の協定を締結しておく対応が求められる。

図表2-1-3 熊本県における物資調達・供給に係る応援協定の締結状況
図表2-1-3 熊本県における物資調達・供給に係る応援協定の締結状況
図表2-1-4 熊本県外の地方公共団体との協定締結状況
図表2-1-4 熊本県外の地方公共団体との協定締結状況
図表2-1-5 民間企業との協定締結状況
図表2-1-5 民間企業との協定締結状況
(3)支援の仕組みづくり

地震発生前から国、地方公共団体の様々な機関からの派遣や各支援等を行うための仕組みが作られており、熊本でもこの制度が活用された(図表2-1-6、図表2-1-7)。

しかしながら、必ずしも十分な応援体制があったとは言えず、被災地方公共団体への人的支援や応急対応等を行うための機能をさらに強化する必要がある。災害時の支援を円滑に進めるためには、応援する各機関の調整の仕組みづくりと災害対応業務の標準化、業務のマッチング等を一体的に進めることが課題となっている。調整の仕組みを検討するため、平成29年1月から3月まで「大規模災害時における市町村行政機能の確保に関する検討会」が開催され、被災市町村の「トップマネジメント」、「マンパワー」、「庁舎等の物的環境」の3点を、簡潔な「チェックリスト方式」で迅速に把握できるスキームを国(総務省)が新設することとした。また、平成29年3月より「大規模災害からの被災住民の生活再建を支援するための応援職員の派遣の在り方に関する研究会」を開催し、効果的なマンパワーの派遣の仕組みづくりや被災団体のマネジメント確保支援について検討が行われている。

図表2-1-6 大規模災害時の主な市町村への応援職員派遣支援のイメージ
図表2-1-6 大規模災害時の主な市町村への応援職員派遣支援のイメージ
図表2-1-7 各省庁における地方公共団体支援の主な取組
図表2-1-7 各省庁における地方公共団体支援の主な取組

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