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平成28年版 防災白書|第1部 第2章 第1節 1-2 首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画


1-2 首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画

平成28年3月29日、中央防災会議は、「首都直下地震緊急対策推進基本計画」において作成するとされた「首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画」を中央防災会議幹事会で決定した。同計画は、「首都直下地震モデル検討会」において最新の科学的知見に基づき切迫性が高いと評価され、「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」が報告した被害想定に基づき、国が実施する災害応急対策に係る緊急輸送ルート、救助・救急、消火活動等、医療活動、物資調達、燃料供給、帰宅困難者対応及び防災拠点に関する活動内容を具体的に定めたものである。活動分野毎の概要は以下のとおりである。

<1> 緊急輸送ルート計画

発災直後から、部隊等の広域的な移動など人命の安全確保を主眼とした全国からの人員・物資・燃料の輸送が迅速かつ円滑に行われるよう、あらかじめ通行を確保すべき道路を定めた計画である。発災時には、全国からの応援部隊やDMATの被災地域への迅速な進出のため、あらかじめ必要最低限に絞って選定した緊急輸送ルートについて、他の道路に優先して通行可否情報(通行不可の場合における迂回ルート情報を含む。)を遅滞なく集約し、防災関係機関間で情報共有を速やかに行うことが重要である。また、首都直下地震の発災時に想定される深刻な道路交通麻痺に対応し早期に緊急通行車両の通行を可能とするため、道路啓開や応急復旧を実施することと併せて滞留車両等の移動や交通規制を実施することも必要となる。このための備えとして、あらかじめ地図情報も含めて防災関係機関の間で広く情報共有を図るとともに、発災時の情報共有や緊急通行車両の通行の確保のための具体的な手順を定めている。

<2> 救助・救急、消火活動等に係る計画

首都直下地震による甚大な被害に対して、人命救助のために重要な72時間を考慮しつつ、甚大な被害が想定される被災都県の警察・消防機関は、発災直後から救助・救急、消火等に必要な部隊(以下「域内部隊」という。)を最大限動員するとともに、国は、被害が甚大と見込まれる地域に対して、全国から最大勢力の応援部隊を可能な限り早く的確に投入する必要がある。このため、被災都県で動員する警察・消防機関の域内部隊に加えて、全国からの「警察災害派遣隊」、「緊急消防援助隊」、「自衛隊の災害派遣部隊」(以下「広域応援部隊」という。)の初動期における派遣の方針と具体的な手順等を定めている。

<3> 医療活動に係る計画

首都直下地震では、建物倒壊・火災等による多数の負傷者の発生、医療機関の被災に伴う多数の要転院患者の発生等により、被災地である1都3県の区域内の医療ニーズが急激に増大すると想定される。一方、当該区域には、高度の診療機能を有し、耐震構造の施設、必要な設備・備蓄を備えた災害拠点病院が150病院(平成27年4月現在 全国695病院の2割超)存在するなど多くの医療機関が集積しており、これらの医療資源を最大限活用する必要がある。このため、全国から、災害派遣医療チーム(DMAT:Disaster Medical Assistance Team)をはじめとする医療チームによる応援を迅速に行い、膨大な医療ニーズに対応できるよう、災害拠点病院を中心に被災地内の医療機能を確保することとあわせて、被災地内医療機関の負担軽減のため、被災地内で対応が困難な重症患者については、安定化処置後、被災地外に搬送し治療する体制を構築することを定めている。

<4> 物資調達に係る計画

首都直下地震では、被災地方公共団体及び家庭等で備蓄している物資が数日で枯渇する一方、発災当初は、被災地方公共団体において正確な情報把握に時間を要すること、民間供給能力が低下すること等から、被災地方公共団体のみでは、必要な物資量を迅速に調達することは困難と想定される。このため、国は、被災都県からの具体的な要請を待たないで、避難所避難者への支援を中心に必要不可欠と見込まれる物資を調達し、被災地に物資を緊急輸送するものとし、発災直後に行うこのプッシュ型支援による物資調達・供給の内容、手順を定めている。

<5> 燃料供給に係る計画

首都直下地震の発生により多くの製油所・油槽所・LPガス輸入基地等が被災する状況にあっても、全国的な燃料供給を確保しつつ、災害応急対策活動に必要な燃料や、重要施設の業務継続のための燃料を確実に確保し、迅速かつ円滑に供給する必要がある。このため、石油精製業者等による系列を超えた相互協力を行う供給体制の下、防災拠点等に存する給油施設への「重点継続供給」と、業務継続が必要な重要施設への「優先供給」の手順等を定めている。

<6> 帰宅困難者対応に係る計画

中央防災会議被害想定によれば、自宅が遠距離にある等の理由により徒歩等の手段によっても帰宅が困難になる人は東京都で約490万人に上るとされている。

これらの帰宅困難者が徒歩等により移動を開始した場合には、応急対策活動全般に支障を来たすことが懸念されるほか、ターミナル駅等やその周辺においては、多くの人が滞留し、混乱等が発生することも予想される。

このため、首都直下地震発生時における帰宅困難者の一斉帰宅に伴う混乱を回避し、応急対策活動を迅速かつ円滑に行うため、「むやみに移動を開始しない」という一斉帰宅の抑制に関すること、一時滞在施設等の活用に関すること、帰宅困難者への情報提供に関することを定めている。

図表1-2-3 首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画の概要図表1-2-3 首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画の概要
図表1-2-4 首都直下地震における各活動の想定されるタイムライン(イメージ)図表1-2-4 首都直下地震における各活動の想定されるタイムライン(イメージ)
コラム:感震ブレーカーの普及による大規模地震火災対策の推進

中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループの報告では、首都直下地震による市街地延焼火災による焼失家屋数は最大で41万棟、死者数が1万6千人に及ぶ可能性が指摘されている。

阪神・淡路大震災や東日本大震災の分析によると、近年の地震火災の出火原因は、使用中の電気ストーブの周辺に室内の家具が転倒する等、可燃物が散乱して着火したり、延長コードが転倒した家具と衝突し、損傷によりショートしたりするなど、電気関係が半数以上を占めている。

このような電気火災を防ぐため、内閣府、消防庁、経済産業省が連携し、大規模地震時に家屋内の通電を自動的に遮断する「感震ブレーカー」の普及を進めることとし、平成27年3月に改定した首都直下地震緊急対策推進基本計画においては、延焼のおそれのある密集市街地における普及率を平成36年度までに25%に高めることを目標としている。

具体的な取組みとして、「感震ブレーカー」は分電盤に感震遮断装置が組み込まれているタイプから、地震の揺れにより重り玉が落下し既存の分電盤のスイッチを切る数千円程度の簡易タイプまで様々な製品が市販されていることから、これらの性能評価を行うためのガイドラインを平成27年2月にとりまとめ、併せて第三者認証制度を開始した。

また、住宅等における電気設備の保安の確保等を目的とする民間規格である内線規程((一社)日本電気協会発行)が平成28年3月に改定され、住生活基本計画(全国計画)に基づく地震時等に著しく危険な密集市街地における新築住宅等においては、感震遮断機能付きの分電盤の設置を勧告する等の運用が開始された。

政府におけるこれらの動きを踏まえ、自治体における設置費の補助や不動産関係事業者による取組等もみられるところであるが、大規模地震時の市街地延焼火災の発生を防止するためには、地域が一体となった取組が必要となることから、引き続き、関係機関、自治体、事業者、地域の自治会等が連携し、地震火災対策を推進する必要がある。

図1 電気火災の主な出火部位図1 電気火災の主な出火部位
図2 各種感震ブレーカーの例図2 各種感震ブレーカーの例

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